朝、仕事に行きたくない、起きられない|心の拒否反応の原因と対処法
「朝、仕事に行きたくない」「起きようとしても体が動かない」と感じることはありませんか。それは、心や体が限界に近づいているサインかもしれません。
この記事では、朝起きられない・仕事に行けない状態に隠れたストレスや病気の可能性、そして気持ちを立て直すための具体的な対処法を解説します。無理をせず自分のペースで働き方を見直すためのヒントとして、ぜひご参考ください。
「仕事に行きたくない」「朝起きられない」は心のSOS

朝、目が覚めたときに「仕事に行きたくない」と感じたり、涙が止まらなくなったりする経験はありませんか。こうした症状は、単なる「甘え」や「気持ちの問題」として片付けられがちですが、実は心や身体が限界に近づいているサインかもしれません。
身体が動かない、涙が出るといった拒否反応は、心身が疲弊しているときに起こる自然な防御反応です。仕事の内容や職場環境が心に大きな負担をかけていたり、過度なストレスが蓄積していたりすると、朝の時間帯に特に症状が強く現れることがあります。
これらの症状を「自分が弱いから」と責める必要はありません。朝のつらさや涙は、心や身体が「もう頑張りすぎだよ」「休息が必要だよ」と発している大切なSOSです。一人で抱え込まず、原因を知り、適切な対処法を見つけていくことが、回復への第一歩となります。
なぜ朝起きられない?仕事への拒否反応を引き起こす原因

朝、仕事に行く前に感じるつらさや涙には、さまざまな原因が考えられます。これらは、心や身体が何らかの不調やストレスを抱えていることを示すサインかもしれません。
主な原因として、職場環境に起因するストレス、心理的な負担や疲弊、そして身体的な不調や生活リズムの乱れが挙げられます。
職場環境に起因するストレス
朝のつらさの直接的な原因の可能性として、職場環境に起因するストレスや疲労の蓄積が挙げられます。威圧的な上司やハラスメント、孤立感といった人間関係の悩みが出勤への苦痛につながるケースは少なくありません。常に締め切りに追われる状況や失敗できない責任の重さ、自分のスキルに合わない仕事も精神的な負担となります。
夜勤やシフト勤務など不規則な勤務形態は体調を崩しやすく、キャリアパスの不透明さや会社の将来性への不安も、朝の出勤前につらさを感じさせる原因となるのです。
心理的な負担や疲弊
朝、身体が重く「仕事に行きたくない」という強い気持ちが湧き上がるのは、心が拒否反応を示しているサインかもしれません。これは怠けではなく、心身が疲弊しているために起こる自然な防御反応である場合があります。仕事への過度な献身やストレス蓄積による「燃え尽き症候群(バーンアウト)」では、意欲の低下や疲労感が現れることがあります。
また、特定のストレスが原因で気分の落ち込みや不安が生じる「適応障害」の可能性もあり、朝起きること自体がつらく感じられることがあるのです。
身体的な不調や生活リズムの乱れ
朝のつらさは、体調不良や病気が隠れているサインである可能性も否定できません。十分な睡眠が取れていない睡眠障害は心身の疲労を蓄積させ、気分の落ち込みや情緒不安定につながります。ストレスによる自律神経のバランスの乱れでは、頭痛やめまい、だるさなどが朝に強く出やすい傾向もみられます。
そのほか、低血圧や肉体疲労、女性の場合は月経前症候群(PMS)や更年期障害によるホルモンバランスの変化が、気分の変動や涙もろさを引き起こすケースもあります。
涙が出る・動悸がする…仕事に行けないときに潜む病気のサイン

朝のつらさや涙、動悸といった症状が続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
気分の落ち込みが続いて何事にも興味を感じられない、ストレスの原因が明確で休日は元気になる、身体症状が強く出るなど、症状のパターンによって考えられる病気は異なります。一人で抱え込まず、専門機関への相談を積極的に検討することが重要です。
うつ病の可能性
うつ病では、気分がひどく落ち込み、何事にも興味や喜びを感じられなくなる状態が続くケースなどがみられます。意欲の低下や集中力の低下、不安感、焦り、イライラといった精神的な症状に加え、不眠や倦怠感、食欲不振、動悸、頭痛、めまいなどの身体症状を伴うことも少なくありません。
「仕事に行きたくない」「朝起きられない」という症状だけでなく、休日も楽しめず何もする気が起きない、以前は楽しめていた活動ができなくなったという場合は、うつ病の可能性があります。仕事だけでなく日常生活全般に支障をきたすことがあるため、早めに専門医に相談することが大切です。
適応障害の可能性
適応障害は、特定のストレスが原因で気分の落ち込み、不安、涙もろさ、体調不良などの症状が現れる精神的な不調です。職場の重圧や人間関係といった明確なストレス要因がある場合に発症しやすい傾向があります。
うつ病との大きな違いは、ストレスの原因から離れると症状が改善しやすい点にあります。たとえば、仕事のストレスが原因の場合、休日になると症状が改善し趣味を楽しむことができるケースが見られます。環境調整によってストレスの原因と距離を置くことで、徐々に回復していく傾向があるため、職場環境の見直しも含めた対応が必要です。
自律神経失調症の可能性
自律神経失調症は、ストレスや生活習慣の乱れによって自律神経のバランスが崩れる状態です。なお、医療的には明確な診断名ではなく、さまざまな症状の総称として使われることがあります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、このバランスが崩れることで、吐き気、めまい、頭痛、動悸、だるさなど多様な身体症状が現れます。精神的な不調として不安感やイライラ、気分の落ち込みを伴うこともあります。
特に朝は、副交感神経から交感神経への切り替えがうまくいかないと、起き上がれない、寝起きに不安感や動悸が起こりやすくなるといった症状が出やすい傾向があります。生活習慣を改善するだけでも自律神経が整い症状が改善することがあるため、まずは生活リズムを見直すことも大切です。
朝、仕事に行きたくないときの具体的な対処法

朝、仕事前につらい気持ちになったり涙が出たりする場合、まずは心身の状態を落ち着かせるための一時的な対処法と、根本的な解決に向けた中長期的な対処法を並行して考えることが重要です。
以下では、すぐに実践できる具体的な対処法を紹介します。
無理をせず休息を取る選択
朝、身体が動かないほどのつらさや涙が止まらないときは、心身が休息を強く求めているサインです。思い切って仕事を休むことが、シンプルかつ効果的な一時的対処法となる場合があります。有給休暇の取得や上司への相談を通じて、仕事のことを考えず睡眠や好きなことに時間を使って心身を休ませることに専念すると良いかもしれません。
無理に出勤してもパフォーマンスが低下したり症状が悪化したりする可能性があるため、勇気を出して休息を取ることがその後の回復につながります。長期休暇を取って職場から距離を置いたり、医師に相談し、勤務先に休職制度がある場合は休職制度を利用したりすることも、中長期的な選択肢として効果が期待できる場合があります。休むことを検討する際は、会社の規定や主治医の指示を確認することが大切です。
生活習慣の根本的な見直し
睡眠や食事といった生活習慣の乱れは、自律神経のバランスを崩しさまざまな不調を引き起こすため、規則正しい生活リズムを整えることが心身の改善につながります。十分な睡眠時間の確保、栄養バランスのよい食事、適度な運動といった基本的な習慣を心がけましょう。
たとえば、軽い散歩をするだけでも気分転換やストレス軽減に効果が期待できます。生活習慣の見直しは、不調の症状改善にも効果が期待でき、生活リズムを整えるだけで症状が改善することもあるため、できることから少しずつ取り組んでいくことが大切です。
つらい気持ちの原因の客観視
なぜ仕事に行きたくないのか、その理由を具体的に紙に書き出すなどして視覚化し、頭の中や状況を整理することが重要です。どんなときに症状が出るか、どんなことがきっかけか、職場での具体的な出来事などを記録してみましょう。
書き出した内容を振り返り、特定の曜日に症状が出やすい、特定の人物との関わりで症状が悪化する、特定の業務がある日に症状が出るといったパターンを見つけることで、原因が特定しやすくなります。
「人間関係がつらい」「業務量が多すぎる」など具体的な問題点を把握できれば、次の対策を立てやすくなります。
信頼できる相手への相談
つらい気持ちを一人で抱え込まず、家族や友人、同僚など安心して話せる人に聞いてもらうことで、心が軽くなることがあります。口に出して話すことで気持ちが楽になったり、客観的なアドバイスで新しい気付きや発見があったり、解決策が見つかったりする場合もあります。
職場の問題が原因の場合は、信頼できる上司への相談が解決の一歩になるかもしれません。また、人事部や産業医といった専門的な立場の人に相談することも選択肢の一つです。悩みが解決に至らなくても、誰かに話すだけで状況が前向きに変わることもあるため、勇気を出して相談してみましょう。
完璧主義を手放す意識
真面目で責任感が強い人ほど仕事で完璧を目指しがちですが、それが過度なプレッシャーとなり疲労やストレスの原因となっている可能性があります。100点満点ではなく60点や70点でも「これで十分」と考え方を変えてみましょう。
すべてを完璧にこなすことは不可能で、完璧でなくても仕事は回ります。一人で抱え込まず周囲に協力を求めたり、タスクを分担したりすることも大切です。
また、他人と自分を比較することをやめ、「過去の自分」と比較することで、気付いていなかった成長を感じたり次の目標設定ができたりするなど、ポジティブな視点で自己肯定感を高める工夫も効果が期待できます。
病院受診を検討すべきサインと相談窓口

一時的な対処法で改善しない場合や、特定の症状が続く場合は、専門機関への相談が必要です。以下の症状が2週間以上続く場合は、うつ病や適応障害などの可能性があるため、早期受診を検討しましょう。早期に専門家のサポートを受けることが、回復への近道となります。
- 気分の落ち込みが続き、何にも興味を持てない
- 不眠または過眠が続く
- 強い疲労感、集中力・判断力の低下
- 動悸、めまい、吐き気などの身体症状が続く
- 死にたいと考えることがある
相談できる専門機関の特徴を、以下の表で比較します。
| 相談先 | 主な役割 | メリット | デメリット |
| 心療内科/精神科 | 診断、治療(薬物療法など) | 医学的な診断と専門的治療が受けられる。診断書発行。 | 受診への抵抗感、予約の取りにくさ。 |
| 産業医 | 健康相談、職場環境改善 | 職場の状況を踏まえたアドバイス。会社との調整。 | 企業にいない場合がある。 |
| 公的相談窓口 | 心理的サポート、情報提供 | 気軽に匿名で相談できる(場合がある)。 | 診断・処方は不可。 |
職場環境の改善と働き方の見直し

職場の人間関係や業務内容がストレスの原因である場合、環境を変えることで状況が改善する可能性があります。現在の職場での環境調整を試みる方法と、転職による根本的な解決策について考えてみましょう。
それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
現在の職場での環境調整
職場の人間関係や業務内容がストレスの原因である場合、まずは現在の職場で環境調整を試みることも選択肢の一つです。リモートワークへの切り替えが可能か会社に相談するというのも良いかもしれません。最近はリモートワークを導入する会社も増えており、対人関係のストレスが軽減される可能性があります。
また、部署異動や配置転換を希望し、ストレス原因から物理的に離れることも有効な手段といえます。信頼できる上司や人事部、産業医に相談することで、職場環境の改善や業務内容の見直しが図られるケースもあります。ただし、相談する内容や相手、タイミングを慎重に検討することが大切です。
転職による解決の模索
さまざまな対処法を試しても状況が改善しない場合、あるいは職場の環境自体が根本的な原因である場合は、転職を検討することも有効な選択肢の一つです。
ただし、転職によって解決できる問題と解決が難しい問題があることを理解しておく必要があります。
| 転職による解決 | 主な問題 |
| 解決できる可能性が高い問題 |
|
| 転職だけでは解決が難しい問題 |
|
転職活動を始める際は、まず「なぜ今の仕事がつらいのか」を自己分析することが重要です。自分の強みや弱み、興味、価値観などを深く掘り下げることで、次に進むべき道が明確になります。
社会復帰に向けた準備は就労移行支援事業所/自立訓練(生活訓練)事業所 ニューロリワークへ
「仕事に行きたくない」「朝起きられない」状態から回復し社会復帰を目指すには、専門的なサポートを受けながら準備を進めることが有効です。たとえば、就労移行支援は、うつ病や適応障害などの障害のある方が、就職や復職・再就職に必要なスキルを身に付け安定して働き続けるための福祉サービスです。障害者手帳をお持ちでない方でも、医師の診断や定期的な通院があれば利用できる場合があります。
「ニューロリワーク」では、生活リズムの改善、体力回復、ストレスケア、職業スキルの習得から就職後の定着支援まで、一人ひとりの状態に合わせて専門スタッフがサポートします。生活習慣を整える「ブレインフィットネスプログラム」、認知行動療法に基づく「FITプログラム」、自己理解を深める「FINDプログラム」など、心身の健康と安定就労のための独自プログラムが充実しています。
朝のつらさや涙は、自身の心身が発しているSOSです。一人で抱え込まず、まずはニューロリワークにご相談ください。
※本記事は、一般的な情報提供を目的としています。症状が続く場合や不安な場合は、自己判断せず、医療機関にご相談ください。
監修者
工藤 知紀
千葉くどう産業医事務所株式会社 代表取締役/産業医
札幌医科大学医学部卒業後、製鉄記念室蘭病院にて初期研修を修了。
豊田合成株式会社の専属産業医として従業員の健康管理・メンタルヘルス支援に従事したのち、独立して「千葉くどう産業医事務所株式会社」を設立。
現在は多業種の企業において20社以上の産業医を務め、労働衛生・メンタルヘルス・健康経営の各分野で幅広く活動。
法令遵守を踏まえた実践的な健康管理体制の構築や、安全衛生委員会・復職支援・ストレスチェック運用など、企業の現場に根ざした伴走型サポートを行っている。
■保有資格:
日本医師会認定産業医/産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)/健康経営エキスパートアドバイザー/両立支援コーディネーター
ホームページ:https://kudo-sangyoui.com/
記事のリンクをコピー