テレワークのメンタル不調を防ぐには?うつ対策とセルフケア
テレワークは通勤時間の削減や柔軟な働き方を実現する一方で、コミュニケーション不足や生活リズムの乱れから、メンタル不調を引き起こすケースも指摘されています。また、孤独感や疲労感を感じている方も少なくありません。
本記事では、いわゆる「テレワークうつ」の症状や原因を解説し、規則正しい生活リズムの確立や適度な運動習慣の導入など、具体的なセルフケア対策をご紹介します。心身の健康を保ちながら、テレワークを快適に続けるために、ぜひ参考にしてください。
テレワークでメンタル不調?「テレワークうつ」とは

テレワークの普及に伴い、「テレワークうつ」と呼ばれるメンタル不調が問題になっています。テレワークは通勤負担の軽減や時間の有効活用といったメリットがある一方で、環境の変化がストレスとなり、うつ病に似た症状を引き起こす可能性があることが指摘されています。
特に、コミュニケーション不足による孤独感や孤立感、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることなどが要因となり、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすケースが増えています。
早期発見と適切な対応により、健康的なテレワーク生活を実現することが重要です。
テレワークうつの主な症状(精神面・身体面)

テレワークうつは病名ではなく、在宅勤務などの環境下で生じるストレスにより、うつ病に似た症状がみられる状態を指す一般的な用語です。精神的な症状としては、気持ちが落ち込む、すぐイライラする、ネガティブになるといった変化が見られます。
身体的な症状としては、食欲が出ない、寝つきが悪い、身体がだるいといった不調が現れる場合があります。これらの症状は人によって程度が異なり、軽い場合もあれば日常生活に支障が出るほどつらい状態になるケースもあります。早期に気付き、適切な対応をとることが大切です。
なぜテレワークはメンタル不調を引き起こすのか?主な原因

テレワークによるメンタル不調には、様々な要因が複雑に絡み合っています。人との関わりが減ることによる孤独感、仕事と私生活の境界が曖昧になることによる疲労の蓄積、運動不足や生活リズムの乱れ、そして業務の可視化不足による評価への不安などが主な原因として挙げられます。
これらの要因を理解することが、適切な対策を講じる第一歩となります。
コミュニケーション不足による孤独感や孤立感
テレワークはオフィス勤務に比べて人との関わりが減少するため、孤独感やネガティブな感情を抱きやすくなる傾向があります。上司や同僚との何気ない会話や雑談の機会が失われ、ちょっとした相談もしづらくなることで、業務上の不安や悩みを一人で抱え込みやすくなってしまいます。
特に一人暮らしの場合は、家族や同居人がいる方とは異なり、他者との接点が極端に減少します。その結果、周囲に気付かれることなくメンタルヘルスの状態が悪化するいわゆる「サイレントうつ」のリスクが高まることが指摘されています。
仕事と私生活の境界線の曖昧化
在宅勤務では通勤がなくいつまでも業務を行うことができるため、仕事の時間とプライベートの時間の区別がつきにくくなり、長時間労働につながりやすくなります。
通常、仕事中は交感神経が優位になり、休息時は副交感神経が優位になることで心身のバランスが保たれていますが、在宅ワークではこの切り替えが難しく、心身が疲弊しやすい状態に陥ります。
また、終業後もメールやチャットに対応してしまうケースも多く、「オン」の状態が長時間続くことがメンタル不調の一因となっています。
運動不足や生活リズムの乱れ
テレワークは緊張感がなくなるため、夜更かしや寝坊などで睡眠リズムが乱れやすく、日中の眠気や身体のだるさといった不調がうつ病につながるリスクが高まる可能性があります。通勤がなくなることで1日外に出ない方も増えており、活動量が減少することで運動不足に陥りやすくなっています。
運動不足は肩こりや腰痛といった身体的な問題だけでなく、メンタル面にも悪影響を及ぼします。職場と家庭が一体化することで気分転換が難しくなり、ストレス解消の機会が減ってしまうことも問題となっています。
業務の可視化不足による評価への不安
テレワークでは業務中の姿が周囲から見えないため、「自分の仕事を見てもらえない」「努力が伝わらない」といった不満から、適切に評価されていないのではないかという不安を感じやすくなりがちです。また、上司や同僚の働き方も見えにくくなることで、役割分担が不明確になったり、業務負担に偏りが生じたりするストレスも生まれます。
特に管理職やSE職など裁量権が大きく専門性の高い職種では、「誰にも任せられない、自分で完結しないと」という責任感から自分を追い込み、無理をしがちになる傾向があるといわれています。
テレワーク中のメンタル不調のサイン(セルフケアとラインケア)

メンタルヘルス不調は早期発見と対応が重要です。従業員自身が自分の状態に気付く「セルフケア」と、上司が部下の変化に気付く「ラインケア」の両方が欠かせません。テレワークでは対面時と比べて様子が見えにくいため、これらのケアがより一層重要となります。
以下では、メンタル不調のサインと、それぞれのケアにおけるチェックポイントを解説します。
自分で気付くセルフチェック項目
従業員自身がメンタルヘルス不調に気付き、対処する「セルフケア」は、テレワーク環境において特に重要となります。厚生労働省が公表している「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」を活用することで、自身の疲労度を客観的に把握できます。テレワークうつやメンタル不調には、精神面と身体面で様々なサインが現れるため、参考として以下のような項目に当てはまるものがないか定期的にチェックするとよいでしょう。
【精神面のサイン】
- 気持ちが落ち込む
- すぐイライラする
- ネガティブになる
- 集中力が低下し、ミスが目立つ
- 仕事のモチベーションが低下する
- 以前よりも発言数が減る
- 表情や声色が暗い
【身体面のサイン】
- 食欲が出ない
- 寝つきが悪い、不眠
- 身体がだるい
- 微熱が続く
- 動悸
- 耳鳴り
上記のサインがみられる場合、メンタル不調以外の不調である可能性も考えられることから、強く該当するものがある場合は医療機関を受診することが大切です。
周囲が気付くラインケアの視点
上司や管理監督者が部下の不調に早期に気付き対応する「ラインケア」は、メンタルヘルス対策において重要な役割を果たします。テレワークでは部下の様子が直接見えにくいため、企業は管理監督者に対してラインケアに関する研修を実施したり、1on1ミーティングの機会を設けたりすることが大切です。もしも上司との接点が少ない場合は、自ら1on1を申し出るのも一つの方法です
上司や管理監督者がラインケアで注目すべきサインとしては、以前より発言数が減る、表情や声色が暗い、チャットの返信が遅くなる、不満をもらすようになるといった変化が挙げられます。そのため、上司や管理監督者が把握しやすいよう、従業員は何かしらの形でSOSのサインなどを出していくことも大切です。
テレワークでのメンタル不調を防ぐセルフケア対策

テレワークでは、オフィス勤務とは異なる環境で働くため、心身のバランスを崩しやすい傾向があります。メンタル不調を防ぐには、自分自身で健康を管理するセルフケアが重要です。
ここでは、テレワーク環境でも心身ともに健康的に働き続けるための具体的な対策をご紹介します。
規則正しい生活リズムの確立
テレワークは生活リズムが乱れやすいため、オフィス勤務時と同様に決まった時間に起床・就寝することが重要です。特に睡眠の質を確保し、食事時間を一定に保つことが、体調やメンタルを安定させる基本となります。
朝起きたら着替える、太陽の光を浴びるなど、生活にメリハリをつける工夫も効果的です。通勤がなくなった分、つい夜更かしをしてしまうこともありますが、規則正しい生活リズムを維持することで、心身の健康を保ちやすくなります。
「オン」と「オフ」の切り替えの工夫
仕事とプライベートの区別をつけるため、意識的な切り替えが重要です。具体的な工夫として、終業後はPCの電源を切る、仕事部屋を決める(難しい場合はテーブルクロスを変えるなど)、仕事の始めと終わりに鏡で自分に声をかけるなどがあります。休憩時間や終業時間をアラームで設定し、意識的に休息を取ることも有効です。
形から入ることで、自然と気持ちの切り替えができるようになる場合もあります。小さな行動の積み重ねが、働き方の質を高めることにつながります。
意識的なコミュニケーションの確保
孤立を防ぐため、チャットやオンライン会議システムを活用し、業務外の雑談も含めたコミュニケーションを意識的に行うことが大切です。企業側も、バーチャルオフィスの導入や、雑談用のチャットルームを作成するなどの工夫を行っている事例があります。
一人暮らしの方は特に、オンラインイベントに参加するなど、人とのつながりを持つ機会を設けることが望まれます。顔を合わせる機会が減った分、積極的にコミュニケーションを取る姿勢が、メンタルヘルスの維持に役立ちます。
適度な運動習慣の導入
テレワークによる運動不足を解消するため、適度な運動を習慣化することが大切です。適度な運動は、身体面の健康だけでなくメンタル向上にもつながり、気分転換にもなります。ストレッチやヨガ、散歩など、自宅で簡単にできる運動から始めてみましょう。また、意識的に外に出て日光を浴びることも効果的です。
通勤がなくなったことで運動量が大幅に減っている方も多いため、日常生活の中に意識的に身体を動かす時間を取り入れることが、健康維持のポイントとなります。
快適な作業環境の整備
作業環境の質が悪いとストレスの原因となるため、厚生労働省のチェックリストなどを参考に環境を整えることが望まれます。具体的な整備例として、作業に適したデスクや疲れにくい椅子の使用などが挙げられます。
可能であれば仕事部屋と休憩する部屋を分けるなど、集中できる環境を作ることも重要です。自宅での作業環境を見直すことで、長時間のデスクワークでも身体への負担を軽減でき、結果としてメンタル面の安定にもつながります。
参考:厚生労働省|テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】
テレワークでの社会復帰や体調管理に不安ならニューロリワークへ
テレワークはメリットがある一方、メンタル不調を抱える方や社会復帰を目指す方にとっては、体調管理やコミュニケーション面で特有の難しさがあります。一人での体調管理が不安、生活リズムを整えたい、テレワークでも必要なコミュニケーションスキルを学びたいという方には、就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所の利用が有効です。
「ニューロリワーク」は、うつ病や適応障害などで社会復帰を目指す方を対象とした就労移行支援事業所/自立訓練(生活訓練)事業所であり、障害者手帳がなくても医師の診断書や定期的な通院の事実があり、自治体の判断により受給者証が発行されればで利用できる場合があります。生活習慣を整える「ブレインフィットネスプログラム」や、認知行動療法に基づく「FITプログラム」、自己理解を深める「FINDプログラム」など、安定就労に必要な独自のプログラムを提供しています。就職や復職活動のサポートから、就職労後に長く働き続けるための定着支援まで、一人ひとりの状況に合わせて専門スタッフがサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者
工藤 知紀
千葉くどう産業医事務所株式会社 代表取締役/産業医
札幌医科大学医学部卒業後、製鉄記念室蘭病院にて初期研修を修了。
豊田合成株式会社の専属産業医として従業員の健康管理・メンタルヘルス支援に従事したのち、独立して「千葉くどう産業医事務所株式会社」を設立。
現在は多業種の企業において20社以上の産業医を務め、労働衛生・メンタルヘルス・健康経営の各分野で幅広く活動。
法令遵守を踏まえた実践的な健康管理体制の構築や、安全衛生委員会・復職支援・ストレスチェック運用など、企業の現場に根ざした伴走型サポートを行っている。
■保有資格:
日本医師会認定産業医/産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)/健康経営エキスパートアドバイザー/両立支援コーディネーター
ホームページ:https://kudo-sangyoui.com/
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