リワーク支援と再発率に関するデータ|リワークプログラムの効果は?
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタルヘルスの不調が原因で休職した社員のうち42%が休職中、あるいは復職後に退職に至るそうです。復職を果たし、働き続けることは容易ではありません。リワーク支援は復職後の再発を防止し、継続して働き続ける助けになるといわれています。今回はリワーク支援の利用と再発率に関するデータや、どのようなリワークプログラムが有効なのか、具体的に紹介いたします。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.メンタルヘルスの不調による休職者の数と復職の現状について
患者数と休職者数の増加について
2016年の「労働者健康状況調査(厚生労働省)」によると、うつ病などの気分障害で医療機関を受診している患者の数は100万人を突破したそうです。これは2011年に実施された同調査より、16%も増加したことを示しています。
更に、2012年の「労働者健康状況調査(厚生労働省)」では、大手企業の90%以上が、過去1年間に、メンタルヘルスの不調により1か月以上休職した社員がいると回答しました。うつ病や統合失調症などメンタルヘルスの不調による休職は誰にでも起こりうる身近な問題になったと考えられます。
<過去1年間にメンタルヘルスの不調により連続して1ヶ月以上休職又は退職した労働者がいる事業所の割合>
(事業所規模) | |
5,000人以上 | 92% |
1,000~4,999人 | 92% |
500~999人 | 77% |
300~499人 | 65% |
100~299人 | 39% |
50~99人 | 18% |
30~49人 | 10% |
10~29人 | 3% |
出典:厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h24-46-50_01.pdf
復職への高い壁?休職者のうち42%が退職
メンタルヘルスの不調が原因となる休職者が増える一方、2014年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査において、メンタルヘルスの不調が原因となり休職した社員のうち42%が休職期間中、あるいは復職後に退職に至ると報告されています。
退職の原因には、休職期間が十分になく復職が果たせないこと、症状が改善する以前に早期に復職してしまったこと、復職後の支援体制が十分でないことなどが考えられます。
また、厚生労働省より発表された障害別の平均勤続年数をみると、精神障害のある方の平均勤続年数は4年3ケ月と他の障害のある方と比較しても短い傾向があります。就職や復職をしても勤務を継続するには高いハードルがあることがうかがえます。
<障害者の平均勤続年数の推移>
身体障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
2003年 | 10年0ヶ月 | 9年3ヶ月 | 3年9ヶ月 |
2008年 | 9年2ヶ月 | 9年2ヶ月 | 6年4ヶ月 |
2013年 | 10年0ヶ月 | 7年9ヶ月 | 4年3ヶ月 |
※ 勤続年数:事業所に採用されてから調査時点(各年11月1日)までの勤続年数。ただし、採用後に身体障害者となった者については身体障害者手帳の交付年月を、採用後に精神障害者となった者については事業所において精神障害者であることを確認した年月を、それぞれ起点としています。
出典:厚生労働省「障害者雇用の現状等」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000178930.pdf
2.再発を防ぐ!?リワーク支援の効果と有効なリワークプログラムとは
リワーク支援の利用と再発率の関係
再休職を防ぐ手段の一つとして、リワーク支援の利用が挙げられます。
日本うつ病リワーク協会が行った研究によれば、非リワークプログラム利用者はリワークプログラム利用者の実に6倍も復職後の再発リスクが高まるというのです。
もちろん、リワーク支援を利用したからといって100%再発を防ぐことはできません。実際にどのような場合にリワーク支援の利用が成功・失敗したのかを次の章でみていきたいと思います。
リワークについて詳しく知りたい方は、まず「リワークとは|リワークの内容と利用するメリットを徹底解説!」の記事をご覧ください。
出社継続率が91.6%改善|リワークプログラムの内容と定着率に関する調査
定着率の改善に効果のあるリワークプログラムとはどのようなものなのでしょうか。ここにひとつの調査報告書があります。
この調査では、厚生労働省が作成した「心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き」をもとにしたリワークプログラムに、主に以下の3点の改善を加えたところ、出社継続率が91.6%も改善したと報告されています。
<リワークプログラムの改善点>
①生活記録表を用いた復職判定 復職判定基準を「出社を模した生活を最低でも2週間続けること」と定め、休職者の生活状況を記録して復職判定に利用 |
②復職後6か月間の復職後プランの作成 復職後6か月間は業務負荷を段階的に調整、その期間の具体的な業務内容など復職後プランを作成 |
③休職中~復職後の毎月の産業医面談実施 休業開始から復職後まで毎月1回の産業医面談を実施 |
出典:産業衛生学雑誌「メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/6/54_E12001/_html/-char/ja
この結果から、日々の活動状況に基づく慎重な復職判断と、復職後のフォローが再休職を未然に防ぐために有効な手段であると考えられます。
生活習慣や活動状況をしっかり把握できるプログラムが用意されているか、復職へ向けての企業との連携や復職後の支援体制が整っているかどうかは、リワーク施設を選定するうえでの一つの基準となります。
リワーク利用者が感じた効果のあったプログラムとは?
次に、リワークプログラムを利用した方が、復職後に有効であったと感じているプログラムの内容を紹介します。
この結果は、福井障害者職業センターが復職者に対して有効であったリワークプログラムについてアンケートを実施したものです。
アンケートの結果をみると、「生活リズムを作ったこと」、「他の受講者との交流」、「作業課題を活用した集中力や持続力の向上」に関するプログラムについて、実際に効果があったと回答した人の割合が高い結果となりました。
< 復職後に効果のあったプログラム(回答数:9)>
リワークプログラムの内容 | 効果あり | 特に効果あり |
生活リズムを作ったこと | 77.8% | 22.2% |
他の受講者との交流(グループ討議) | 77.8% | 22.2% |
作業課題を活用した集中力や持続力の向上 | 77.8% | 11.1% |
うつ病対策講座 | 66.7% | 33.3% |
アサーショントレーニング等の対人関係スキル | 66.7% | 33.3% |
認知行動療法の考え方の習得 | 55.6% | 44.4% |
読書課題 | 55.6% | 22.2% |
体力の向上 | 44.4% | 0.0% |
症状への対応法 | 11.1% | 11.1% |
自律訓練法などのリラクゼーション | 11.1% | 0.0% |
GATBやBDIなど自己状態の把握 | 11.1% | 0.0% |
出展:うつ病などメンタルヘルス不全休職者の復職後職場定着への事業主及び復職者のニーズに関する一考察
https://www.nivr.jeed.or.jp/vr/p8ocur00000088cw-att/vr18_essay11.pdf
長く休職生活が続くと、生活リズムがくずれ、毎日決まった時刻に決まった場所に通うことが想像以上に大変になります。
復職前にリワーク施設に通うことで、実際の職場と近い環境で十分な準備をできたことが、復職後の定着につながっているのでしょう。
リワーク失敗の原因は復職判断と復職後のフォロー
次にリワークプログラムを利用しても再休職や退職に至ったケースについてみていきましょう。
リワークプログラムと職場への定着率を検証した調査報告書の中で、再発した人は以下のような理由があるのではないかと指摘されています。
<再発の原因>
・復職の判断が早すぎたため体調が悪化してしまった
・復職後の業務軽減が不十分であったため、業務負荷による疲労が蓄積して体調が悪化
・復職後いったん職場に適応したものの、その後体調や職場環境が変化した際に適切な治療的対応や職場環境の調整などが行われなかった
出典:産業衛生学雑誌「メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/6/54_E12001/_html/-char/ja
つまり、復職までの準備はもちろん、復職後に適切なサポートが受けられない場合も再休職や退職に至る可能性が高くなるといえるでしょう。(スタッフとともに休職からの復職を目指すなら → ニューロリワークの資料請求)
2.復職後の定着を見据えたリワークプログラムの受講を
再休職に至る主な原因
リワークプログラムの失敗事例を考えると、再発・再休職に至る主な原因は大きく2つあります。
ひとつは、準備が整わない状態で復職をしてしまうことです。
復職が可能かどうかは医師による症状の回復の診断だけでなく、日々の活動状況などを踏まえて慎重に判断することが重要です。
もう一つは、復職後のフォローが不十分であることです。
復職後間もない状態から、休職前と同様の働き方ができるわけではありません。残業どころか、フルタイムでの勤務も想像以上に困難なものです。
復職前に人事としっかり連携をとり、復職後の労働時間や業務内容の調整を行ってもらうことが大切です。
リワークプログラムの受講を検討する際は、少なくとも上記の二つをしっかり管理してくれる施設を選ぶことがのぞましいでしょう。
自分にとって最適なプログラムを提供する施設を見つけよう
リワークプログラムは、施設によって提供される内容が様々です。
人事(企業)や医療機関と連携を取り、復職後の受け入れ体制の調整や復職後の定着支援までをプログラムに含む施設もありますが、中には実施していない施設もあります。
自分が復職するうえでネックとなりそうなポイントを明確にし、自分にとって最適なリワークプログラムを提供している施設を見つけましょう。(ニューロリワークの見学をご希望の方はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
・厚生労働省「結果の概要 【事業所調査】1 長時間労働者への意思による面接指導等に関する事項」
・厚生労働省「H26患者調査 5 主な傷病の総患者数」
・独立行政法人 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立に関する調査」
・厚生労働省職業安定局「障害者雇用の現状等」
・障害者職業総合センター職業センター実践報告書No.26「第3章精神科医療機関におけるリワークプログラムの現状」
・産業衛生学雑誌「メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援プログラムの効果」
・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター研究部門「人口100万人都市におけるリワークプログラムの実践
-より有益な社会資源を目指して- 」
(写真素材:photoAC)
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