休職中の解雇は可能?期間満了時の退職手続きや注意点を解説
休職期間が満了した従業員への対応は、企業にとって法的リスクを伴う判断となる場合があります。解雇や退職扱いを進めるには、労働基準法に基づく手続きの遵守と、不当解雇と判断されるリスクへの理解が欠かせません。
本記事では、期間満了時の法的ルールから退職実務、復職支援策まで体系的に解説します。
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休職期間満了に伴う解雇や退職の基礎知識

従業員の休職期間が満了した時点で、企業には「復職・休職延長・退職扱い・解雇」という4つの選択肢があります。どれを選ぶかは、就業規則の内容と従業員の状況を踏まえた慎重な判断が求められます。
対応を誤ると不当解雇と認定され、法的トラブルに発展するリスクがあるため、休職制度の定義と就業規則の整備を正確に理解しておくことが重要です。
休職制度と雇用契約の維持に関する定義
休職期間とは、雇用契約を維持したまま、年次有給休暇とは別に労働義務を免除する特別な期間です。従業員が病気やケガで就労できない状況でも雇用関係は継続されるため、治療に専念できる環境が整います。企業にとっても、退職・解雇といったリスクの高い判断を即座に行わずに済む仕組みです。
休職事由は大きく「私傷病休職」と「私傷病以外の休職」に分かれます。私傷病休職は業務上の災害以外の病気やケガが対象であり、業務上の理由による休業は労災扱いとなる点を押さえておきましょう。
私傷病以外の休職には、以下の表のような種類が考えられます。ただし、いずれも法律で設置が義務付けられているものではなく任意の制度となります。
| 休職の種類 | 制度の具体的な内容 |
| 自己都合休職 | 家庭の事情や個人の都合により、一定期間の休みが必要な場合に認められるもの |
| 事故欠勤による休職 | 逮捕や勾留など、病気やケガ以外の理由で長期不在となる場合に適用されるもの |
| 留学による休職 | 従業員が自己研鑽や個人の希望で海外留学などをする際に認められるもの |
| 公職就任による休職 | 議員などの公職に就いた期間、就業を免除するために取得するもの |
| 起訴による休職 | 刑事事件で起訴され、判決が出るまでの間などに適用されるもの |
| 組合専従による休職 | 労働組合の業務に専念するために、会社での勤務を休止するもの |
| 出向による休職 | 他社やグループ企業へ出向する際、元の勤務先を休職扱いにするもの |
就業規則に明記すべき満了時の取り扱い
従業員が傷病から回復していない場合の休職期間満了時の取り扱いは、就業規則の内容によって「退職扱いとする」か「解雇する」かの2パターンに分かれます。自社がどちらを採用しているか確認することが、適切な対応の出発点です。
期間の上限は3ヶ月から3年程度で設定されるケースが多く、勤続年数に応じた算出基準を就業規則に定めておくことで、担当者が迷わず対応できます。
規定がない場合は、個別合意による契約解約か通常の解雇手続きが必要となり、不当解雇リスクも高まります。休職制度を設けている企業は、期間満了時の対応を就業規則に明記しておくことが求められます。
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休職期間満了時に解雇を検討する際の法的ルール

休職期間が満了しても復職が難しいと判断した場合、就業規則の定めに基づいて解雇という選択肢を取ることができます。ただし、解雇には労働基準法上の手続き義務がある上、一定の状況下では解雇そのものが法律で禁止されています。手続きの誤りや禁止ケースへの無理な解雇は、法的トラブルに直結するため注意が必要です。
労働基準法に基づく解雇予告の義務
解雇を行う場合、少なくとも30日前に解雇予告通知を実施することが労働基準法で義務付けられています。予告期間が30日に満たない場合は、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。たとえば、解雇日の10日前に予告した場合、残り20日分の平均賃金の支払いが求められます。
なお、休職期間満了前に「復職できない場合は解雇となる旨」を30日以上前に書面で通知していた場合は、改めて解雇予告手当を支払う必要はありません。日付の設定を誤り、予告期間が30日を下回ると手当の支払い義務が発生するため、通知のタイミングは慎重に確認する必要があります。
解雇が制限される特定の禁止ケース
労働基準法第19条により、従業員が業務上の負傷や疾病で療養のために休業している期間と、その後30日間は解雇が禁止されています。同様に、産前産後の休業期間およびその後30日間も解雇が制限されており、育児・介護休業法によって育児・介護休業の取得を理由とする解雇も認められません。
長時間労働やパワハラなど、企業側に原因がある精神疾患で休職となったケースでは、私傷病休職の形式をとっていても業務との因果関係が認定され、解雇が不当と判断されるリスクがあります。休職の背景に業務上の原因がないか、解雇を検討する前に慎重に確認することが求められます。
満了後の対応が不当解雇と判断されるリスク

休職期間が満了したからといって、安易に解雇や退職扱いに踏み切ることはできません。対応の仕方によっては、不当解雇と認定されて多額の金銭支払いを命じられるリスクがあります。
とくに「医師が復職可能と診断しているケース」と「業務が原因の精神疾患によるケース」は、法的トラブルに発展しやすい類型として押さえておく必要があります。
医師が復職可能と診断しているケース
従業員の主治医が「復職可能」と診断しているにもかかわらず、企業が一方的に休職期間を満了させた場合、不当解雇と認定されるリスクがあります。実際に、医師が復職可能と判断した従業員を退職扱いとしたケースで、裁判所が退職無効と認め、未払い賃金など約1,100万円の支払いを命じた判例があります。
主治医の診断と職場の実態に乖離(かいり:判断の差異のこと)があると感じる場合は、産業医への面談依頼や企業指定の医療機関での受診を検討することが求められます。第三者の意見を取り入れて客観的な根拠を積み上げることが、判断の正確性を高めます。
業務起因性が疑われる精神疾患のケース
長時間労働やハラスメントが原因でうつ病などを発症した従業員を、休職期間満了を理由に解雇した場合、不当解雇と判断されるリスクがあります。ある判例では、時間外労働が平均約70時間に及ぶ環境でうつ病を発症した従業員への解雇が無効と認定され、約2,900万円の支払いが命じられました。
精神疾患を抱える従業員への対応においては、安易な退職勧奨や解雇に踏み切る前に、業務との因果関係の有無を確認する体制を整えておくことが重要です。社内に相談窓口を設け、産業医と連携できる仕組みを構築しておくことで、リスクを事前に軽減できます。
参考:全国労働基準関係団体連合会|労働基準判例検索 全情報 90020(解雇無効確認等請求事件)
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休職期間満了に伴う退職実務の手続き

休職期間満了に伴う労働契約の終了が確定した後は、次のステップに沿って手続きを進めていきます。
- ステップ1:退職日・退職理由の確定と本人通知
- ステップ2:社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
- ステップ3:退職金の算出と精算事務
- ステップ4:社会保険給付(傷病手当金等)の継続案内
雇用保険に関しては、離職理由の記載内容ひとつで従業員が受け取る失業給付の内容が変わるため、正確な情報共有が求められます。退職金の算出や支払期日についても、退職金制度がある場合はその算出や支払期日は事前に定められたルールを遵守する必要があります。
雇用保険の資格喪失と離職票の発行
雇用保険の手続きが遅れると、退職した従業員が失業給付をスムーズに受け取れなくなり、トラブルの原因となります。手続きの流れは以下のとおりです。
- 企業がハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出する
- ハローワークが離職票を作成し、企業へ返送する
- 企業が退職者に離職票を交付する
- 退職者が住所地を管轄するハローワークに離職票を提出し、失業給付の給付日数が決定される
離職理由の記載方法は退職形式によって異なり、「自然退職」の場合は離職理由欄の「その他」に「休職期間満了による退職」と記載し、「解雇」の場合は「解雇(重責解雇を除く)」を選択します。
退職金の計算と休職期間の勤続年数
退職金を支払う際は、休職期間を勤続年数に含めるかどうかを就業規則や退職金規程で確認する必要があります。規程に明記がない場合は、休職期間も勤続年数に含めて算出することが適切とされています。
支払期日の定めがないケースでは、労働基準法第23条により、従業員から請求を受けた日から7日以内に支払わなければなりません。また、退職理由が自己都合か企業都合かによって支給額が変わる場合があります。本人から退職届が提出されている場合は自己都合退職として扱い、退職届がなく就業規則に基づき休職期間満了で終了とした場合は自然退職(退職)や解雇として扱う判断が一般的です。
社会保険給付に関する従業員への案内
休職期間満了で退職する従業員には、退職後も利用できる社会保険給付が複数あります。健康保険の傷病手当金は、退職が支給開始から1年6ヶ月以内であることに加え一定の要件を満たした場合、退職後も引き続き受給できます。支給額は在職中の給与のおおむね3分の2程度です。
なお、被保険者期間の要件として退職日までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険への加入期間)が必要であり、併せて、退職日に「出勤していないこと(労務不能であること)」が必要となります。もしも引き継ぎなどで最終日に出勤してしまうと、継続給付の権利を失うため注意が必要です。
重度の障害が残った場合は、一定の保険料納付要件を満たすことで障害年金の受給が可能です。従業員が会社員であれば、厚生年金への請求となるケースが多くなります。また、病気を理由とする退職は「正当な理由のある自己都合」に該当し、失業給付を受給できる場合があります。ただし、傷病手当金と失業給付の同時受給はできません。
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解雇・退職の前に検討すべき復職支援策

休職期間が満了しても復職が難しいと判断した場合、多くの企業では就業規則により「自動的に退職扱い(自然退職)」となる旨を定めていますが、その場合でもトラブル防止のため事前の通知が推奨されます。
リハビリ出勤制度の活用、産業医との連携、復職後の就業配慮など、企業として取り得る具体的な対応策を事前に整えておくことが、適切な判断と従業員の安定した職場復帰につながります。
リハビリ出勤制度による段階的な復帰
リハビリ出勤制度とは、職場復帰を希望する従業員が少しずつ勤務に慣れていくための制度です。法的な義務はなく、導入するかどうかは企業の任意で決まります。具体的な取り組みとしては、自宅から職場への通勤訓練、午前中のみの就労、補助的な定型作業への従事などが挙げられます。
運用にあたっては、給与の有無や実施期間などの条件をあらかじめ就業規則に定めておくことが求められます。また、職場全体に制度の目的と内容を周知し、復帰する従業員が安心して職場に戻れる環境を整えておくことが大切です。
産業医面談と就業上の配慮の実施
復職可否の判断が難しい場合、産業医の意見を取り入れることが重要です。主治医は病状の把握に長けている一方、業務内容や職場環境を十分に理解しているとは限りません。職場の実態を把握している産業医の判断を加えることで、客観的な復職可否の基準を持つことができます。
本格復帰後は、配置転換による業務負担の軽減、残業・深夜労働の禁止、通勤ラッシュを避けた出社時間の設定といった就業上の配慮が求められます。業務の質・量を段階的に引き上げる個別復職プランを作成し、無理のない定着を目指すことが大切です。
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復職と定着をサポートする「ニューロリワーク」の活用
「ニューロリワーク」は、メンタル不調により休職された方が職場復帰を果たし、安定して長く働き続けるために必要な生活習慣の構築を支援する、リワーク(復職支援)施設です。脳科学者や精神科医などの監修により作られた「ブレインフィットネスプログラム」を通じて、心と身体の健康管理を科学的にサポートしています。
また、企業と連携した積極的な復職・定着支援サービスも行っており、休職者が職場へ安心して戻れるよう包括的な体制を整えています。メンタル不調による休職者の復職・定着にお悩みの際は、ぜひニューロリワークへご相談ください。
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監修者
山下 真由美
特定社会保険労務士、行政書士
東京都港区で行政書士及び社会保険労務士事務所を開業し、労働社会保険の手続きや労務相談はもちろん、外国人の在留資格に関する手続きから労務管理までトータルで承ることが可能です。そのほかにも、著作権不明者の作品を利用するための裁定申請や相続・遺言を取り扱っています。頼れる街の法律家として、ご相談いただいた一つ一つの事件に丁寧に向き合い、お役に立てるよう精一杯のお手伝いをさせていただいています。
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