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休職 復職 ポジティブ心理学

離職・休職期間中に身に付けたい「ポジティブ心理学」
自己肯定感を高め、円滑な就労・復職を実現する

メンタル不調によって離職や休職に至った場合、自己肯定感の高め方やストレスへの対処法は、健全な就労や復職を目指す上でぜひとも身に付けておきたい方法です。

自己肯定感の向上やストレスの対処法を考える上で、「ポジティブ心理学」は大きな効果が期待できる考え方のひとつです。ここでは、就労や復職に向けて活用できるポジティブ心理学についてご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから

1.ポジティブ心理学とは?

ポジティブ心理学は、元米国心理学会会長でペンシルバニア大学の心理学部教授であるマーティン・E・P・セリグマン博士によって提唱された領域です。科学的根拠に基づくことを重視し、膨大な研究結果を基に主張されています。

従来の心理学が「こころの傷を回復させ、短所を直す」といったマイナスの側面に焦点を当てているのに対して、ポジティブ心理学では「本来の力をより発揮させ、長所を輝かせる」といったプラスの側面に焦点を当てているという特徴があります。

ポジティブ心理学の考え方を太陽と雲の関係で考えると、従来の心理学は太陽にかかっている雲を避けるようなイメージから「疾患モデル」といわれています。一方、ポジティブ心理学では雲を気にせず、太陽そのものをより輝かせる考え方のイメージから「健康モデル」といわれています。

ポジティブ心理学は、ポジティブシンキングのように“無理にポジティブになろう”というものではありません。日頃から意識しなければマイナスの面に目が向きがちですが、プラスの面にもしっかりと目を向けていくという考え方に基づいています。

2.ポジティブ心理学が考える「幸せ」

「幸せ」とは、どのようなものでしょうか。あらためて考えると、その厳密な定義は難しいかもしれません。「大好きなスイーツを食べた」「宝くじが当たった」「ほしいものが手に入った」、こういうときに幸せを感じるかもしれません。
一方、たとえば会社でのプレゼンや発表会、または課外活動に向けて準備している期間なども、幸せだと感じる場合があるかもしれません。

このように、幸せは一時的なものから持続的なものまで幅広くあります。ポジティブ心理学では、特に持続的な幸せを大切にしています。スイーツを食べているときは幸せを感じますが、それだけでずっと幸せが続くわけではありません。この点、ポジティブ心理学では持続的な幸せをつくることを大切にしているのが大きな特徴です。

3.持続的な幸せを実現する「ウェルビーイング」

上述した持続的な幸せは、「ウェルビーイング」を高めることでつくられます。これは、ウェルビーイング理論と呼ばれています。

「ウェルビーイング」という言葉は、近年では耳にすることも多くなっています。直訳するとWellが「よい、良好な、健康な、申し分ない」という意味で、Beingが「あり方、あること、存在」という意味となり、合わせて「より良好な状態、良いあり方、健康」を意味します。

1946年に発表された世界保健機関(WHO)の憲章全文の一節によれば、健康とは病気ではないことや弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態であるとされています。

この“満たされた状態”こそが、「Well-Being」です。つまりウェルビーイングとは、身体の健康だけでなく、心身ともに健康で、社会的にも充実していえる状態を指します。なお、「ウェルビーイング=幸福」と訳されることもありますが、厳密にいえば必ずしも適切とはいえない点に注意が必要です。

4.ウェルビーイングをつくる5つの要素


ポジティブ心理学では、ウェルビーイングは5つの要素から構成されると考えられています。これら5つの要素は、それぞれの頭文字を取って「PERMA(パーマ)」と呼ばれています。

①P=Positive Emotion(ポジティブ感情)
②E=Engagement(物事への積極的な関わり)
③R=Relationship(関係性)
④M=Meaning and Purpose(人生の意味など)
⑤A=Achievement(何かを成し遂げること)

①Positive Emotion(ポジティブ感情)

Positive Emotionは、明るさや自信、快感、ぬくもり、楽観性、愛、希望、喜び、感謝など、人が感じるプラスの感情を指します。ポジティブ感情が多いと考え方や行動の範囲が広がったり、困難な状況から立ち直る力が高まると考えられています。

9.11同時多発テロの後に行われた大学生を対象とし調査では、「立ち直りが早かった学生」と「立ち直りの遅かった学生」とを比較したときに最も差があったのは、“ポジティブ感情の量”だったと報告されています。

②Engagement(物事への積極的な関わり)

Engagementは、「物事へ積極的に関わっていること」「何かに没頭すること」「時間、他者、自分を忘れて何かに夢中になること」などを指します。これらの要素を高い水準で実現できることで、ウェルビーイングが高められると考えられています。

③Relationship(関係性)

Relationshipは、豊かな人間関係、すなわち「協力してくれる人を見つけること」を指します。他者との関わりやつながりが、人生の幸福度に大きく影響するといわれています。

ハーバード大学の心理学の研究によると、「心から支えられていると感じられる人間関係」があるのとないのとでは、ある場合のほうが幸福度が高いと報告されています。

④Meaning and Purpose(人生の意味など)

Meaning and Purposeは、人生において肯定的な意味を見つけることを指します。短期的な欲求ではなく、価値観や人生の目的などの長期的な視点を持つことがウェルビーイングを高めると考えられています。

⑤Achievement(何かを成し遂げること)

Achievementは、目的・やり遂げることなどを指します。目標を追及していく生き方のほうが、そうでない人生よりも幸せになると考えられています。状況に応じて適切な目標設定ができており、その目標を達成したと感じられる体験の数が多ければ多いほど、幸福度によい影響を与えるといわれています。

以上が、ウェルビーイング、すなわち身体的、精神的、社会的に満たされた良好な状態をつくる5つの要素です。それぞれは、主に仕事や人間関係に基づいて高めていくことができるといわれています。

5.まとめ

メンタル不調によって、仕事を辞めたり休職したりするというケースは少なくありません。このような場合は、自己肯定感やストレス対応力を高める取り組みが重要です。上述したポジティブ心理学は、メンタル不調を改善させ、就労や復職を目指す上で大きな効果が期待できる考え方です。

ニューロリワーク大宮センターでは、就労や復職を目指すためのプログラムのひとつとして、ポジティブ心理学のプログラムを提供しています。また、生活習慣の乱れを改善する「ブレインフィットネスプログラム」や、コミュニケーションスキル、ビジネススキルを高めるためのプログラム、さらには運動プログラムなども実施しています。
センターや各プログラムの見学も随時承っていますので、ご興味のある方はお気兼ねなくお問い合わせください。パソコンやスマートフォンを活用したオンライン見学も行っています。(プログラムの見学希望の方はコチラからお申し込みいただけます

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記事監修者

H.S(公認心理師/精神保健福祉士)

長年精神科病院に勤務し、急性期から退院後まで、幅広く精神障害者への支援に従事。
精神保健福祉士、公認心理師。高崎健康福祉大学非常勤講師。

【参考文献・参考サイト】

(写真素材:PIXTA、photoAC)