発達障害でコミュニケーションが苦手な理由と対策!いわゆる「コミュ障」との違いも解説
発達障害の特性により、コミュニケーションに困難を感じている方は少なくありません。「相手の気持ちが読み取れない」「会話が続かない」といった悩みを抱えながらも、適切な対処法が分からず一人で抱え込んでしまうケースもあります。
この記事では、発達障害によるコミュニケーションの苦手さの理由や、障害の種類別の特徴、具体的な改善方法について解説します。職場での対処法や相談先もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害とコミュニケーション障害の違いとは

「発達障害」「医学的なコミュニケーション障害」「俗語としてのコミュ障」は、それぞれ異なる概念を指しています。これらは混同されやすいものの、性質や意味合いが大きく異なるため、正しく理解することが大切です。
| カテゴリ | 定義・性質 |
| 発達障害によるコミュニケーションの苦手さ | 脳機能の働き方にみられる生まれつきの特性 ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性により、コミュニケーションに困難が生じている状態。 |
| 医学的なコミュニケーション障害 | DSM-5に基づく疾患群 アメリカ精神医学会の診断基準において「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」に分類される医学的な疾患。 |
| 俗語としての「コミュ障」 | 性格や苦手意識(俗語) 医学的な診断名ではなく、人見知りの人や会話にコンプレックスを抱く人を指すネットスラングや俗語。 |
発達障害によるコミュニケーションの苦手さとは
発達障害は脳機能の働き方に生まれつきの特性があり、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性により、相手の意図を汲み取ったり自身の考えを伝えたりすることに困難が生じる場合があります。
具体的には、「空気が読めない」「話を聞いていないと言われる」「一方的に話してしまう」といった困りごとが挙げられます。これらの特性は脳機能の偏りによって生じるものであり、本人の努力不足や性格の問題ではありません。
発達障害のある方がコミュニケーションで直面する困難は、特性を理解し適切なサポートを受けることで改善できる可能性があります。
医学的な定義におけるコミュニケーション障害とは
「コミュニケーション障害」は、アメリカ精神医学会のDSM-5で定義された疾患群であり、言語や発話、社会的コミュニケーションに困難がある状態を指します。この疾患群には、言語症、語音症、小児期発症流暢症(吃音)、社会的(語用論的)コミュニケーション症などが含まれており、発達障害とは異なる診断基準を持っています。
【参考:一般社団法人日本精神医学研究センター|コミュニケーション障害】
ネットスラングとして広まった「コミュ障」という言葉と混同されやすいものの、医学的な意味合いは全く異なるため注意が必要です。医学的なコミュニケーション障害は、専門的な評価と診断に基づいて判断される疾患であり、適切な支援や治療の対象となります。
いわゆる「コミュ障」と発達障害の関係性
一般的に使われる「コミュ障」は、人見知りや会話への苦手意識を指す俗語であり、医学的な診断名ではありません。しかし、発達障害のある方がコミュニケーションの失敗体験を重ねることで自信を失い、「コミュ障」だと自認してしまうケースも見られます。
たとえば、ASDの特性により相手の意図を読み取ることが難しく、誤解を招いてしまった経験が積み重なると、コミュニケーション全般に対する不安や苦手意識が強まることがあります。発達障害の特性によるコミュニケーションの難しさと、性格的な人見知りや緊張による話しにくさは区別して考える必要があります。
発達障害の種類別に見るコミュニケーションの特徴と悩み

発達障害のタイプによって、コミュニケーションにおける困難さの現れ方は異なります。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)では、それぞれ特有のコミュニケーション上の特徴があり、対人関係における悩みも様々です。
| 障害の種類 | コミュニケーションにおける主な特徴 |
| ASD(自閉スペクトラム症) | 「相手の意図や場の空気を読むのが苦手」 言葉を文字通りに受け取ったり、暗黙の了解を理解するのが難しかったりする。また、自身の関心があることを一方的に話してしまう傾向もある。 |
| ADHD(注意欠如・多動症) | 「衝動性や不注意により会話の制御が難しい」 思いついたことをすぐに口にしてしまったり、相手の話を最後まで聞くのが難しかったりする。話が飛躍することも多い。 |
| LD/SLD(学習障害/限局性学習症) | 「特定の情報伝達手段(読む・書く・聞くなど)に困難がある」 コミュニケーション能力自体に問題がなくても、情報の入力・出力の手段によって理解や伝達が難しくなることがある。 |
※これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、すべての方に当てはまるわけではありません。特性の現れ方や困りごとは一人ひとり異なります。
ASD(自閉スペクトラム症)の会話や対人関係の特徴
ASDのある方は、相手の気持ちや場の空気を読むことが苦手で、言葉を文字通りに受け取ってしまう傾向があります。具体的なコミュニケーション上の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- 曖昧な表現が理解できない場合がある
- 興味のある話題を一方的に話し続ける傾向がある
- 視線を合わせるのが苦手な場合がある
暗黙の了解や社交辞令が通じにくく、対人関係で誤解を生みやすい状況が生じることもあります。たとえば、「また今度」という言葉を本当の約束と受け取ってしまい、相手が社交辞令として使っていたことに気付かないケースなどが考えられます。
ADHD(注意欠如・多動症)の会話や対人関係の特徴
ADHDのある方は、衝動性や不注意から、相手の話を遮って話し始めたり、話題が次々と飛んでしまったりする傾向があります。主なコミュニケーション上の特徴は以下の通りです。
- 人の話を最後まで聞けない場合がある
- 思ったことをすぐに口にしてしまう傾向がある
- 落ち着きがなく動き回る場合がある
悪気はなくても相手を不快にさせてしまったり、会話のキャッチボールが成立しにくかったりすることがあります。頭に浮かんだことをすぐに伝えたくなる衝動性により、相手の発言を途中で遮ってしまい、「人の話を聞かない」と誤解されるケースも見られます。
LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の会話や対人関係の特徴
LD/SLDのある方は、「聞く」「話す」「読む」「書く」などの特定の能力に困難があり、情報伝達がスムーズにいかない場合があります。コミュニケーションにおける主な困りごとは以下の通りです。
- 会議の内容を聞き取れない場合がある
- 文字での指示が理解しにくい場合がある
- 自身の考えを言葉にするのが苦手な場合がある
コミュニケーション能力自体に問題がなくても、情報処理の特性によって誤解されやすいという特徴があります。たとえば、口頭での説明は理解できるのに文字での指示書が読み取れなかったり、理解していても文章にまとめることが困難だったりするため、「理解力がない」と誤解を受けることもあるのです。
発達障害のある人がコミュニケーション能力を向上させる方法

発達障害の特性によってコミュニケーションに困難がある場合でも、様々な工夫やトレーニングによって改善できる可能性があります。自身の特性を理解して得意な方法を見つけること、スキルをトレーニングすること、具体的な指示を求めたり自身用のマニュアルを作成したりすることなど、実践的なアプローチが効果的です。また、本人の工夫だけでなく、環境調整や周囲の理解・配慮を組み合わせることで、より負担を軽減しやすくなります。
以下では、コミュニケーション能力を向上させるための具体的な方法について解説します。
自身の特性を理解し得意なコミュニケーション方法を見つける
まずは自身の発達障害の特性(ASD、ADHD、LDなど)を正しく理解し、どのような場面でつまずきやすいかを把握することが重要です。特性を理解することで、自身に合ったコミュニケーション手段を見つけやすくなります。
たとえば、「話すよりも書く方が得意」という方はメールやチャットを積極的に活用したり、「視覚的な情報の方が理解しやすい」という方は図や表を使った資料を求めたりするといった工夫が考えられます。
苦手なことを無理に克服しようとするのではなく、得意な方法を活かすことで、ストレスを軽減しながらコミュニケーションの質を高めることができます。
傾聴力やアサーションなどのスキルをトレーニングする
相手の話に耳を傾ける「傾聴力」や、相手を尊重しながら自身の意見を伝える「アサーション」などのスキルを学ぶことがおすすめです。これらのスキルは、ロールプレイやSST(ソーシャルスキルトレーニング)などの具体的なトレーニング方法を通して身に付けることができます。
| トレーニング方法 | 内容・実施方法 | 身に付くスキル・効果 |
| ロールプレイ | 「場面を想定した役割演技」 「上司に相談する」「同僚に断る」など具体的な場面を設定し、役になりきって会話を演じる。実際に声に出し、身振り手振りを交えて練習する。 |
アサーション(自己表現) 頭で理解するだけでなく、実践を通して適切な言い回しや態度の取り方を体得できる。相手を尊重しつつ自身の意見を伝える力が養われる。 |
| SST(ソーシャルスキルトレーニング) | 「社会生活技能訓練」 社会生活や対人関係に必要なスキルを学ぶ。挨拶や「報告・連絡・相談」などのビジネスマナーから、感情のコントロール方法まで幅広く扱う。 |
社会性・対人スキル 職場などの社会集団の中で、周囲と協調しながら適切に振る舞うための基礎的なスキルが身に付く。 |
| 傾聴トレーニング | 「聴くことに特化した練習」 話し手と聞き手に分かれ、聞き手は「うなずき」「あいづち」「復唱(相手の話を繰り返す)」などを意識しながら、相手の話を最後まで否定せずに聴く。 |
傾聴力(アクティブリスニング) 相手に「話を聞いてもらえている」という安心感を与え、信頼関係を築く力が向上する。会話のキャッチボールがスムーズになる。 |
| グループワーク | 「集団での課題解決」 複数人で一つのテーマについて話し合ったり、作業を分担して成果物を作成したりする。自身と他者の意見の違いを知り、協力する経験を積む。 |
チームワーク・協調性 自身の意見を伝えつつ他者の意見も尊重する姿勢や、周囲の状況を見て動く力が養われる。 |
これらのスキルを身に付けることで、対人関係のトラブルを減らし、円滑なコミュニケーションが可能になります。
具体的な指示を求めたり自身用のマニュアルを作成したりする
曖昧な指示が苦手な場合は、「具体的にいつまでに、何をすればいいですか?」と質問するなど、具体的な情報を求める工夫が効果的です。自身から確認することで、誤解やミスを未然に防ぐことができます。
また、業務手順やルールを自身なりに整理し、分かりやすいマニュアルを作成することで、ミスや混乱を防げます。手順を文字や図で視覚化しておくと、必要なときに繰り返し確認でき、作業の見通しを立てやすくなります。
文字や図を使って説明してもらうよう周囲にお願いすることも一つの対策です。口頭での説明だけでなく、視覚的な資料があることで理解がしやすくなります。
仕事や職場でコミュニケーションに悩んだときの対処法と相談先

仕事や職場でコミュニケーションに悩みを抱えたとき、一人で抱え込まず適切な対処法を取ることが大切です。周囲に自身の障害特性を伝えて理解と配慮を求めることや、就労移行支援などの専門機関を活用してスキルアップを目指すことが効果的なアプローチとなります。
周囲に障害特性を伝えて合理的配慮を求める
職場でのコミュニケーションを円滑にするために、上司や同僚に自身の障害特性や苦手なことを伝え、理解を求めることが重要です。障害特性を知ってもらうことで、周囲も適切なサポートがしやすくなります。
たとえば、「指示は口頭だけでなくメモでも欲しい」「静かな環境で作業したい」など、具体的な配慮事項を相談することが大切です。
合理的配慮を受けることは、自身の能力を発揮し、職場に貢献するためにも重要です。配慮を求めることは決して特別扱いを望むことではなく、誰もが働きやすい環境を整えるための大切な一歩です。
就労移行支援などの専門機関を活用してスキルアップを目指す
一人で悩まず、就労移行支援事業所などの専門機関に相談し、コミュニケーションスキルの向上や就職活動のサポートを受けることをおすすめします。就労移行支援では、SSTやビジネスマナー研修、模擬面接など、実践的なトレーニングが受けられます。
これらのプログラムを通して、職場で必要とされるコミュニケーションスキルを段階的に身に付けられます。また、専門スタッフのアドバイスを受けながら、自身に合った働き方や職場環境を見つけることができるというメリットもあります。発達障害の特性を理解した支援員が寄り添ってくれるため、安心して相談できる環境が整っています。
コミュニケーションの悩みを相談できるニューロリワーク
発達障害によるコミュニケーションの困難は、特性を理解し適切な対策を取ることで改善できる可能性があります。ASD、ADHD、LD/SLDといった障害の種類ごとに特徴は異なりますが、自身に合ったコミュニケーション方法を見つけたり、SSTなどのトレーニングでスキルを身に付けたりすることが効果的です。
「ニューロリワーク」では、発達障害のある方のコミュニケーションの悩みに寄り添い、就労や復職を目指して一人ひとりに合わせたプログラムを提供しています。「ブレインフィットネスプログラム」や「FITプログラム」など、脳科学に基づいた独自のアプローチで心身の健康と安定就労をサポートします。見学や体験実習も随時受け付けておりますので、まずは気軽にご相談ください。
監修者
藤本 志乃
公認心理師、臨床心理士
早稲田大学人間科学部健康福祉学科、同大学院人間科学研究科卒業後、荒川区教育センター、東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科にて心理士として勤務。
その後、日本赤十字社医療センター腎臓内科心理判定士を経て、2020年にオンラインで心サービスを提供するLe:self(リセルフ)を創業。
企業でのメンタルヘルス研修など予防的な心のケアに関する講演、コンテンツ作成などにも多く携わる。
著書にあふれる「しんどい」をうけとめる こころのティーカップの取り扱い方。
ホームページ:https://leself.jp/
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