復職に向けた効果的なトレーニングとは?
スムーズに進めるポイントを紹介

「体調は少しずつ良くなってきたけど、すぐに職場に戻るのは不安」
「復職に向けて準備をしたいけど、具体的に何をすればいいか分からない」
こんな疑問や考えを抱えながら、ふとインターネットで検索するという方も多いかもしれません。復職のタイミングや準備を誤ると、再休職につながるリスクが高くなります。だからこそ大切なのが、「復職に向けた適切なトレーニング」です。とはいえ、復職のためには必ずしも難しい課題や負荷の大きな運動をしなければならないというわけではありません。心身の状態を丁寧に整えながら、少しずつ「働く感覚」を取り戻すことが重要です。
このコラムでは、クリニックなどの医療機関には通っているものの、まだリワーク(復職支援や職業リハビリ)には参加したことがないという方や、自分でできるトレーニング方法を知りたいという方を対象に、復職までのステップや取り組みやすいトレーニング方法、またはリワーク施設ごとの特徴などについて分かりやすく解説していきます。
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1.休職から復職までのステップ・期間
休職から復職までのプロセスは、主に以下の5つのステップで構成されます。
(1)休職の手続きを行い、心身を休める
休職は、職場の上司や人事部門に診断書や休職届を提出し、正式に休職手続きを行うことから始まります。休職中は心身の回復を最優先とし、療養に専念することが重要です。この期間中は、傷病手当金などの経済的支援や相談先の確保、職場復帰支援サービスの利用など、休職期間中に必要となる情報を収集し、適切なサポートを受けられる体制を整えることが求められます。
(2)主治医による職場復帰の可否判断
体調が回復してくると、主治医に職場復帰の可否を確認します。この際、職場での業務内容や求められる能力に関する情報を主治医に提供し、復職が可能かどうかの意見をもらうことが重要です。また、産業医や地域産業保健センターの医師とも連携し、医学的見地からの意見を集めることもあります。
(3)職場復帰の可否判断と復職支援プランの作成
主治医や産業医の意見を基に、職場復帰の可否を判断します。復職が適切と判断された場合は、具体的な復職支援プランの作成に移ります。このプランには、復職日や就業上の配慮事項、人事労務管理上の対応、フォローアップの方法などが含まれます。プラン作成にあたっては、産業医や保健師、または上司などと連携し、休職中の状態や職場環境を評価しながら進めることになります。
(4)最終的な職場復帰時期の決定
復職支援プランが作成された後は、休職者の状態を最終確認し、復職時期を正式に決定します。この際、産業医による意見書の作成や、企業側による復職決定の通知などが行われます。復職後の就業上の配慮や対応についても、事前に主治医や産業医と共有しながらスムーズな復職を目指します。
(5)職場復帰後のフォローアップ
復職後は、上司や同僚、産業保健スタッフなどが協力し、休職者の状態を継続的にフォローアップします。具体的には、再発の有無の確認、勤務状況や業務遂行能力の評価、復職支援プランの実施状況の確認、治療状況の確認、職場環境の改善などが行われます。これらのフォローアップを通じて、復職時に安定して業務を遂行できるよう取り組みます。
復職までの期間の目安
復職までの期間は、個々の状況や疾患の種類、職場環境などによって異なります。一般的には数週間から数ヶ月程度が目安とされていますが、無理な復職は再発のリスクを高めるため、「早ければ早いほど良い」と考えるのではなく、主治医や産業医と十分に相談し、適切な時期を見極めることが重要です。
以上のステップを踏むことで、休職から復職までのプロセスを円滑に進めることができます。復職は新たなスタートであり、焦らず、周囲のサポートを受けながら進めていくことが大切です。
(関連記事:メンタル不調による休職から、復職するまでの主な流れ)
2.復職に向けたトレーニング例
復職に向けて休職期間を有意義に過ごすためには、独力で取り組むことができるトレーニングを習慣づけることも重要です。主な取り組みとしては以下のようなものがあります。
生活リズムの整備
規則正しい生活習慣を身につけることは、復職準備の基本です。毎朝決まった時間に起床し、夜は同じ時間に就寝するよう心掛けることが健康な生活の第一歩です。日中は適度な活動を取り入れ、夜はリラックスできる時間を設けることで、質の良い睡眠を促進させることができます。このような生活リズムの確立は、円滑な復職だけでなく、復職後の安定した就労に直結します。
日中の活動量の増加
休職中は活動量が減少しがちですが、復職を見据えて少しずつ日中の活動量を増やすことが重要です。散歩や軽い運動、家事などを取り入れ、体力と集中力を養っていくことがポイントです。これにより、復職後の業務に必要な持久力や集中力を高めることができます。
通勤シミュレーション
復職後の毎日の通勤に備え、実際の通勤時間に合わせて自宅周辺を歩くなどのシミュレーションを行うことも効果的です。これにより、通勤による疲労感やストレスを事前に確認し、適切な対策を講じることができます。
ストレスマネジメントの習得
職場でのストレスに対処するためのスキルを身につけることも重要です。深呼吸や瞑想などのリラクゼーション法や問題解決のための思考整理法を学ぶことで、復職後のストレス軽減に役立ちます。自宅での独学が難しい場合は、プログラムを提供しているリワーク施設を活用するといった方法もあります。
自己学習やスキルアップ
業務に関連する知識やスキルの習得を目指し、自己学習を進めることも効果的です。専門書を読む、オンライン講座を受講するなど、自分のペースで学習を進めることで、復職後の業務遂行の自信を高めることができます。
休職期間中は、こうしたトレーニングを通じて復職に向けた準備を進めることができます。無理のない範囲で取り組み、体調や気分の変化に注意を払いながら進めていくことが大切です。
(関連記事:復職の適切なタイミングとは?必要なステップと準備ポイントを解説)
3.復職に向けたリワークの参加
復職を目指す上で、リワークプログラムへの参加は高い効果が期待できる方法のひとつです。リワークは、主にうつ病や適応障害などのメンタル不調が原因で休職中の方が、職場復帰に向けて必要なスキルや体力を再獲得するためのリハビリテーションプログラムを指します。これらのプログラムは医療機関や専門施設で提供されており、復職の成功率を高めるために設計されていることから、高い効果が期待されています。
リワークプログラムの主な内容
リワークプログラムでは、主に以下のような取り組みが行われます.
・生活リズムの再構築:
規則正しい生活習慣を取り戻すことで、職場での安定したパフォーマンスを支えます。
・コミュニケーションスキルの向上:
グループワークやディスカッションを通じて、職場での円滑な人間関係を築く力を養います。
・ストレスマネジメント:
ストレスの原因を特定し、適切な対処法を学ぶことで、再発を防ぎます。
・軽度の作業訓練:
模擬的なデスクワークや軽作業を通じて、業務に必要な集中力や持久力を回復させます。
リワーク参加の効果
リワークプログラムに参加することで、以下のような効果が期待できます。
・復職後の再発防止:
リワークプログラムを受けることで、復職後の安定した就労を実現し、再発率が低下する傾向がみられています。
・職場適応力の向上:
職場でのコミュニケーションや業務遂行に必要なスキルを事前に習得することで、復職後の適応がスムーズになります。
・自己効力感の回復:
プログラムを通じて小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻すことができます。
リワークプログラム参加の流れ
リワークプログラムへの参加の流れは施設や機関によって違いはありますが、主に以下のステップで進められます。
1.主治医への相談:
最初に、主治医にリワークプログラム参加の意向を伝えます。企業からリワーク施設が紹介される場合はその施設を利用するというのが一般的ですが、紹介が無い場合は自身でインターネットなどを活用してリワーク施設を探すことも可能です。
2.施設との連絡:
紹介されたリワーク施設(または自身で調べた施設)に連絡を取り、見学や説明会に参加します。
3.プログラム参加の決定:
施設のプログラム内容やスケジュールを確認し、利用を決定します。
4.プログラム開始:
個人の状態や目標に合わせたプログラムを開始します。
5.定期的な評価と調整:
プログラムの進行状況を定期的に評価し、必要に応じて内容を調整します。
以上が、リワークプログラムの主な流れです。リワークプログラムは専門スタッフによって行われるため、自己判断で無理をすることなく、安全に復職準備を進めることができます。プログラムの効果を最大限に引き出すためには、積極的な参加と継続的な取り組みが効果的です。
(関連記事:休職からの復職が怖い方へ。復帰後の定着率が3.5倍といわれるリワークプログラム)
4.リワーク施設の種類と違い・特徴
リワーク施設は、主に「医療機関」「公的機関」「民間企業」が運営する3つに大別することができます。どの施設も「復職を目指すための支援プログラムを提供する」という点では共通していますが、支援内容や目的、専門性、利用条件などに違いがあります。それぞれの施設には強みと、利用者によっての向き・不向きがあるため、自身の状況やニーズに合った施設を選ぶことが大切です。
a.医療機関が運営するリワーク施設
医療機関が運営するリワーク施設は、精神科・心療内科と連携した医療的な視点でのサポートを提供する点が強みです。臨床心理士や精神科医、作業療法士などの専門職が在籍し、症状の評価や経過観察をしながらプログラムが組まれるのが大きな特徴です。医療機関という性質上、うつ病や双極性障害など診断名が明確であることから、症状の管理が重要な方に適しています。医師の指示のもとで復職判断がされることも多く、医療保険が適用される場合もあるのも特徴のひとつです。
b.公的機関が運営するリワーク施設
ハローワークや地域障害者職業センター、自治体などの公的機関が提供するリワーク施設は、無料または低価格で利用できる点が特徴です。主に就労支援や職場適応訓練を目的としており、復職だけでなく再就職を目指す方にも対応しています。職業訓練的な要素が強く、生活リズムやビジネスマナー、就職活動支援なども含まれます。医療的な支援は限定的であることから、症状の不安が強い場合や通院中の場合は、医療機関と併用するというケースもみられます。地域によって提供内容に差があるため、事前の確認が必要です。
c.民間企業が運営するリワーク施設
施設によってプログラムの違いが大きいのが、民間企業が運営するリワーク施設です。施設ごとに独自の特色があり、たとえば心理学・キャリア支援・社会福祉など多分野の専門家が連携してプログラムが提供される施設などがあります。また、ビジネススキルの訓練や復職後の定着支援までを視野に入れたサポートを行っているところもあります。費用は自己負担となる場合もありますが、自治体の助成金や就労移行支援制度を活用できることもあります。
(関連記事:リワーク施設(リワークプログラム)を利用する上で知っておきたい「施設の種類」と「選び方」とは?)
5.復職面談の実施
復職面談は、休職していた従業員が職場復帰する際に実施される重要なプロセスであり、企業側と休職者自身の双方が復職の可否や具体的な対応を確認し合う場です。主に人事・産業医・上司などが同席し、自身の健康状態や復職に向けた準備状況、職場での配慮事項などについて丁寧に話し合われます。復職面談は、休職者の不安を軽減し、無理のない形で復帰できる環境を整えるためにも欠かせないものです。
面談では、復職希望日や現在の体調、通院・服薬状況、日常生活の安定度などが確認されます。医師の診断書だけでは伝えきれない、実際の職務遂行能力や自身の意欲、懸念点なども直接確認する貴重な機会となります。また、復職後の勤務時間の調整(短時間勤務や時差出勤など)や業務内容の見直しが必要かどうかといった具体的な職場対応も、この場で話し合われるというのが一般的です。
産業医が同席する場合は、医療的な見地から復職可否の判断や職場環境へのアドバイスを行い、より客観的かつ専門的な意見を踏まえた決定が可能となります。復職後のフォロー体制や相談窓口などについても確認しておくことで、復帰後の安心感につながります。
復職面談は「戻れるかどうか」を判断するだけの場ではなく、「どうすれば無理なく復職できるか」「再発リスクをどう抑えるか」を職場全体で考えるプロセスです。オープンな対話が行われることで、職場との信頼関係を再構築する機会にもなります。
(関連記事:復職面談を成功させるために押さえるべき、人事担当者が知りたいポイント)
6.復職をスムーズに進めるためのポイント
復職をスムーズに進めるためには、体調面だけでなく心理的・環境的な準備も欠かせません。ここでは、復職に向けて役立つポイントについてみていきます。
・生活リズムの安定:
復職後は決まった時間に出勤し、長時間にわたって集中することが求められます。そのため、休職中は乱れがちな生活リズムを少しずつ出勤時間に合わせて整えることが大切です。朝起きる時間、食事のタイミング、活動時間などの意識的な管理が、スムーズな復職の第一歩となります。
・業務への慣れ:
長く職場を離れていた場合、業務内容や職場のシステムが変わっていることもあります。過去の業務内容を振り返ったり、社内のマニュアルやツールを確認することで、復職後の不安を軽減できます。
・ストレス対処力の確認:
再発を防ぐためには、職場で感じるストレスにどう対応するかを事前に整理しておく必要があります。たとえば、自分にとって効果的なリラックス方法や、相談できる人を明確にしておくことなどは効果的な対策のひとつです。
・周囲とのコミュニケーションの再構築:
同じ職場で共に働くメンバーとの円滑なコミュニケーションは、復職と安定した就労に不可欠といえます。久しぶりに職場へ戻ると人間関係にぎこちなさを感じることも想定されるので、復職前に上司や同僚と軽く連絡を取ったり、挨拶や感謝の気持ちを伝えることが大切です。これにより、スムーズな人間関係の再スタートにつながります。
・復職後の計画:
段階的な復帰や業務量の調整など、無理のない形で職場復帰を進める計画を会社と相談しながら決めておくと復職後も安心です。「復職がゴール」と考えるのではなく、「復職後にどうしたいか」という観点から、中長期的な計画を立てることが大切です。
これらのポイントを意識して復職の準備を進めることで、不安を軽減し、復職をよりスムーズに進めることができます。
(関連記事:押さえておきたい「復職面談で聞かれるポイント」)
7.休職期間中のトレーニングは、円滑な復職への第一歩
休職期間中、「体調は回復しつつあるけどすぐに職場に戻るのは不安」「復職準備をしたいけど、方法が分からない」といった不安や疑問はつきものです。そんな休職期間を迷いなく、有意義に過ごすためには、リワークプログラムを活用することが効果的です。
ニューロリワークでは、復職と安定した就労を実現するためのさまざまなプログラムを提供しています。事業所ではプログラムの見学や体験実習も実施しているので、休職や復職でお悩みの方はぜひご相談ください。
(関連記事:リワーク施設(リワークプログラム)を利用する上で知っておきたい「施設の種類」と「選び方」とは?)
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