復職後在宅勤務は可能?テレワーク復帰の基準や認められない場合の理由を解説
メンタル不調からの復職を考えるとき、「在宅勤務であれば働けるのではないか」と感じる方は少なくありません。しかし、復職の判断基準は出社を含む通常勤務ができるかどうかにあり、在宅勤務のみを前提とした復帰は認められにくいのが実情です。
本記事では、復職後の在宅勤務が慎重に扱われる理由や診断書が出た場合の対応、段階的な復職準備のポイントまでを解説します。
復職後在宅勤務は可能か?テレワーク復帰の基本的な考え方

メンタル不調からの復職を検討する際、在宅勤務であれば無理なく復帰できるのではないかと考える方は多いかもしれません。まずは、在宅勤務とテレワークの定義、ならびに在宅勤務での復職可否の判定基準についてご説明します。
在宅勤務とテレワークの定義と共通点
在宅勤務とは、自宅で業務を行う働き方であり、テレワークは場所を問わず職場以外で仕事をする働き方を指します。本記事では、この2つを明確に区別せず、職場に出社せずに仕事をする、広い意味でのオフィス外での労働として扱います。
自宅で業務を行うか、カフェやサテライトオフィスで行うかにかかわらず、物理的な出社を伴わない点が共通しています。また、いずれの形態であっても、労働契約の範囲内で労務を提供する義務がある点に変わりはありません。
復職判定における「債務の本旨」の重要性
復職の判断基準は、「債務の本旨に沿った労務提供ができること」にあります。これは、労働契約で定められた本来の業務を遂行できる状態にあるかどうかを意味する考え方です。
出社しての通常勤務と在宅勤務の両方に対応できて初めて、完全な労務提供と見なされます。「出社は難しいが在宅勤務ならできる」という状態は、特定の場所でしか働けないことを意味するため、復職基準を満たしているとは判断されにくいのが実情です。
ただし、これらは一般論としての見解であり、本来であれば出社できる体力が求められるものの、主治医や産業医の意見を踏まえてテレワークが「過重な負担」にならない範囲の合理的配慮として検討される場合などもあります。
復職直後の在宅勤務が推奨されない3つの理由

復職直後から在宅勤務を開始することは、推奨できないとされています。その理由は大きく次の3つがあります。
- 労働者によって在宅環境の適性が異なるため
- 在宅勤務下での労務管理が困難なため
- 出社を伴う通常勤務の遂行能力が求められるため
在宅勤務は一見すると負担の少ない働き方に思えますが、復職直後の不安定な時期には、かえって問題を引き起こす恐れがあります。
労働者によって在宅環境の適性が異なるため
在宅勤務は通勤の負担軽減や職場の人間関係によるストレスの緩和など、良い側面がある一方で、すべての人にとってプラスに働くわけではありません。
たとえば、仕事とプライベートの時間の区切りが曖昧になりストレスが増すケースや、育児や家事との両立がかえって負担になる場合もあります。
業務に集中できる環境を自宅に整えられない方にとっては、作業効率が下がる要因にもなりかねません。こうした個人差を考慮せず、在宅勤務が「良いもの」と一方的に決めつける対応には問題があると指摘されています。
在宅勤務下での労務管理が困難なため
在宅勤務では上司が働きぶりを直接確認できないため、評価は成果を中心としたものにならざるを得ません。その結果、成果を上げようとして深夜までこっそり作業を続ける労働者が出てきたり、生活リズムが乱れたりする事例が生じる恐れがあります。
勤務時間とプライベートの線引きが曖昧になることで、長時間労働につながる場合も見られます。復帰直後は心身の状態が安定しきっていない時期であり、この期間に在宅勤務を行うと状況の把握が難しくなり、コントロールが困難な状態に陥る可能性が否定できません。
出社を伴う通常勤務の遂行能力が求められるため
業務上のトラブル対応や企業の方針変更などにより、急遽出社が求められる場面は少なくありません。「出社は難しいが在宅勤務ならできる」という状態では、勤務地の指定を伴う人事異動にも対応できないことになります。
たとえば、「出社可能な状態にあることが復職の前提」とされ、在宅勤務のみを理由とした復職は認めらないと裁判で判断されるケースなども考えられます。
このように、出社を含む通常勤務ができるかどうかは、休職事由が解消されたかを判断する上で一貫した基準となっています。
うつ病や適応障害による復職と在宅勤務の注意点

うつ病や適応障害などメンタル不調からの復職では、再発を防げるかどうかが大きな課題となります。身体的な負傷とは異なり、疲労が蓄積すると症状が悪化しやすいため、在宅勤務であっても慎重な判断が欠かせません。
通勤の負担がなくなる一方で、孤独感や孤立感が生じたり、周囲の目が届きにくくなったりと、メンタル面での回復を妨げるリスクも存在します。
身体的な負傷とメンタル不調での判断基準の違い
骨折などの身体的な負傷の場合、在宅勤務を活用すれば移動の安全を確保しながら早期に復帰できる可能性があります。在宅での作業が骨折を悪化させる心配は少なく、回復の段階に応じた柔軟な対応が取りやすいためです。このように、身体的な負傷は回復のプロセスが可視化しやすく、通勤という物理的負荷を排除することで早期復帰が可能なケースも多くみられます。
一方、メンタル不調の場合は疲労の蓄積が症状の悪化や再発に直結するという特徴があります。在宅勤務であっても業務の難易度や負担自体は出社時と大きく変わらず、通勤がない分だけ楽になるとは限りません。そのため、復職の判断基準は出社の場合と同様に慎重な見極めが求められます。
孤独感や孤立感による症状悪化のリスク
在宅勤務では一人で過ごす時間が長くなるため、孤立感や孤独感を抱きやすい環境になる場合があります。人との交流が減ることでプレッシャーから解放される方がいる一方で、話す相手がいない状況に強い不安を感じる方もいます。
メンタル不調からの復職においては、こうした反応が症状の悪化につながるリスクを見落とせません。本人の性格傾向や特性を十分に把握しないまま在宅勤務を適用すると、回復の妨げになる恐れがあるため、個々の状態に合わせた配慮が大切です。
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支援者や上司による「目」が届きにくい懸念
通常の出社勤務であれば、上司や産業保健スタッフが復職者の表情や様子を日常的に確認できます。しかし在宅勤務中は対面でのやり取りが大きく減るため、身体や心の変化に気付くタイミングが遅れ、早期のケアが難しくなるリスクがあります。
こうした状況を防ぐ手段として、Web面談を定期的に実施したり、毎日の生活リズムチェック表の提出を取り入れたりする方法が挙げられます。複数の関係者が見守る体制を整えることが、復職後の安定した就労を支える重要な要素となります。
適応障害等で「在宅勤務なら復職可能」との診断書が出たとき

主治医から「在宅勤務での復職であれば可能」という診断書が出されても、すぐに復職が決まるとは限りません。診断書は医学的な回復の見立てを示すものであり、企業が求める業務遂行の水準とは異なる基準で書かれている場合があるためです。実際にどのような判断がなされるのかを理解しておくことは、復職に向けた準備を進める上で欠かせません。
主治医と企業側で復職基準が一致していない可能性
主治医が考える復職の目安と、企業が求める業務遂行のレベルは、一致しないケースが少なくありません。主治医は医学的な回復状況を基に判断する一方で、企業の勤務内容や復職基準までは把握していない場合が多いためです。
こうしたズレを解消する手段として、企業の定める復職基準を書面に明記した上で、産業医を通じて主治医へ情報提供を依頼する方法があります。主治医に正確な情報が伝わることで、より実態に即した判断を得られる可能性が高まります。
裁判例に見る「出社困難」な状態での復職可否
過去の判決では、「出社可能な状態にあることが復職の前提」とする判断が示されました。この事案では、主治医の診断書に通勤が困難である旨が記載されていたにもかかわらず、本人が「在宅勤務なら可能」と主張して復職を求めたものです。
裁判所は企業の対応を適法と認め、出社ができない状態では休職事由の消滅は認められないと判断しています。障害のある方に対する合理的配慮を考慮した場合でも、出社不可を前提とした復職を認める義務は無制限ではないとされました。
復職を認められない場合の企業判断と基準
企業が復職の可否を判断する際には、週5日のフルタイム出社に対応できるかどうかが一つの目安となっています。医師の診断書だけではなく、実際に出社して業務を遂行できる状態にあるかが重視されるため、「在宅勤務ができる=復職可能」とは直結しない点に注意が必要です。
また、在宅勤務が一時的な特例措置なのか、恒常的な制度として運用されているのかによっても判断は変わります。こうしたトラブルを未然に防ぐために、就業規則や休職規程に復職の判断基準を明記しておくことが大切です。
段階的な在宅勤務への移行と安定就労のコツ

復職後すぐに在宅勤務を始めるのではなく、まずは出社での勤務を経て段階的に移行していく流れが一般的です。産業医学的な観点からは、復帰後1ヶ月間は出社勤務で様子を見た上で、2ヶ月目以降に在宅勤務を含めた働き方へ切り替える運用が取られる場合があります。
安定した就労を続けるためには、復職前の準備段階で身体と心の状態を整えておくことが重要です。
外出練習を通じた体力と生活リズムの確認
在宅勤務での復職を目指す場合であっても、復職前の「外出練習」は欠かせない準備の一つとなっています。外出練習を行わずに復職の判断をすると、十分に体調が回復していない状態で仕事を再開してしまい、しばらくして症状が再発するケースが起こり得ます。
こうしたリスクを防ぐために、生活記録表を活用して睡眠のリズムが安定しているか、週5日決まった時間に外出できる体力が戻っているかを客観的に評価することが大切です。出社での復職と同じ基準を用いた判断が、現時点では安全性の面から広く採用されつつあります。
関連記事:復職後の再発防止は「習慣」が大切│無理なく続けられる具体的なアクション
セルフケアスキルの習得とストレスへの対処
在宅勤務であっても出社勤務であっても、働く以上は何らかのストレスがかかることを避けられません。働き方が変化する中でストレスの種類やかかり方も変わってきており、それぞれの状況に応じた対処が求められています。こうした変化に対応するためには、自身の心身の状態を客観的に把握するセルフケアスキルを身に付けることが重要です。
仕事だけでなくプライベートの過ごし方にも工夫を取り入れ、ストレスとうまく付き合いながら働き続ける力を養っていくことが、安定した就労の土台となります。
ニューロリワークの復職支援(リワーク)で安定した社会復帰を
「ニューロリワーク」では、脳科学者や精神科医、公認心理師、臨床心理士の監修のブレインフィットネスプログラムを通じて生活習慣や健康管理の維持・向上に取り組み、在宅勤務にも出社勤務にも対応できる心身の土台づくりを行っています。一人ひとりの目的や目標に合わせた復職計画をスタッフと一緒に作成し、復職まで伴走します。
また、復職後も安定して働き続けられるよう、休職中の企業との情報共有や連携に加え、職場定着に向けた相談・面談によるサポートも実施しています。復職に向けた一歩を踏み出す際には、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者
木村美紀
株式会社ラフデッサン 代表取締役
日本社会事業大学卒業後、生命保険や不動産の実務経験を経て独立。FPおよびキャリアコンサルタントとして講演・執筆・相談など幅広く活動。ライフワークとして障がいのある子どもの学習支援教室を主宰するほか、就労移行支援事業所Fine米子オフィスの運営に携わるなど、障がいを持つ方の支援にも注力。
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