うつ病やメンタル不調からの復職を成功させる「たった一つのこと」
復職や再就職を支援するリワーク施設のメリット徹底解説!
うつ病やメンタル不調によって自宅で休職している方は、しばしば「休養しているだけでいいのか」「本当に復職できるだろうか」と悩むことがあるかもしれません。
復職を目指す上で、取り組むべきことはたくさんあります。たとえば、休職の原因やその対策・改善方法を見つけること、または毎日の生活習慣を整え、体力を戻す(もしくはつける)こと、さらには通院や会社との連携など、さまざまです。これらすべてに一人で取り組み、実現していくとなると、心身ともに万全でない方にとってはかなりの負担になるといえます。
こうした課題の解決をサポートするのが、「リワーク施設」です。リワーク施設は、休職者の復職を支援し、復職に必要な環境を整える専門の施設です。
今回は、復職を目指す上で押さえておくべきポイントと、復職を目指す上でリワーク施設を活用するメリットについて、それぞれ前編と後編に分けてご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
うつ病から復職までの流れ
うつ病から復職までの流れは、段階的に進めることになります。無理をせず、適切な支援を受けながら職場復帰への道のりを歩むことが大切です。
復職に向けた第一歩は、治療を受けるところから始まります。治療を受ける主な目的は、健康な状態に戻り、再び社会生活を送れるようになることです。治療期間中は、医師の指導に基づいて適切な心理療法や薬物療法が行われます。期間中は十分な休養を取ることも重要で、この期間においては焦って復職を急がないことが大切です。
治療が進んで症状が安定すると、復職の準備を行います。ここで大きな役割を果たすのが、リワーク施設です。リワーク施設とは、うつ病やメンタル不調からの回復をサポートし、職場復帰や再就職を目指すための専門施設です。リワークは英語で「return to work(再び職場に戻る)」を意味し、心身の健康の回復を経て、職場復帰に向けて必要な準備を行う場所として機能します。一般的に、うつ病からの復職は慎重なプロセスを必要とし、焦りや無理は再発のリスクを高めることがあります。そのため、リワーク施設が果たす役割は非常に重要です。
リワーク施設で行われるプログラムは、多岐にわたります。たとえば、生活リズムの回復は主な目的のひとつです。長期間の休職期間中、生活のリズムが乱れることは決してめずらしくありません。朝起きる時間や食事・睡眠のパターンなど、日常生活の基本的なリズムが崩れると、復職後に働くことが困難になることがあります。リワーク施設では、こうした生活リズムを整えるためのトレーニングが行われ、規則正しい生活習慣を再び身につけることができるようサポートが行われます。また、ストレスマネジメントも重要な取り組みのひとつです。職場復帰後のストレス管理が適切に行われないと、再びメンタル不調に陥るリスクが高まります。リワークプログラムでは、ストレスの原因を理解し、その対処方法を学ぶ機会が設けられることもあります。たとえば、認知行動療法に基づく講義やグループセッションを通じて自己認識を深め、ストレスに対する適切な対応策を習得します。これにより、復職後もストレスへの向き合い方を学ぶことができ、再発防止に役立ちます。また、リワーク施設では同じような経験や目的を持つ仲間と一緒に活動することで、安心感や繋がりを得ることができます。これは、復職に向けた大きな力となります。
リワークプログラムが終了すると、医師と相談しながら復職のタイミングを決定します。重要なのは、急ぎすぎず、十分な準備が整った状態で復職を目指すという点です。
なお、復職後もいくつかの注意が必要です。復職直後は体調の変化やストレスを感じやすく再発のリスクがあるため、無理をせず段階的に仕事量を増やしていくことが推奨されます。また、職場の上司や同僚と密にコミュニケーションを取り、必要なサポートを受けることも大切です。
このように、うつ病等のメンタル不調からの復職は、医師やリワーク施設の支援を受けながら無理なく進めることが大きなポイントです。復職に向けた準備段階で精神的・身体的な回復を図り、社会生活に適応する力を再び身につけることが成功へのカギとなります。
うつ病から復職を成功させるためのポイントは?
そもそも、「復職の成功」とはどのようなことを指すのでしょうか。復職のゴールは、職場に戻って働き始めることだけではありません。復職後も再休職することなく、心身ともに健康状態を保ちつつ、安定して働き続けられることが復職の本当のゴールであり、成功といえます。言い換えれば、心身を復職後も働き続けられる状態にすることは、復職に欠かせないポイントです。
復職を成功させるポイントにはいくつかあります。特に押さえておきたいポイントは以下の9つです。
リワーク施設では、以下のポイントをすべて満たしているか否かで復職のタイミングを判断します。(※判断基準はリワーク施設によって違いがあります。)
上記の9つのポイントを満たしていない場合は、復職しても休職を繰り返すリスクが高くなってしまうため注意が必要です。
復職後の再休職は、可能な限り避けたいものです。再休職は自分を責め、苦しむ時間が長引いてしまい、復職へのネガティブな印象も強くなるため再び職場へ戻るハードルも上がりかねません。また、家族や会社の不安・心配を増やしてしまうことにもなります。
休職期間中は、「自分のキャリアのため」「生活のため」「家族のため」「会社のため」等、焦る気持ちや考えがたくさん浮かんでくるかもしれません。しかし、時期尚早の復職は、自身にとっても周りの人たちにとっても、結果的にデメリットとなるケースがあります。そのため、焦らずに、しっかりと自分の状態を復職のゴールに向けて整えることが大切です。
以下では、上記の9つのポイントの内、特に重要かつ復職のハードルとなることが多い3つについて詳しくみていきます。
休職の原因が解決している
休職の直接の原因であるうつ病などのメンタル不調については、主治医が治療を進めながら、復職が可能かどうかの判断が行われます。とはいえ、メンタル不調に至った根本的な原因は、医学的な治療だけでは解決が難しい場合もあります。根本的な原因が解消されなければ、せっかく復職しても不調が再発したり、再休職に至ったりするリスクが高まってしまいます。
休職の経緯や根本的な原因は、人によって異なります。たとえば、「職場の雰囲気になじめずにつらい思いをした」「パワハラやセクハラを受けた」「部署異動でストレスが増えた」といったように、原因を解決するためには企業側の調整や配慮が必要なケースも少なくありません。
復職を成功させるには、主治医や産業医の診断をふまえた上で、会社の人事や上司と交渉・調整を行い、休職原因を解決しておくというのが大きなポイントです。
週5日、定時に同じ場所へ通える
上述したように、復職のゴールは「復職後も再休職することなく、心身ともに健康な状態を保ちつつ安定して働き続けること」です。そのためには、「週5日、定時に同じ場所に通える」という状態、つまり復職後に十分に通勤が可能な状態で復職することが求められます。
復職の成功率を上げるために、リワーク施設では「遅刻や欠席をせず、週5日にわたって同じ時間に通所できている状態が3ヶ月続いていること」を復職の目安としています。(※リワーク施設によって違いがあります。)
この条件をクリアするには、上記の9つのポイントに出てきた「基本的な生活習慣が安定していること」「起床・就寝の時間が一定であること」も重要になります。
夜間に働く業種でない限り、昼夜逆転した状態で復職して週5日にわたって朝から8時間勤務をこなすのであれば、心身に大きな負荷をかけることになり、不調の再発や再休職につながりかねません。不眠の症状があったり、うつ病の症状で朝起きるのがつらかったりして睡眠時間が乱れていれば、遅刻する回数が増えてしまうかもしれません。
そのため、「週5日、定時に同じ場所へ通える」という状態を整えておくことは、復職を成功させる重要なポイントのひとつとなります。多くの休職者にとっては達成が困難と感じられるかもしれませんが、復職と、そして安定した就労のためには欠かせないポイントです。
他者とコミュニケーションがとれる
うつ病やメンタル不調は、他者とのコミュニケーションにも影響を与えることがあります。
たとえば、
「他人と関わることに不安を感じる」
「人と会うのも面倒で、休職してからほとんど誰とも会話をしていない」
「以前は楽しかった友人との会話でも、疲れるようになってしまった」
「ちょっとした雑談でも失言したのではないかと気に病んでしまう」
「相手の話が頭に入ってこない」
「自分の気持ちや考えを上手く言葉にできなくなった」
などなど、日常生活や会社での他者とのコミュニケーションに煩わしさや難しさ(または上手くいかない感覚)を感じるケースもあります。多くの場合、復職後は同僚や上司とのコミュニケーションが毎日のように求められるため、コミュニケーション能力は不可欠となります。
ウォーミングアップをせずに全力で走り出すアスリートがいないように、休職期間中には、復職に向けたウォーミングアップに取り組むことが大切です。プロのアスリートほど、怪我を予防し、最高の成果を上げるために丁寧にウォーミングアップを行っています。
コミュニケーション能力に関しても同様で、十分なウォーミングアップなしに復職すれば対人関係でストレスを感じ、不調を再発させてしまう恐れもあります。そこで、たとえばリワーク施設でグループワークを通じて(もしくは一対一で)簡単なコミュニケーションゲームを行ったり、模擬就労の中で同僚や上司との連携をとることがひとつの訓練となります。少しつらくても、短い時間や少ない回数から始めて他者とコミュニケーションを取っていくことで、コツを掴んだり、慣れて負担を減らしていくことができます。
このように、復職を成功させるためには他者とコミュニケーションできる状態を取り戻す訓練を行うというのが大きなポイントです。
それぞれのポイントを、ひとつずつ押さえていく
復職を成功させるポイントは、ひとつではありません。「基本的な生活習慣が安定しているか」「起床や就寝の時間が一定であるか」「再発防止策が練られているか」など、いくつもあります。
休職期間中にひとりで克服することが難しいのであれば、リワーク施設を活用するという選択肢もあります。復職を目指すためのリワーク施設である「ニューロリワーク」では、上述した9つのポイントを復職のための基準としています。
リワーク施設を利用するメリット
復職にあたり、上述した9つのチェックポイントの全てを満たさなければならないと考えると、それだけで気が重くなってしまう方も多いかもしれません。
また、復職を目指す上では各種のトレーニング(取り組み)の他に、通院や会社との連絡も行う必要があります。心身の不調を抱えている中で、これら全てを自身一人でスケジュール管理しながら進めていくのは困難といえます。「あれもこれも」という状態では心身の負担が和らぐことはなく、健全な復職や継続した就労は遠のくことになります。
こうした問題を解決するための方法のひとつが、復職や再就職を支援するリワーク施設の活用です。
施設スタッフと企業担当者との連携が可能
休職の原因を解決するためには、自身の生活リズムを整えるだけでなく、会社との調整や、配慮の依頼が必要な場合があります。とはいえ、人事や上司に自分一人で交渉することに心理的な負担がかかるケースも少なくありません。
「しばらく離れていた職場に連絡することに気後れを感じる」
「職場に部署異動をお願いしたいが、休職で迷惑をかけていると思うと引け目を感じて言い出せない」
「休職原因は上司のパワハラだったのに、復職の対応窓口も当該上司で連絡するのが怖い」
「会社側の担当者がメンタルの不調に理解がないため、職場環境の調整に応じてくれない」
「自分の主張を聞き入れてもらえず、企業側を説得することが難しい」
このような場合、リワーク施設を活用することで、担当のスタッフが企業との間に入り、調整や交渉などを行うことが可能です。
実は、企業側も復職の受け入れ経験が少ない場合は、不安を感じていることがあります。企業側が「本当に週5日、休まずに働けるか」「前の部署に戻しても問題ないか」「再休職する可能性はあるか」といった不安や疑問を抱いている場合、リワーク施設のスタッフはそれらの不安や疑問の解消にあたることが可能です。
たとえば、「遅刻や欠席をせずに通所ができている」「○○といった作業ができる状態である」「生活リズムは乱れていない」といった事実に基づいたデータをスタッフが企業に共有することで、復職に問題ない旨を理解いただき、復職後の勤務条件などを調整いただくことも可能です。
また、職場の復職のためだけでなく、休職期間を延長する必要がある場合もスタッフが企業側との間に入り、交渉や調整を行います。休職の延長が必要なケースとは、そもそもの休職期間が残りわずかな状態でリワーク施設に通い始めた場合や、上述した9つのポイントをクリアできておらず復職するのが時期尚早だとみなされている場合などです。
焦って復職することは、デメリットが多いものです。リワーク施設のスタッフと共に、しっかりと復職の準備を整えてから復職をすることが結果としては一番の近道となります。
週5日、定時に同じ場所に通うことで「自身の訓練」+「企業の安心材料」になる
もしも一人で「週5日、定時に同じ場所へ通える」という状態を目指すのであれば、まず何をするでしょうか。この場合に多いのが、「決まった時間に図書館へ通う」というものです。
こうした“セルフリワーク”には、欠席を報告する必要もなければ遅刻をしたペナルティもありません。それゆえ、職場復帰の訓練としては心理的負担が軽い状況といえます。
復職を成功させるためには、「復職後も再休職することなく、心身ともに健康状態を保ちつつ安定して働き続けられること」を目指す必要があります。そのためには、休職中でも職場への通勤と同等の負荷がかかる環境に身を置くことが大切です。そうした役割を果たすのが、リワーク施設なのです。
リワーク施設の多くはビルの一室などにあり、オフィスに近い環境となっています。そのため、電車などの交通機関を利用して通うことで通勤のシミュレーションにもなります。また、遅刻や欠席をする場合はスタッフに連絡や相談をする必要があるため、会社との連絡の訓練にもなります。
一人で休職期間を過ごしていると、「通勤できる体力がある」「復職すれば自然と定時に出社できるはず」と思うことがあるかもしれません。しかし、休職期間の中で気付かないうちに体力が落ちていたり生活習慣が乱れていたりする場合、いざ復職しても出勤がつらくて不調が再発してしまうということも考えられます。
実は、リワーク施設で利用者の復職希望に対してスタッフが復職許可を出せない理由として最も多いのが「週5日、定時に同じ場所へ通える状態を維持できていない」という理由です。(※施設によって異なります。)
このことからも、いかに「週5日、定時に通う」ということが重要であるかが分かります。リワーク施設を利用するメリットは、まさにこの点にあります。毎日通うことが重要で、それでいて難しいことであるからこそ、スタッフとともに訓練に取り組むことが復職への大きなプラスになります。
リワーク施設では、遅刻や欠席の頻度、復職訓練プログラムへの参加率を基にした訓練記録を重視します。この記録を基に、「週5日、定時に同じ場所へ通える状態か」が判断されます。記録があることで企業への情報提供も容易になり、企業にとって「この状態ならば復職を受け入れられる」という安心材料にもなります。
他者とのコミュニケーションの機会になる
自分一人で復職準備を進めるセルフリワークの場合、他者とコミュニケーションを図るのは非常に困難です。友人や知人とコミュニケーションをとることは可能ですが、どこか緊張感に欠け、訓練としては物足りないといえるでしょう。この点、リワーク施設であればスタッフはもちろん、他の利用者の方々もいるため、適切なコミュニケーションの機会となります。プログラムの中にはグループで行うものもあり、職場復帰後に近い環境で他者と話す感覚を取り戻すことができます。
また、コミュニケーションの訓練の機会としてだけでなく、同じような症状・悩みや、復職というゴールを目指す方々と関われる機会が得られることもまた、リワーク施設を利用することで得られる大きなメリットです。休職中に感じる孤独や不安など誰かに聞いてもらうことで落ち着いたり、共感してもらえることで自分だけではないという安心感につながったりすることもあります。
リワーク施設の中には対人スキルを高めるプログラムやアンガーマネージメント、認知行動療法に基づくプログラム等を実施している施設もあるので、「コミュニケーション能力に自信がない」「感情を抑えるのが苦手で対人トラブルにつながりやすい」「他人の言葉をネガティブに感じてしまいがち」といった悩みがある方にとっては、学びの多い機会になるといえます。
セルフリワークで難しいことは、スタッフとともに乗り越える
リワーク施設での復職活動と、自身一人での復職活動の大きな違いは、担当スタッフによる支援の有無です。「遅刻してしまった」「朝起きられなかった」というときもスタッフに相談して適切なサポートを受けることで、「遅刻や寝坊を繰り返さないために今から何ができるか」という方向に発想を転換させることができます。
こうした「問題や課題の発見→解決策の提案→解決」というプロセスを経ることができるのが、リワーク施設に通う大きなメリットのひとつです。
リワーク施設といえばプログラムに焦点が当てられることも少なくありませんが、スタッフや支援員との関わりもまた、施設を利用する大きなメリットです。施設選びの際には、プログラムの内容だけでなく、スタッフ・支援員とのコミュニケーションを通じて、休職期間を実りのあるものにできるかを判断するとよいでしょう。
まとめ
しばらく離れていた職場に戻るのは、精神的にも身体的にも負担がかかるものです。復職における負担を少しでも軽減し、職場復帰後も安定して働ける状態を整えることが、復職を成功させるポイントです。そのためにやるべきことはたくさんありますが、これまでにみてきたように、リワーク施設に通うことで目標への大きな一歩となります。
リワーク施設の「ニューロリワーク」では、休職中の方、もしくはこれから休職をお考えの方に向けた見学を承っています。ご興味のある方はぜひご検討ください。見学や体験実習を通じて疑問点や不安点をなくし、復職後に安定して働き続けられることを心より願っております。(休職や復職に関するご相談はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
・こころの耳 職場復帰のガイダンス(働く方へ)
・『みんなのメンタルヘルス総合サイト』仕事~働くための支援、休職からの復帰支援など~
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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