部下が精神疾患で休職?
上司として知っておきたい対応法。
部下が精神疾患などの不調で休職となると、上司はさまざまな対応に追われ、大きな負担となるかもしれません。また、大切な部下の休職に、心を痛めることもあります。
適切な解決策として、まずは休職の原因を知り、適した専門機関に相談することが大切です。
今回は、部下が不調になる原因や休職の手続き、そして休職中の対応法についてご紹介します。ポイントを押さえ、部下の早期の復職を目指しましょう。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
休職する部下を持つ上司の役割と責任
時代の変化と働き方の変化
部下の休職を耳にして「信じられない」と思う上司もいるかもしれません。かつては「仕事はしんどくて当たり前」「とにかく頑張るのが当たり前」「やる気があれば大抵のことは何でもできる」という、いわゆる“根性論”が広く浸透していた時代もあったかもしれません。しかし平成が終わりを告げ、新しく迎えた令和という今の時代に、そうした働き方はもはや時代遅れとなっているのかもしれません。
一昔前であれば、多少身体を壊してでも仕事で成果を出せば評価され、出世できる風土や文化があったかもしれませんが、今ではそうした働き方は「古い」と考えられることもあります。部下が業務に関して弱音を吐いているのであれば、それは不調のサインかもしれません。時代に合わせた働き方ができる職場にするためにも、上司は常に部下の心身の体調に配慮し、ケアをおこなうことが大切です。
部下のメンタルサインを見抜く
不調をきたす部下は、本人の意図の有無とは無関係に、何かしらのサイン(合図)を発信している可能性があります。例えば、それまでにはなかった遅刻や欠勤、早退などの勤怠関連や、業務効率の著しい低下、コミュニケーションの減少、食欲の不振などが挙げられます。本人に自覚していなくても、周囲の人がこれらのサインに気づく場合もあります。また、上司との会話の中で暗に不調を訴えるケースも考えられます。
こうしたメンタルサインに気づいたら、本人と話す機会を設けることが大切です。不調の原因がどのようなものであるかを把握し、解決策を考えましょう。場合によっては人事や総務担当者の協力も必要になります。また、社内だけで解決することが難しいのであれば、本人と話し合って、外部の医療機関への相談を視野に入れることも考えましょう。
休職の手続き
産業医や主治医が休職の必要性を判断したのであれば、社内の規則に従って休職への手続きを進めていくことになります。休職の制度は法律で定められたものではないため、企業によって有無や流れ・方法が異なります。そのため、必ず社内規定や関連部署と密に連携を取って進めていくことが求められます。
休職の手続きは概ね人事や総務部門の担当者の対応となりますが、休職者の上司は自部署で一時的とはいえ欠員が生じることから、業務の割り振りや全体スケジュールの調整などが不可欠となります。また、場合によっては休職者のクライアントへの対応も必要です。
休職中の連絡が重要
部下の休職中、上司はどのようなことができるのでしょうか。部下が会社から離れているからといって連絡せずにいると、休職中の部下は自身が必要とされていないと考え、不安になるかもしれません。そのため、適時・適切に連絡をとることが大切です。多すぎず、少なすぎず、本人の負担にならない程度の定期的な連絡を通じて休職者が、自身の戻れる場所があると安心できることが復職への第一歩といえます。なお、休職中の部下に連絡を取ることは重要なケアのひとつですが、こうした連絡が部下のプレッシャーになるようなことがあってはいけません。「復職の催促」ではなく、あくまで「お見舞い」というかたちをとって様子をうかがうことが大切です。
連絡を取る際には、可能であれば休職者の悩みや要望なども併せて聞くことができるとよいかもしれません。連絡時に見え透いた上辺の会話ばかりに終始してしまうと、お互いにとって前進のない徒労に終わってしまう可能性もあります。連絡を通じて休職者が「早く職場に戻りたい」と思えるようなコミュニケーションを目指しましょう。
他社とのつながりが多い管理職の方であれば、そのネットワークを活用し、他の企業の休職事情や割合・具体的な対策などについて確認してみるというのも選択肢のひとつです。もしかすると、自社に活せる施策や制度がみつかるかもしれません。
復職のための専門機関
さまざまな復職(リワーク)施設
精神疾患で休職する場合、復職を目指すためにはいくつかの選択肢があります。そのひとつが、復職(リワーク)施設に通うというものです。
リワーク施設は、運営機関によって「医療制度で運用されている施設」「福祉制度で運用されている施設」「障害者職業センターが運用している施設」などに分けられます。これらの施設に優劣があるわけでなく、それぞれに特徴があります。認知行動療法などの心理系のプログラムを主としておこなっているところや、ビジネススキルなどの動画学習を主として提供しているところもあります。施設ごとに特徴や違いがあるため、事前に各種の資料に目を通したり、見学や相談に訪れて疑問点を解消しておくことが大切です。
休職期間を有意義なものにするための復職プログラム
リワーク施設のひとつである「ニューロリワーク」では、復職プログラムの一環で「問題解決技能トレーニング」をおこなっています。このプログラムの目的は、自分なりの課題解決技能を身に付け、質の高い解決法かつ現実的な解決法を考えられるようになるという点にあります。
問題解決の主な流れは、以下のとおりです。
①問題を整理する(問題と目標の明確化)
⇒問題の状況を「5W1H」の観点から整理します。
②選択肢を出す(解決策案)
⇒ブレインストーミングでできるだけ多くの問題解決策の案を出します。
③選択肢の結果を予想する(効果と現実性)
⇒それぞれの解決策について効果と現実性を考え、結果を予測します。
④選択肢から選ぶ(選択判断)
⇒予測した結果の中から、より適切な解決策を選びます。
⑤段取り(実施手順・課題)
⇒適切と判断した解決策について、具体的な実行計画を立てます。
⑥事前試行(再考・ロールプレイ)
⇒実行計画について、静かな場所で再考したり他の人の意見を聞いたりします。
⑦解決策の実行
⇒実際の行動に移します。
⑧結果の評価
⇒生じた結果について、良い点や悪い点を振り返ります。
「問題解決プログラム」では、ケース説明やグループワークを通じて問題解決の選択肢を考え、実社会で活用できる能力を養います。問題解決のためには理想の状態を整理し、できるだけ多くの問題解決の選択肢を挙げることが求められます。
ひとつずつ効果と実現可能性を考え、それぞれの結果を予測するスキルを学ぶことで、復職後に直面する問題や課題に対処できる能力を伸ばしていきます。
まとめ
大切な部下が不調で休職する場合、上司としてはさまざまな対応に追われることになります。管理職に就く者としては、常に部下の心身の健康を気にかけておくことが大切です。
部下に不調がみられ、業務が困難になった場合には関連部署や関連機関と相談し、休職の手続きを進める必要があります。
休職期間を効果的なものにするためには、休職原因に合ったリワーク施設を活用するのが効果的です。リワーク施設であるニューロリワークでは、事業所の見学をおこなっています。復職プログラムや流れに関してご不明な点があれば、お気軽にご見学ください。従業員の方々が健康を取り戻し、ふたたびご活躍できることを心より願っております。(リワーク施設のひとつ、ニューロリワークの見学をご希望の方はコチラから)
記事監修者
K.K【公認心理師/臨床心理士(インクルード株式会社所属)】
精神科クリニック、デイケア勤務の経験のなかで、「仕事」「役割」「やりがい」の重要性を感じておりました。
社会の中で生き生きと働き、その方らしく暮らすことのサポートが行いたい、と考えております。
【参考文献・参考サイト】
・Stresscare.Com「部下が「休職」したときのマネジメント法」
・Garely「【メンタル対応】不調社員の休職と復職の流れを知ろう」
・キャリコネ「部下が休職になってしまったら? 上司としての対応はどうする?」
・日経ビジネス「ウツ社員への企業のホンネとマツコの名回答」
・出世ナビ「「壊れた職場」なぜ生まれる? 原因の7割は上司」
(写真素材:PIXTA)
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