復職の失敗を防ぐには?メンタル不調者の職場復帰支援と成功のカギ
メンタルヘルスの不調で休職した従業員が復職したが、短期間で再び休職に至るケースもあります。再休職のパターンにはいくつかの共通点があり、その原因を把握した上で段階的な支援体制を整えることが、復職の失敗を防ぐカギとなります。
本記事では、復職が失敗に終わる根本的な原因から、職場復帰支援の具体的なステップ、そして復職後に再休職させないための対応策までを解説します。
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復職で失敗を招く根本的な原因とは?

メンタルヘルスの不調で休職した従業員が職場に戻る際、「復職可能」の診断書が出たにもかかわらず再休職に至るケースもあります。その背景には、医療と現場のあいだに横たわる認識の違いや、休職者本人の心理的な要因が深く関係しています。
以下では、復職の失敗を招く根本的な原因として、次の3つの観点から解説します。
- 医学的な治癒と業務遂行能力の認識のズレ
- 本人が抱える焦燥感や周囲への罪悪感
- 周囲に心配をかけまいとする「元気な演技」
これらの原因を正しく理解することが、再休職を防ぐための第一歩となります。
医学的な治癒と業務遂行能力の認識のズレ
復職の失敗が起こる大きな要因の一つは、主治医が判断する「回復」と、企業が期待する「業務遂行能力」とのあいだに認識のギャップがあることです。
主治医は患者の日常生活が支障なく送れるかどうかを基準に診断する傾向がありますが、企業側は基本的には復職後は出勤時間内で責任ある業務を遂行できる状態を求めています。
このズレを認識しないまま、診断書の「復職可能」という記載だけを根拠に復帰させると、早期の再休職につながりかねません。加えて、骨折のようにレントゲンで治癒を確認できる身体疾患とは異なり、メンタル不調は回復の程度を数値で測定しにくいため、客観的な判定が困難であるという特性も理解しておく必要があります。
本人が抱える焦燥感や周囲への罪悪感
復職の失敗には、休職者本人の心理状態も深くかかわっています。「収入面の不安がある」「早く働かなければ」という焦りから、十分に回復していない段階で復職を急いでしまうケースは少なくありません。
さらに、「職場に迷惑をかけている」「自身だけが休んでいる」という強い罪悪感が、無理な働き方を選ばせてしまい、結果として再発のリスクを高めます。とりわけ責任感が強く真面目な性格の方ほど、復職直後から以前と同じ成果を出そうと自身に過剰な負荷をかけてしまう傾向があり、こうした心理的プレッシャーへの配慮が求められています。
周囲に心配をかけまいとする「元気な演技」
復職面談や産業医面談の場で、実際よりも調子が良いふりをしてしまうことも、復職の失敗を招く要因です。「弱さを見せたくない」「周囲に負担をかけたくない」という心理から、本人は主治医や企業の担当者に対して症状を軽く伝えてしまう場合があります。
しかし、この「元気な演技」は本人のエネルギーを著しく消耗させ、回復を遅らせる行為にほかなりません。実際には睡眠がとれていなかったり、思考がまとまらなかったりといった症状を率直に共有しなければ、適切な職場復帰支援プランを策定することは困難です。本人の真の状態を把握できる環境づくりが、復職支援の精度を左右します。
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メンタルヘルス対策における職場復帰支援のステップ

復職の失敗を防ぐためには、場当たり的な対応ではなく、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に基づいた段階的な復職プロセスを組織として構築することが重要です。手引きでは、以下の5つのステップが示されています。
- 第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
- 第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
- 第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
- 第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
- 第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
参考:厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
本人の申し出から最終決定、復職後のフォローアップまで、誰がいつ何を判断するかを明確にルール化し、対応が属人的にならない体制を整える必要があります。また、復職はゴールではなく再スタートであるという共通認識を、本人・人事・現場管理職の三者で共有することが、安定した就労を実現するカギとなります。
生活記録表による基礎体力の客観的確認
復職の可否を判断する上で、従業員に睡眠時間や日中の活動内容を記録した「生活記録表(生活リズム表)」を提出が欠かせません。昼夜逆転が起きていないか、毎日決まった時間に起床して外出できているかといったデータをもとに、通勤や勤務に耐えうる基礎体力が備わっているかどうかを見極めます。
口頭で「大丈夫です」と伝えられるだけでは、実態を正確に把握することは困難です。数週間にわたる記録を客観的な指標として活用し、回復度合いを多角的に測定することが、復職の失敗を防ぐ土台になります。
産業医面談による専門的な意見聴取
主治医の診断書だけに頼るのではなく、職場の実情を理解している産業医による面談をあわせて実施し、医学的な見地と労務管理の両面から意見を得ることが大切です。主治医と産業医の見解が異なる場合には、本人の同意を得た上で産業医から主治医へ診療情報提供を依頼し、病状と業務負荷のミスマッチを解消する手順を踏みます。主治医は「日常生活における回復」を判断し、産業医は「職場環境への適応性」を判断するという、役割の違いを理解することが重要です。
さらに、就業規則のなかで企業指定の医師による診断を復職判定の要件として明記しておくことで、判断基準が明確になり、法的なトラブルの回避にもつながります。
試し出勤(リハビリ出勤)での適応見極め
本格的な復職の前段階として、短時間の模擬出勤や通勤訓練を実施し、実際の職場環境における疲労度や集中力を観察することが重要です。試し出勤の期間中にどのような基準で適応状況を評価するかをあらかじめ定めておけば、判定の客観性と透明性が保たれ、準備不足のまま復帰させるリスクを抑えられます。
たとえば、簡単な事務作業から始めて段階的に負荷を引き上げていくことで、本人が「再び働ける」という実感を積み重ねられ、復職後の安定した就労にもつながっていきます。
試し出勤(リハビリ出勤)の実施にあたっては、規程等でその位置づけ(=休職期間中のリハビリなのか、復職後の慣らし勤務なのか)を明確にしておくことが重要です。
社員がメンタル不調で休職…どう対応すべき?
復職支援(リワーク)という選択肢と具体的な支援内容
社員がメンタル不調で休職した際、「復職までどう支援すべきか」と悩む企業担当者は少なくありません。対応次第で、再休職や離職リスクが高まるケースもあります。
本資料では、再発防止と安定就労を目的とした復職支援(リワーク)の具体的な支援内容や流れや企業との連携方法についてご紹介します。自社での対応に限界を感じている方は、ぜひご活用ください。
職場復帰後に再休職させないための対応策

復職が実現しても、その後の対応が不十分であれば再休職に至る可能性は残ります。復職直後は集中力や体力が十分に回復していない時期であり、この段階で適切なフォローを行えるかどうかが、安定した就労の分かれ目です。
再休職を防ぐためには、以下の3つの対応策を組織として講じることが欠かせません。
業務量や勤務時間の段階的な調整
復職後の失敗を防ぐには、たとえば1ヶ月目は残業禁止・時短勤務とし、2ヶ月目から徐々に業務範囲を広げるといった具体的な「職場復帰支援プラン」を文書化して策定することが重要です。
口頭で「少しずつでいいよ」と声をかけるだけでは、本人の後ろめたさを払拭することは難しいため、制度として正式に軽減勤務を認めることで心理的な負担を和らげる効果が期待できます。復職直後は集中力や記憶力が十分に戻っていない時期であることを現場が理解し、ミスが許容される範囲で業務を割り当てる配慮も不可欠です。
不調のサインを早期に発見するモニタリング
メンタル不調の再発は突然起こるのではなく、活気の低下やイライラ感、眠りの浅さといった小さなサインから始まります。こうした前兆を本人と周囲があらかじめ共有しておくことが、早期対応の出発点です。
本人には、日々の気分や体調を数分でセルフチェックする習慣を持つよう働きかけ、不調を我慢して限界まで耐えさせない仕組みを整えることが大切です。
あわせて、週1回など定期的な面談の機会を設け、産業医やカウンセラーといった専門家につながれる状態を維持しておくことで、変化の兆しを見逃さない体制が構築されます。
1人で抱え込ませない相談体制の構築
「迷惑をかけたくない」という思いから1人で抱え込んでしまうことは、再発における大きなリスク要因です。組織としては、つらさを感じたときに早めにSOSを出せる風土を育てることが欠かせません。相談先についても、直属の上司・人事担当者・外部の相談窓口といった段階ごとに選択肢を整理し、心理的なハードルを下げる工夫が求められます。
臨床研究においても、弱音を吐ける相手や場所の存在がメンタル疾患の再発予防に効果的であると示されており、相談できる環境を制度として整備することが、復職者の長期的な安定就労を支える土台となります。
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メンタル不調者の安定した職場復帰を支援する「ニューロリワーク」
「ニューロリワーク」では、メンタル不調で休職した方を対象に、脳科学者や精神科医、公認心理師などの監修のもと開発された「ブレインフィットネスプログラム」を通じて、運動・食事・睡眠をはじめとする生活習慣を改善しながら、復職に必要な基礎体力を築くサポートを行っています。
認知行動療法に基づいたストレス管理の習得や模擬職場での実践的なトレーニングに加え、休職中の企業との情報共有や復職プランの策定に向けた連携も行っています。
復職をゴールとせず、その先の安定した就労まで伴走し、多くの方が復職後も長く働き続けている実績が大きな特徴です。従業員の復職対応にお悩みの人事担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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「現在、対象者はいないが今後のために知りたい」「自社の社員に合うか確認したい」という場合も、情報収集の一環としてお気軽にご活用ください。
監修者
工藤 知紀
千葉くどう産業医事務所株式会社 代表取締役/産業医
札幌医科大学医学部卒業後、製鉄記念室蘭病院にて初期研修を修了。
豊田合成株式会社の専属産業医として従業員の健康管理・メンタルヘルス支援に従事したのち、独立して「千葉くどう産業医事務所株式会社」を設立。
現在は多業種の企業において20社以上の産業医を務め、労働衛生・メンタルヘルス・健康経営の各分野で幅広く活動。
法令遵守を踏まえた実践的な健康管理体制の構築や、安全衛生委員会・復職支援・ストレスチェック運用など、企業の現場に根ざした伴走型サポートを行っている。
■保有資格:
日本医師会認定産業医/産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)/健康経営エキスパートアドバイザー/両立支援コーディネーター
ホームページ:https://kudo-sangyoui.com/
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