休職・離職中の自己理解で進めるキャリア設計の方法とは?復職へ向けたステップ
キャリア設計を進める上で重要とされるのが「自己理解」です。自身の価値観や強み、興味関心を深く知ることで、無理のない働き方や将来の方向性を考えやすくなります。特に精神疾患を抱えながら復職や就労を目指す方にとっては、自身の特性や体調を把握しながらキャリアを描くことが、社会復帰を目指すうえでの一つの視点になります。
本記事では、自己理解を軸としたキャリア設計の具体的な方法や、復職に向けたステップをわかりやすく解説します。
キャリア設計とは?自己理解が重要とされる理由

キャリア設計は、将来どのような働き方や生き方を実現したいかを主体的に描くプロセスです。この取り組みを進める上で欠かせないのが「自己理解」であり、自身の価値観や強み、興味関心を深く知ることがキャリア設計の土台となります。
特に復職を目指す方にとっては、自身の特性や体調面を把握しながら無理のないペースで将来像を描くことが大切です。以下では、キャリアデザインの基本的な考え方や、自己理解がなぜ重要とされるのかについて解説します。
キャリアデザインの定義と本来の目的
キャリアデザインとは、仕事だけでなく余暇や学習、家庭生活なども含めた人生全体の設計、そして自身のありたい姿を実現するための包括的なライフスタイルの設計といえます。キャリアプランが一般的に職歴に焦点を当てるのに対し、キャリアデザインは人生全体を視野に入れる点が特徴です。また、広い意味で「ライフキャリア」と呼ばれることもあります。
キャリアデザインの主な目的は、変化の激しい社会の中で職業選択やライフスタイルを自律的・主体的に決定できるようになることにより人生におけるQOL(生活の質)を高めることにあります。
変化する労働市場におけるキャリア形成の必要性
現代社会では、テクノロジーの進化や働き方の多様化、職業生活の長期化などにより、社会経済環境が急激に変化しています。こうした動きに伴い、労働環境や職業のあり方も大きく変わりつつあります。
かつての日本では、終身雇用や年功序列といった雇用慣行が一般的でしたが、近年は雇用の流動化が進み企業側も積極的な中途採用により即戦力となる人材を求める傾向が強まっています。それにより個人がキャリア形成を企業に依存せず、主体的にキャリアを築く力が求められるようになっています。
精神疾患などによる休職から復職を目指す際にも、こうした変化に対応できる柔軟で自律的なキャリア形成が重要です。環境の変化を見据えながら、自身のペースで働き方を考えていくことが、安定した復職につながります。
自己理解を深めることで得られる具体的なメリット
自己理解を深め、自身の興味関心や適性を把握した上で仕事を選ぶことで、職業満足度の向上や働くことへの納得感が高まり、長く安定して働き続ける土台が築かれます。
また、自身の価値観や強みを把握することは、復職や再就職に向けたモチベーションの維持にも効果的です。目的を見失いそうなときでも、自己理解に基づいて立てた目標があれば、今の行動が将来につながっていると実感しやすくなります。
さらに、自身を客観的に捉えることにより課題が明確になる点もメリットのひとつです。どのようなスキルを身に付ける必要があるのかがわかれば、キャリアアップに向けた具体的な行動を取りやすくなり、計画的に成長を重ねていくことができます。
自己理解を深めるための分析手法とやり方

自己分析を効果的に進めるためには、フレームワークやツールを活用することが大切です。代表的な手法としては、過去の経験を時系列で振り返る「ライフラインチャート」、やりたいこと・できること・すべきことを整理する「Will-Can-Must」、自身の強み・弱みと外部環境を把握する「SWOT分析」などがあります。
これらの手法を活用することで、主観的な思い込みにとらわれず、自身の特性や価値観をより正確に理解できるようになります。
過去の経験を振り返るライフラインチャートの活用法
ライフラインチャートは、これまでの人生における幸福度の変化や重要な出来事を時系列で可視化する手法です。横軸に年齢、縦軸に幸福度を設定し、人生の浮き沈みを曲線で描くことで、自身の価値観や思考特性を客観的に把握できます。
過去の成功体験や失敗体験を振り返ることで、どのような状況で力を発揮できるのか、またはストレスを感じやすいのかといった傾向が見えてきます。復職を目指す方にとっては、精神疾患の発症や休職に至った経緯も含めて振り返ることが重要です。この作業を通じて、再発防止に向けた自身の具体的な対処法や、大切にしたい価値観を再発見することができます。
| 要素 | 内容 |
| 成功体験 | 達成感を感じた出来事や、満足感を得られた経験を思い出します。「なぜうまくいったのか」「自身のどの強みが活かされたのか」を分析することで、自信の回復や強みの再発見につながります。 |
| 失敗体験 | うまくいかなかった出来事や、強いストレスを感じた環境を振り返ります。自身にとっての「避けるべき環境」や「苦手な状況」を理解することは、再発防止策を講じる上で重要なヒントになります。 |
| 転機 | 進学、就職、異動、結婚、そして休職など、人生の分岐点となったライフイベントを書き出します。変化のタイミングで自身がどう考え、どう行動したかを振り返ります。 |
| 感情の変化 | 充実していた時期と落ち込んでいた時期、それぞれの要因を探ります。「一人で黙々と作業している時が充実していた」「人間関係が複雑になった時に落ち込んだ」など、感情が動くスイッチを知ることで、自身に合った働き方や環境が見えてきます。 |
Will-Can-Mustで価値観と強みを整理する分析法
Will-Can-Mustは、「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(すべきこと)」の3つの視点から自己分析を行うフレームワークです。この手法を活用すると、自身の価値観や能力・役割に沿って目指すキャリアの方向性を整理しやすくなります。
3つの要素が重なる部分は長く健やかに働き続けられる「自身らしい働き方」を表しており、キャリアの方向性を決める重要な指針となります。復職においては、現在の体調で「Can(できること)」を現実的に見極めつつ、「Will(やりたいこと)」と「Must(すべきこと)」のバランスを取ることが大切です。無理のない範囲で目標を設定することで、安定した働き方につなげることができます。
| 要素 | 定義 | 質問例 |
| Will (やりたいこと) |
自身の夢や憧れ、願望など、働く目的やモチベーションの源泉となるもの。 | ・時間を忘れて夢中になれることは? ・小さい頃から好きだったことは? ・将来(10年後、20年後)どうなっていたいか? |
| Can (できること) |
自身の強みや得意なこと、現時点で持っているスキルや知識。 | ・これだけは人に負けないことは? ・周囲の人から褒められることは? ・今持っているスキルや勉強していることは? |
| Must (すべきこと) |
周囲から求められている役割や使命、またはWillを実現するために必要な行動。 | ・職場や家族から何を期待されているか? ・職場や社会から求められている目標は? ・果たすべき責任は何か? |
SWOT分析で自身の強みと外部環境を把握する手順
SWOT分析は、自身の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」という内部要因と、「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」という外部環境を整理する手法です。この分析により、自身の内面と外部環境の両方の理解が進み自分の強みを市場でどう活かしていくかを決定するプロセスの手助けとなります。
復職活動においては、自身の特性を客観的に把握するだけでなく、労働市場のトレンドや求人状況などの外部環境と照らし合わせることが重要です。たとえば、リモートワークの普及や障害者雇用枠の拡大といった「機会」を活かしながら、自身の「弱み」をどのようにカバーするかを戦略的に考えることで、より現実的なキャリアプランを立てることができます。
以下の表で、各要素の具体例を確認してみてください。
| 要素 | 区分 | 定義 | 復職における具体例 |
| 強み (Strengths) |
内部要因 | 他人よりも優れている点、得意なスキルや知識 | ・これまでの業務経験や専門資格 ・真面目にコツコツ取り組む性格 ・周囲への配慮ができる |
| 弱み (Weaknesses) |
内部要因 | 改善が必要な点、他人より劣っていると感じる部分 | ・体力の低下や疲れやすさ ・マルチタスクへの苦手意識 ・ストレス対処が不十分 |
| 機会 (Opportunities) |
外部環境 | 活かせる外部のチャンス、新しい市場やトレンド | ・リモートワークやフレックス制度の普及 ・障害者雇用枠の拡大 ・復職支援(リワーク)の充実 |
| 脅威 (Threats) |
外部環境 | 直面する外部のリスクや障害、競争相手の存在 | ・希望職種の求人倍率の高さ ・AI化による単純作業の減少 ・求められるITスキルの高度化 |
自己理解からキャリア設計図を作成するステップ

自己分析で把握した価値観や強みをもとに、次は具体的なキャリア設計図を作成します。キャリア設計においては、計画を立てるだけでなく、実際の行動へとつなげることが重要です。まず将来のビジョンとなる長期目標を描き、そこから逆算して中期・短期の目標を設定していきます。
目標は具体的で達成可能なものに落とし込み、定期的に見直しながら進めることで、着実に復職や就労へと近づくことができます。
以下では、目標設定から実行、見直しまでの具体的なステップを解説していきます。
将来なりたい自分を描く長期目標の設定
長期目標とは、10年後や20年後を見据えて、自身がどのような働き方や生き方をしたいかというビジョンを描くことです。目標を設定する際には、仕事だけでなくプライベートや健康面も含めた人生全体のバランスを考慮することが大切になります。長期的な視点を持つことで、目先の焦りを軽減し、将来に対する不安を和らげる効果が期待できます。
復職を目指す方にとっては、この長期目標がキャリアを安定させるための指針となり、日々の行動に意味を感じやすくなります。「10年後にどのような働き方をしていたいか」「どのような生活を送りたいか」をイメージしながら、言葉にして書き出してみてください。
具体的で達成可能なSMART目標の立案
目標設定において活用できるのが「SMARTの法則」です。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限がある)の5つの要素で目標設定の精度をチェックします。
たとえば、「毎日30分ウォーキングする」「1ヶ月以内に応募書類を作成する」のように、具体的な行動レベルに落とし込むことで、進捗を確認しやすくなり、達成感を得る機会も増えます。精神疾患からの復職においては、特にAchievable(達成可能)の視点が重要です。無理のない現実的な目標を設定することで、自身のペースを守りながら着実に前進することができます。
計画を行動に移し定期的に見直すサイクルの重要性
作成したアクションプランは、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回すことが大切です。定期的に進捗を振り返り、必要に応じて計画を見直すことで、より効果的にキャリア設計を進められます。
アクションプランは一度の策定で完結するものではなく、社会情勢や自身の環境や心身の状態によって柔軟に更新していくものです。一度決めた計画を変えてはいけないわけではなく、状況に応じて柔軟に修正していくことが成長につながります。うまくいかない場合や迷いが生じたときは、一人で抱え込まず、メンターや支援者からのフィードバックを活用してみてください。他者の意見を取り入れることで、自身では気付けなかった視点が見えてくることもあります。
精神疾患のある方が無理なくキャリア形成を進めるポイント

精神疾患を抱えながらキャリア形成を進める際には、自身の特性や体調を十分に考慮することが欠かせません。焦らず無理のないペースで取り組むことが、長く安定して働き続けるための土台となります。キャリア設計は一人で完結させる必要はなく、専門家や支援者の力を借りながら進めることで視野が広がり、より現実的な計画を立てやすくなります。
以下では、精神疾患のある方がキャリア形成を進める上で意識したいポイントを3つご紹介します。
自身の障害特性や体調を考慮してペース配分する
キャリア形成を進める上で大切なのは、自身の障害特性や体調を理解し、無理のないペース配分を設定することです。疲れやすさやストレスへの耐性は人それぞれ異なるため、一般的な働き方にこだわらず、自身に合った方法を模索していくことが重要になります。
たとえば、フルタイム勤務にこだわらず、短時間勤務やフレックス制度を活用するなど、持続可能な働き方を選択肢に入れることも一つの方法です。体調には波があることを前提とし、休息もキャリア形成の一部と捉えるマインドセットを持つことで、長期的に安定した働き方を実現しやすくなります。
仕事だけでなく、プライベートや健康面も含めた人生全体のバランスを意識しながら、自身のペースで設計していくことが大切です。
周囲のサポートや専門家の意見を取り入れる
自己分析やキャリア設計を一人だけで行うことには限界があります。他者からのフィードバックを受けることで、自身では気付けなかった強みや弱みを知ることができ、新たな選択肢が見えてくる場合もあります。
キャリアコンサルタントや支援機関のスタッフなど、専門家の客観的な意見を取り入れることで、視野が広がり、より現実的なキャリアプランを描けるようになります。利害関係のない第三者に話を聞いてもらうことで、仕事への捉え方が変わったり、前向きな気持ちを取り戻せたりすることもあります。自身の強みや適性についての客観的な評価を知ることで、自己効力感を高め、自信を持って復職活動に取り組むための支えにもなります。
焦らずにスモールステップで成功体験を積み重ねる
大きな目標を達成するためには、まず小さな目標(スモールステップ)を設定し、達成感を積み重ねていくことが効果的です。
たとえば、「朝決まった時間に起きる」「支援機関に通所する」といった日常の小さな成功体験が、自己肯定感の回復につながります。失敗を恐れる必要はありません。うまくいかなかった場合も「学び」として捉え、原因を分析して次のステップに活かす姿勢が大切です。失敗は成長のきっかけになるという前向きな視点を持つことで、着実に復職への道を歩んでいくことができます。
ニューロリワークの就労・復職支援で目指す安定した復職
「ニューロリワーク」では、うつ病や適応障害、発達障害などメンタル不調のある方を対象に、自己理解を深めながら適性に合ったキャリア設計をサポートする就労・復職支援を行っています。生活習慣の改善からビジネススキルの習得、就職・復職活動、そして就労後の定着支援まで、一貫したサポート体制を整えています。
一人ひとりの目標やペースに合わせた個別支援計画を作成し、無理のない安定した社会復帰を目指します。専門スタッフが「働きたい」という気持ちに寄り添い、長く安定して働き続けられるよう伴走するため、就職・復職に向けて一歩を踏み出したい方は、ぜひ見学や相談をご検討ください。
監修者
藥井 遥
やくい社会保険労務士事務所 代表
株式会社ロームアップ 代表取締役
社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・1級ファイナンシャルプランニング技能士
千葉県八千代市の従業員数名~百名規模の企業の顧問社労士として、職場のルール整備や労使トラブル対応、勤怠や労務のペーパーレス化支援、給与計算・労務手続・助成金申請、福祉・介護事業所における処遇改善加算等の実務に携わる。「ハラスメント対策」や「介護や育児との両立支援」などをテーマとした講師実績も多数。
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