リワークプログラムの内容は?|各施設ごとの違いや特徴を徹底解説
リワークプログラムとは、うつ病や統合失調症などメンタルヘルスの不調が原因となり休職している方が、円滑に職場復帰をするための支援プログラムのことです。具体的にはどういうプログラムを行うのでしょうか。各施設ごとに提供されているプログラムの内容や、費用、特徴を詳しく解説していきます。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.リワーク支援とは
リワーク支援とは
リワーク支援とは職場復帰や復職(return to work)のことで、復職支援や職場復帰支援ともいいます。
うつ病や統合失調症などメンタルヘルスの不調が原因となり休職している方に対して、復職へ向けたリハビリを行います。
2.リワークプログラムの内容や目的、受けられる機関について
リワークプログラムとは?
リワークプログラムとは、うつ病、躁うつ病、適応障害、統合失調症などメンタルヘルスの不調を理由に休職した方を対象に、職場復帰へ向けて行われるトレーニングのことをいいます。
毎日決まった時刻に決まった場所へ通うことによる通勤を想定したトレーニングのほか、再発しないための知識学習や能力開発、体力回復を目的としたプログラムなど、復職後も再発せず働き続けることを目的としたプログラムが多数用意されています。
プログラムは個人に対して実施されるもの、集団だからこそ成立するもの、講義形式で行われるものなど、実施形態も様々です。
また、各施設によっても提供しているプログラムの内容は異なります。それぞれの施設でどのようなプログラムが実施されているのかは、3章で詳しく見ていきましょう。
リワークプログラムを受ける意味や目的は?
すでに復職に自信がある場合でも、人事や主治医からリワークプログラムの受講を進められるケースがあります。
それはなぜでしょうか。
リワークプログラムの受講を推奨するようになった背景には再発率・再休職率のリスクの高さが考えられます。
以前より、人事が求める復職可能な状態と、主治医が判断する復職可能な状態に乖離があることが指摘されていました。
主治医は病状の管理はできますが、毎日の過ごし方や生活習慣までみることはできません。
病状が安定しても、規則的に過ごせるところまで回復しなければ毎日決まった時刻に通勤するのは難しいものです。
早期に復職してしまった結果、再発してしまい、再休職に至るケースが少なくありません。
リワークプログラムは、「復帰後も再休職することなく就労を継続すること」が最終目標です。毎日決まった時刻に決まった場所へ通い、個人や集団でプログラムをこなすことで、復職へ向けてのリハビリテーションを行い、再休職することのない継続的な就労を目指します。また、医療機関や人事が復職を判断する基準については、臨床心理士監修|復職判断基準とは?人事・医療機関が職場復帰を判断するポイントの記事をご覧ください。
リワークプログラムはどこで受けられるのか?
リワークプログラムを提供している施設は、主に以下の4つに分類されます。
病院やクリニックなどの医療機関
障害者職業センター
企業内にもつリワーク制度
就労移行支援事業所などの就労支援機関
リワークプログラムを提供する施設は年々増えています。医療機関の場合、平成20年には27の医療機関しかなかったのが、5年経過した平成25年には171と約6倍もの医療機関がプログラムを提供するようになりました。
また、障害者職業センターは、障害者雇用促進法に基づき全国47都道府県にそれぞれ設置されています。
就労を目指す障害のある方に対して、就職や職場定着のためのトレーニングを行う就労移行支援事業所でも、リワークプログラムを提供している事業所が増えています。
(就労移行支援事業所についての詳しい説明はこちらのページ>をご覧ください。)
企業内にリワーク制度を持つ企業はまだ多くはありませんが、医療機関や行政機関、福祉サービスでリワークプログラムを受けられるところは増えています。
身近な施設の中から、自分にとって最適なリワーク施設を見つけられるよう、それぞれの施設の違いや特徴について、次の章で詳しくみていきましょう。(復職・再就職も目指せる「ニューロリワーク」の資料請求はコチラから)
3.医療機関・障害者職業センター・企業によるリワークプログラムの内容を徹底分析
医療機関
医療機関のリワークプログラムは心療内科や精神科などのクリニックによって行われています。医療機関で行うリワークプログラムの内容を、日本うつ病リワーク協会では以下の通り分類しています。
- 特定の心理プログラム
- 教育プログラム
- 個人プログラム
- 集団プログラム
- そのほかのプログラム
それぞれのプログラムには、以下が含まれます。
特定の心理プログラム | 認知行動療法のように、主に集団で心理療法を実施するプログラムで、症状の自己理解や自己洞察を高めることを目的としています。 |
教育プログラム | 病気の理解、セルフケアなどを講義形式で学習し、症状の自己理解を深めることを目的としています。 |
個人プログラム | 読書・資格の勉強・仕事に関連する作業や作文などを行います。集中力の持続や仕事の進め方を高めることを目的としています。 |
集団プログラム | 集団でディスカッションなどを行い、感情表現や対人能力、自己洞察力を高めることが目的となっています。 |
その他のプログラム | ウォーキング、呼吸法など、リラクゼーションや基礎体力の回復を目的としたプログラムです。 |
出典:『精神障害者職場再適応支援プログラム~リワーク機能を有する医療機関と連携した復職支援~』
http://www.nivr.jeed.or.jp/download/center/practice26_3.pdf
医療機関のプログラムは「症状の自己理解」「コミュニケーション」が目的となっているプログラムが多いです。
また、治療の一環として認知行動療法が受けられ、症状の回復と安定を目指せるのが大きな特徴だと言えます。
認知行動療法の詳細については、臨床心理士監修|認知行動療法の意味や内容その効果を徹底解説の記事をご覧ください。
対象者は、うつ病や、躁うつ病、統合失調症などのメンタルヘルスの不調が原因となり休職した方で、復職を目指す方が対象となります。現在失業中で就職を目指す方は対象となりません。
障害者職業センター
障害者職業センターは、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が、障害者雇用促進法に基づいて設置・運営したものになります。
求職者のみならず、復職先の事業主に対しても職場復帰へ向けた支援を行っているのが特徴です。職場復帰のコーディネーターが求職者本人と事業主・主治医の3者とすり合わせのもと支援プランを作成し、トレーニングを実施します。
障害者職業センターの半数以上が必ず実施しているプログラムには以下のようなものがあげられます。
対象 | 内容 |
利用者 |
※SSTとは、ソーシャルスキルズトレーニング(Social Skills Training)の略で、人が社会でほかの人と関わりながら生きていくために必要な技術を身につける訓練のことをいいます。 |
事業主 (企業) |
|
出典:職リハレポート NO.7障害者職業総合センター研究企画部企画調整室 http://www.nivr.jeed.or.jp/vr/vrwebreport-pdf7.pdf
上記以外にも、「本人から企業への連絡や交渉に関する支援」「本人から主治医への連絡や相談に関する支援」なども4割程度の機関で行われており、企業・利用者・主治医との3者連携で行われる支援が特徴です。
対象者はメンタルヘルスの不調が原因となり休職中の方で、復職を目指す方となります。現在失業中で職場復帰を目指す方は対象となりません。また、公務員の方は利用ができません。
企業
まだ数は多くはありませんが、企業内にリワーク制度を持つ企業もございます。
企業内で行われるリワークプログラムの内容は企業によってさまざまです。
「ためし出勤」などを取り入れている企業や「EAP(従業員支援プログラム)」などを導入している企業があります。
自身の所属する企業にリワーク制度があるかどうか、まずは人事部へ確認をとってみましょう。
4.就労移行支援事業所を利用するという選択
就労移行支援事業所のリワークプログラムの内容や特徴
最近では、就労移行支援事業所でもリワークプログラムを提供するところが増えてきました。
そもそも就労移行支援事業所とは、就職を目指す障害のある方に対して、就職や職場定着へ向けた訓練を行う通所型の障害福祉サービスです。
就労移行支援事業所では、仕事に必要な知識やスキルの学習、チームワークや対人能力などの社会において必要なスキルの学習、日常生活や生活習慣の見直しを目的としたプログラム、就職活動のサポートなど、事業所ごとにさまざまなプログラムが用意されています。
もともと就職支援が目的となっているため、スキルアップを目的としたプログラムが豊富なのが特徴です。
例えば、ニューロリワークが提供するリワークプログラムの内容や特徴にはどういったものがあるのでしょうか。
ニューロリワークが提供するプログラムは大きく以下の4つになります。
●安定した就労や社会生活を送るために、生活習慣の構築・改善を行っていく「ブレインフィットネスプログラム」 全4回のプログラムで、運動、食事、睡眠、ストレスケア、知的刺激をバランスよく行うことで、心、身体、頭(脳)が健康になっていくことや行動を継続するための方法を学んでいきます。 |
●仕事に必要なスキルや知識の学習 PC学習や、SST・JST※トレーニングなどのスキル学習を行います。その他にも、タスク管理能力、PDCAの回し方、段取りの立て方など生産性を高めることを目的としたプログラムも用意されています。 ※JST(Job related Skills Training)は、SSTの手法を用いて、発達障害者が職場における対人技能を体得するために職業センターが開発した技法のことをいいます。 |
●就職・復職へ向けたサポート 復職だけでなく転職も視野に入れた就職サポートを受けることができます。休職へ至った理由を明確にし、復職・転職どちらが最適な選択かをスタッフと考えていきます。 |
● 復職後の定着支援 復職後も定期的に面談を行います。必要に応じて企業とも連携を取り、安心して働き続けられるようなサポートを行います。 |
「スキルアップ」を目的としたプログラムが豊富に用意されているのが特徴です。
また、復職だけでなく転職にも対応できるのが、その他の施設との大きな違いです。
就労後の定着支援や、産業医・主治医と連携をとったサポートなども特徴の一つになります。
対象者は、休職中および失業中の方で、職場復帰を目指す障害のある方が対象となります。
5.適切な施設の選び方、特徴・対象者・費用の総まとめ
各施設のメリット・デメリットを比較
医療機関 | 障害者職業センター | 就労移行支援事業所 | |
対象者 | 休職者 | 公務員を除く休職者、事業主 | 休職者、失業者 |
費用 | 300円~3000円程度/日 | 無料 | 800円~1200円程度/日 |
特徴 | ・認知行動療法が受けられ、症状の回復と改善が目指せる | ・本人・事業主・主治医と3者間で連携したサポートを受けられる ・事業主(企業向)向けのプログラムが用意されている |
・転職にも対応できる ・スキルアップのためのプログラムが豊富 ・復職・就職後の定着支援が受けられる |
それぞれのメリットデメリットはどうでしょう。
●医療機関
メリットは医師による専門的な治療が受けられることです。症状の回復を最優先したい方にとっては良いでしょう。
一方で、専門的なビジネススキルの学習や定着支援はプログラムに含まれていません。また、前年度の所得によっては費用が多くかかる可能性があります。
医療機関を利用する場合、主治医の変更が必要となるケースが多いです。
●障害者職業センター
メリットは、ご自身だけでなく主治医や事業主と連携したサポートをしてくれることです。
また、無料で受けられることも大きなメリットだと考えられます。
一方で、施設数が少ないため近場で受けられず、通所のために時間や交通費が多くかかるケースがあります。
専門的なプログラムが少ないこと、利用するまでに時間を要することもデメリットとして挙げられます。
●就労移行支援事業所
スキルアップにつながるプログラムが受けられること、復職だけでなく転職にも対応できる点がメリットに挙げられます。
復職後の定着支援も他にはないポイントです。
一部の事業所ではランチや交通費が支給されるため、通所にかかる自己負担が少ないのも利点です。
一方、前年度の収入によっては利用料がかかる点はデメリットになるでしょう。
選ぶときのポイント総まとめ
リワーク施設を選ぶときは、まず自分がリワーク施設に何を求めているのか考えてみるといいでしょう。
- 症状の回復を最優先にしたい
- 費用をおさえたい
- 復職先企業との連携をしっかり取ってほしい
- 復職前よりもスキルを身に付けたい
- 転職か復職か迷っている
など、それぞれのご要望に応じて適したリワーク施設は異なります。
自分がリワーク施設に何を求めているのか、今一度整理をしてから施設を探してみてください。
特に「転職か復職か迷っている」場合は、利用前にしっかり検討をする必要があります。
医療機関や職業障害者センターは、現職への復職が利用の前提となります。休職へ至った理由を考え、現職へ復職することが最も最適な選択かどうかは事前にしっかり考えておきましょう。
悩んだ場合や分からない場合は、主治医や就労移行支援事業所、相談支援事業所に相談してみることがいいでしょう。
更に毎日通う機関ですので、通いやすさも重要です。
- 家から遠すぎないかどうか
- 交通費が自己負担の場合は交通費が払えるかどうか
- 支援スタッフや担当となる主治医は自分と合うかどうか
- 利用している方々は自分と合うかどうか
多くの施設では、見学やプログラムを体験させてもらえます。
実際に目でみて、体験することで、自分に合っている施設かどうかを肌で感じ、通所先を決定できると理想的です。(「ニューロリワーク」への相談やプログラムの見学をご希望の方はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
http://www.nivr.jeed.or.jp/download/center/practice26_3.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/6/54_E12001/_html/-char/ja
http://www.nivr.jeed.or.jp/vr/vrwebreport-pdf7.pdf
(写真素材:PIXTA、photoAC)
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