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ストレスホルモン

【だるさの原因?】脳や心身を蝕むストレスホルモンを減らす方法

日頃から感じているストレスと、どれだけの人が上手く付き合っているでしょうか。適度なストレスはパフォーマンスを高めたり活力を生み出したりと日々の生活を豊かなものにしますが、過度または慢性的なストレスは心身にさまざまな悪影響を及ぼします。これが、日常生活の中での「だるさ」の原因になることもあります。

今回は、過度または慢性的なストレスを受けたときに体内で過剰に分泌される「ストレスホルモン」のひとつである「コルチゾール」についてご紹介します。(生活習慣を整えながら就労を目指す「ニューロリワーク」の資料請求はコチラから

1.コルチゾールとは

コルチゾールは、ストレスを受けた際に副腎から分泌される副腎皮質ホルモンです。ストレスを受けると分泌が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれています。この名称からコルチゾールは悪者扱いされがちですが、糖質・タンパク質・脂質の代謝など、多くの生体内反応に関与しており、抗炎症作用や免疫抑制作用など、さまざまな働きのある有益なホルモンです。ストレスから私たちを守る作用を持つ、必要不可欠な役割を果たしています。

コルチゾールの特徴は、その性質が両刃の剣であるという点にあります。過度または慢性的なストレスによりコルチゾールが過剰に分泌されると、高血圧や糖尿病のリスクが高まったり神経細胞にダメージを与えたりと体にさまざまな悪影響を及ぼします。

コルチゾールが不足するとあらゆる種類のストレスに対処できなくなる一方、慢性的なストレスによりコルチゾールが長期間大量に分泌され続けるとじわじわと脳や心身を蝕み、最終的には健康寿命を縮めるリスクがあります。

では、コルチゾールの過剰分泌は人の体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。コルチゾールの過剰分泌が体や脳に及ぼす悪影響は多くありますが、今回はその中から5つをご紹介します。

2.コルチゾールの過剰分泌が及ぼす悪影響

①記憶力の低下

コルチゾールの過剰分泌は記憶の中枢である「海馬」を破壊し、記憶力の低下を引き起こします。ストレスを受けると、脳内では不安・恐怖・ネガティブ感情に関わる「扁桃体」が活性化します。慢性的なストレスにさらされると、扁桃体が些細なストレス要因でも過剰に反応するようになります。これにより内分泌系が常に活発な状態になり、コルチゾールが大量に放出され続けます。
研究によると、過剰に分泌されたコルチゾールが脳内にあふれると扁桃体に隣接する海馬の神経細胞を破壊し、海馬を萎縮させることが示唆されています。また、海馬の神経細胞の新生も抑制されるため、記憶力の低下につながります。コルチゾールとうつ病、海馬の萎縮との関連性はこれまでに多く報告されているため、それだけ注意が必要といえます。

②認知機能の低下や情緒不安定

コルチゾールの過剰分泌は、脳の司令塔「前頭前野」を萎縮させ認知機能の低下や情緒不安定なども引き起こします。

前頭前野は、特に判断力・集中力・創造性・理性・感情や、行動の抑制・社会交流など高度な認知機能を担い、人間らしく豊かに生きていくために重要な脳の部位です。そのため、前頭前野の萎縮はこれらの認知機能の低下に繋がります。前頭前野の機能低下によりメンタル面も不安定になりがちです。

例えば、衝動を司る脳部位「扁桃体」の過活動を抑制できなくなるため感情をコントロールできず、抑うつ状態・イライラ、些細なことで悲しくなるなどの症状が現れやすくなります。 また自分を客観的に見るメタ認知力が低下し、物事の偏った見方をしてしまったり落ち込みやすくなったりします。その他にも、注意力が低下し、目の前のことに集中できずネガティブなマインドワンダリング(反芻思考)に陥りやすくなり抑うつ状態につながりやすくなります。

③幸福感の低下

コルチゾールの過剰分泌は、幸せホルモン「セロトニン」の分泌を抑制させるため幸福感も低下します。そのため、うつ病のリスクが高まります。実際、うつ病の人はコルチゾールの値が高いことが示唆されています。

④不眠の問題

上述した以外にも、不眠の問題が生じることもあります。本来、コルチゾールは昼間に活性化し、夜になると減少して体がリラックスした状態になり自然と眠りにつけるのですが、慢性的なストレスでコルチゾールが過剰に分泌され続けたり夜になってもストレスや不安でモヤモヤしたり緊張状態が続いていたりすると、コルチゾール値が下がらず眠りにつきにくくなります。また、睡眠不足によりさらにコルチゾール値が上昇するという悪循環を招き、深刻な不眠の問題に陥るリスクもあります。

⑤過食・太りやすくなる

コルチゾールの過剰分泌により、過食や太りやすくなるといった症状も現れます。ジャンクフードやお菓子など糖質が多いものや脂っこいものを頻繁に食べたくなるという人は、注意が必要です。これも、ストレスでコルチゾールが過剰に分泌されていることが原因となっているケースがあります。

コルチゾールは、食欲抑制ホルモン「レプチン」を減少させてしまいます。また、上述したようにコルチゾールの過剰分泌はセロトニンの分泌も抑制させます。このセロトニンも、食欲を抑える働きがあります。このようにストレス過多な状態が続きコルチゾールの分泌量が増えると、幸福感が低下するのみならず過食しやすくなってしまいます。

過食によって太りやすくなることは間違いありませんが、いわゆる「ストレス太り」が促進されるのには他の理由もあります。

コルチゾールは体が飢餓状態などの危機に直面した際に、それを乗り越えるために多く分泌され、代謝率を下げて脂肪がエネルギーに使われるスピードを遅くします。そのため、過度または慢性的なストレスでコルチゾールの分泌量が多くなると体は食料不足と勘違いしてそれを乗り切るために代謝を遅らせます。これにより基礎代謝が低下し、脂肪が燃えにくい体質になってしまいます。

またコルチゾールが過剰に分泌されると、通常よりも大量のインスリンが分泌されます。インスリンは余ったエネルギーを脂肪として溜め込む働きがあるため、食事で摂取したエネルギーが脂肪になりやすくなります。こうして過度または慢性的なストレスによって体内に体脂肪が蓄積されていきます。(生活習慣を改善しながら就労を目指す「ニューロリワーク」の資料請求はコチラから

3.コルチゾールを減らす方法

不調の原因となる過剰なコルチゾールを減らすためには、どのような方法があるのでしょうか。

コルチゾールを減らすのに重要なのは、「ストレスを溜めないようにすること」です。一見すると当たり前ともいえることですが、この当たり前のことが非常に重要です。

日々のストレスケアとしておすすめの方法としては、主に以下の3つが挙げられます。

①自然に触れる

一つ目は、自然に触れることです。森林浴など、自然に触れることはストレスを軽減しコルチゾール値を低減させることがさまざまな研究によって示されています。また「自然の中を歩くこと」により太陽光と自然に触れることの複合効果が得られることも示されています。高層ビル等が多い都市部を歩いたときに比べて、森林の中を歩いたときの方がコルチゾール値が明らかに減少しやすいことが確認されています。

②マインドフルネス瞑想をする

二つ目は、マインドフルネス瞑想です。マインドフルネス瞑想によりコルチゾールが減少することは多くの研究で実証されています。また、この効果はストレスの少ない健康な人に比べてストレスの多い生活環境に置かれていて、コルチゾールの上昇リスクが高い人のほうがより高い効果を発揮することが示されています。日頃ストレスが多いと実感している人は大きな効果が期待できるといえます。

過食気味の人には、「食べる瞑想」もおすすめです。食べる瞑想とは、食べることに意識を集中させる瞑想です。食べ物をよく観察し、香りを楽しみ、一口ずつよく噛んでしっかり味わって食べることで、これまで以上に満ち足りた気分になり過食を抑えられる効果が期待できます。

③音楽を聴く

三つ目は、音楽を聴くことです。医療やメンタルケアの分野で訓練を受けた音楽療法士によるストレス軽減のための介入として「音楽療法」の効果が実証されており、医療機関や福祉施設でも音楽療法が用いられています。なお、純粋に音楽を聴くことに加え、自分がリラックスできる音楽や速いテンポの音楽などを聞くことが効果的であることを示した研究もあります。

★研究1
一つ目は、一般の人が自宅で音楽を聴くことで得られるストレス低減効果を調べた研究です。対象者を実験群と対照群の二つのグループに分けて3週間にわたって行われました。

実験群は、最初の1週間は音楽なしで毎日30分リラックスして過ごし、その後の2週間は自分の好きな音楽を毎日30分間聞くように指示されました。自分の好きな音楽は、1週間は自分で選んだリラックスできる音楽を、もう1週間は自分で選んだ元気になる音楽を聞きました。

対称群は、音楽なしで3週間毎日30分リラックスして過ごすように指示されました。ストレスの評価は、自己申告によるアンケートと唾液中のコルチゾールの測定により行われました。

実験の結果、実験群は音楽なしで過ごした週と比べ、音楽介入を行った週では有意にポジティブ感情が高くストレスレベルが低いことがわかりました。またコルチゾールも統計的に有意に減少していました。

一方、対照群においてストレスレベル、自覚された感情、コルチゾールレベルは3週間の間変化しませんでした。

これらの結果から、好みの音楽を聴くことは音楽なしでリラックスするよりもストレスやコルチゾールのレベルを低減し、ポジティブな感情を高める効果的な方法であることが示されました。

★研究2
音楽の種類とコルチゾールの低減効果との関連性を調べた研究もあります。この研究は、リラックスした遅いテンポの音楽とエキサイティングな速いテンポの音楽を聴いたときのホルモンの分泌量を調べた研究です。

この研究で対象としたホルモンは2つです。1つはストレスを低減し多幸感を与えるとされる幸せホルモンの1つである「オキシトシン」、もう1つはストレスホルモンの一種である「コルチゾール」です。

実験では、遅いテンポの音楽を聴くとオキシトシンのレベルが増加し、速いテンポの音楽を聴くとコルチゾールのレベルが減少したと報告されています。エキサイティングな速いテンポの音楽を聴いたときにのみコルチゾールが減少するというのは興味深い結果といえます。なお、この実験では月経周期の影響を避けるために女性は対象外とされており、実験参加者は20代から30代前半の若い健康な男性と限定的です。

年齢や性別により音楽の好みは異なり、人によって心地よいと感じる音楽や意欲をかき立てる音楽にも違いがあるので、「速いテンポが必ず効果的である」とまでは言い切れない点に注意が必要です。

最初にご紹介した研究と合わせて考えると、コルチゾールの低減という意味では人から薦められた音楽を聞くよりも、自分にとってストレスの緩和効果を実感でき、感情的にもポジティブな興奮を呼び起こすような音楽が良いといえるかもしれません。

4.まとめ

過剰に分泌されたコルチゾールは脳の海馬や前頭前野を萎縮させ、長期的に認知機能を低下させるなど深刻な影響を及ぼします。コルチゾールの過剰分泌を抑制するためにはストレスを蓄積させないことを基本とし、自然に触れることやマインドフルネス瞑想音楽を聴くことなどが効果的だと実証されています。ただし、いわゆる三日坊主では有意な効果は得られません。生涯にわたり身体・頭(脳)の健康を維持できるよう、ご紹介した方法を日々の習慣に取り入れて、ストレスからご自身を守っていくことが大切です。(生活習慣の改善と就労を目指す「ニューロリワーク」の見学をご希望の方はコチラから

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監修者

杉浦 理砂(脳科学者)

インクルード株式会社 ブレインフィットネス研究所 ディレクター
脳科学者、工学博士(応用物理)、東京都立大学特任准教授(現任)

【参考文献・参考サイト】

(写真素材:PIXTA、photoAC)