発達障害の方が職場で悩みやすいこととその対処法
ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害のある方は、それらが原因で職場で悩むことも少なくありません。今回は、発達障害の方が職場で悩みやすいこととその対処法についてご紹介します。
①タスクスケジュール管理
発達障害がある方が職場で悩みやすいことの1つ目は、タスク管理やスケジュール管理です。これは特に、ADHD(注意欠如・多動症)の方に多くみられる悩みです。
ADHDの方は「衝動性」の特性から、計画を立てて実行することや複数のタスクを順序立てて取り組むことを苦手に感じる傾向があります。この対処法としては、主に以下のふたつが挙げられます。
1:「時間処理の障害」として、自分の障害特性のひとつとして認識する。
スケジュール管理への苦手意識は、決して自身の怠けやだらしなさが原因で起こることではなく、障害特性のひとつとして考えて対処することが重要です。「自分の怠けが原因だ」と捉えてしまうと落ち込みや不安が強まり、二次障害としてうつ病などのメンタル不調を引き起こしてしまうリスクがあります。まずは自分の障害特性のひとつとして認識することが大切です。
2:短いスパンで目標や計画を達成しているか、細かく振り返る習慣をつける。
スケジュール管理アプリなどを使用している場合は、自分に合ったアプリを使用できているかを確認しましょう。もしも複数のアプリをインストールしていずれも中途半端になってしまっている場合はアプリを整理し、活用するものだけに絞ることが効果的です。
②感覚過敏
発達障害がある方が職場で悩みやすいことの2つ目は、光や音に過敏に反応してしまう感覚過敏です。これは、特にASD(自閉スペクトラム症)の方に多くみられる悩みです。
ASDの方の中には、視覚や聴覚などの五感の感覚のいずれかが敏感になることで特定の感覚に苦手意識や不快感が強く現れる方もいます。なお、これはASDの方全員に共通するというわけではなく、人によって度合いが異なります。
たとえば視覚過敏の場合、オフィスの光やPCのライトに苦手感や不快感を感じ、長時間にわたって仕事を継続することが困難なケースがあります。また、聴覚過敏の場合は些細な話し声やエアコンの機械音などが気になり、集中が継続できないといった傾向がみられます。
こうした感覚過敏への対処法としては、周りの方に理解いただくことも大切です。また、それぞれの原因毎に対策を立て、不快だと感じることから極力遠ざかるようにしましょう。たとえば、光が過度に眩しく感じるのであれば室内でもサングラスを使用を着用したり、音に過敏に反応してしまう場合はイヤホンや耳栓を使用したりといった対策が可能です。過敏になる原因と併せて周囲に解決策を伝えることで、理解を得て働きやすくなります。
③人間関係
発達障害がある方が職場で悩みやすいことの3つ目は、人間関係です。
ADHDの方の中には、「衝動性」や「多動性」の特性から人の話を聞かずに自分ばかりが話してしまうことや、思ったことや考えを衝動的に話し、会話の流れを止めてしまうという方もいます。
また、ASDの方の中には相手の立場に立って話すことが苦手で、相手の意に沿った言葉を返せないことや社交辞令や冗談などの発言を言葉通りに受け取ってしまう方など、それぞれの障害特性ごとにコミュニケーションの課題もあります。
コミュニケーションに問題がない場合でも、上述した「時間処理の障害」や「感覚過敏」などは周囲にしっかりと説明しなければ理解されることが難しいケースも多くあります。
一見すると「努力が足りない」「我慢が足りない」といった形で受け取られてしまうことも多く、周囲に理解をしてもらえないつらさから、周囲との関わりを避けて孤立してしまうなど、人間関係を上手く築けなくなってしまうことがあります。その結果、仕事が継続できなくなったり二次障害へとつながる可能性もあるため注意が必要です。
こうした症状に対する対策としては、主に以下の点が挙げられます。
①SST(ソーシャルスキルズトレーニング)など、日常生活技能訓練の中でコミュニケーションスキルを学習する。
(これから就職を目指す方は)
②自身の障害特性に合わせて就業先を選ぶ。
③入社前に自身の障害特性について企業側とすり合わせる。
③に関しては、たとえば過度にコミュニケーションが必要となる業務は避けたり、抽象的な会話や相手の心を読む場合が多い業務は控えるという対策が考えられます。また、就労移行支援事業所や障害者就労支援センターなどに今後の働き方や仕事について相談するという選択肢もあります。
さまざまな対策で負担を和らげる
上述したように、ADHDやASDなどの発達障害がある方が職場で悩みやすいことにはそれぞれの対応策があります。
タスク管理やスケジュール管理が苦手であれば、決してそれを自身の怠慢であると考えずに、まずはそれが自身の障害特性のひとつであると認識することが大切です。そして、短いスパンで目標や計画を達成しているかを細かく振り返るようにしましょう。
障害特性として視覚過敏や聴覚過敏などの感覚過敏がある方は、集中を維持したり長時間にわたって仕事に取り組むことが難しい場合があります。こうした場合には、周囲に理解を促すことが大切です。
発達障害のある方は、障害特性が原因でコミュニケーションに課題を感じているという方も少なくありません。こうしたケースではSST(ソーシャルスキルズトレーニング)などでコミュニケーションスキルを学習したり、自分の障害特性に合った就業先を選ぶという対策があります。
今回は、発達障害のある方が抱える悩みとして特に多いものを3つ厳選してご紹介しましたが、発達障害のある方全員が必ずしも同じ悩みを抱えているというわけではありません。同じ障害であっても、それぞれの障害特性や度合いは個人によって異なります。そのため、自身は障害上どのようなことが得意/不得意なのか、自身の障害特性をきちんと理解した上で必要な対処をとることが大切です。
また、日常生活を営む上で課題を抱えている障害がある方を対象に、生活能力の維持や向上等のために一定期間サポートを行うためのサービスもあります。たとえば、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつとして自立訓練(生活訓練)の支援があります。
ニューロリワークでは、うつ病やメンタル不調のある方を対象に、社会参加や復職・再就職の支援をおこなっています。日常生活で必要な土台となる生活習慣の構築プログラムをはじめ、自己理解とセルフケアや就職・職場復帰のプログラムなどを通じて安定した社会参加や復職・就職を目指します。事業所の見学や体験実習は随時受け付けていますので、ご興味のある方はお気軽にご参加ください。(メンタル不調からの社会復帰や復職、就職の相談はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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