「リワークってどういう意味? 通う効果はどれくらい?」
復職や再就職支援の疑問を解決
心の健康の重要性に注目があつまる昨今、精神疾患による休職や退職は、大きな社会課題のひとつとなっています。心に負荷のかからない組織・社会制度を構築していくことの重要性はいうまでもなく、併せて、心に負荷がかかり過ぎた結果、休職や退職という選択肢をとらざるを得なかった方々に対するセーフティネットの拡充もまた、急務であるといえます。
福祉先進国といわれるヨーロッパ諸国と比較し、しばしば後塵を拝み続けているとさえいわれる日本においても、社会福祉サービスの充実は決して他国と遜色ないものであるといえます。たとえば、休職者・退職者に対するセーフティネットのひとつとして、復職を目的としたリワーク施設や、就労を目的とした就労移行支援事業所などが、首都圏を中心に全国で展開されています。
休職者の復職を支援する「リワーク」という取り組みは、その本来の重要性ほどには認知されていないというのが実態かもしれません。それゆえ、「リワークってどういう意味?」「利用する意味ってある?」と考える方も決して少なくないといえます。
休職者にとって、休職に至った原因を明確にし、それらを解消するためのリワークプログラムに取り組むことは、過去の復職実績をみても非常に効果的であることがわかります。ここでは、リワークという言葉の意味や重要性について、あらためてみていきます。これらを押さえておくことが、休職というつらい現状から抜け出す第一歩となります。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
「リワーク」について
「リワーク」のメリット・デメリット
リワークの活用を考える上で気になるのが、リワークのメリットおよびデメリットです。復職を果たすために役立つリワークですが、利用にあたってはどのようなデメリットがあるのかという点について知っておくことも大切です。
まず最初に、リワークを活用するメリットとしては、専門のスタッフとともに無理なく段階的に職場への復帰を目指せるという点が挙げられます。休職期間は単なる「休養期間」として位置づけられるのではなく、復職後も安定した就労ができるよう生活習慣を整え、体力やコミュニケーションスキルを一定のレベルにまで戻すことが求められる期間といえます。そのため、休職期間をひとりで過ごすのではなく、スタッフや他の利用者と共に過ごすことで、こうした課題を効率的に解消していくことが期待できます。
一方、リワークを活用することのデメリットとしては、復職までに一定の期間がかかるという点や、場合によっては費用がかかるという点が挙げられます。
一般的に、休職開始から復職までにかかる期間は3ヶ月~6ヶ月ほどです。これは決して短い期間ではなく、少なからず一定期間は業務から遠ざかってしまうという点がデメリットといえます。
費用に関しては、医療リワークなど一部のリワーク施設で費用が発生するものの、施設や条件によっては無料で活用できることもあるためデメリットになるかはケースバイケースといえます。
(関連記事:リワークを利用するために費用はどのくらいかかる?|施設ごとに徹底解説!)
「リワーク」の意味
「リワーク」は、休職中のメンタル不調者を対象にした復職支援を指す言葉です。休職期間に自宅で過ごすのではなく、専門の機関でリワークプログラムを受けることで、職場への復帰を効率的に目指すことができます。
復職支援は、公的サービスとして実施されるものと、民間の医療機関やNPO法人などが実施しているものとがあります。主なリワーク施設としては、各種の医療機関や障害者職業センター、就労移行支援事業所などがあります。
多様なリワークプログラム
リワーク施設で提供されるプログラムには、さまざまな種類があります。たとえば、ビジネススキルを学ぶプログラムや生活習慣を改善させるためのプログラム、またはコミュニケーション能力を養うプログラムなど、リワーク施設によって多種多様です。プログラムは午前と午後に分けて提供されることが多く、週に3~5日ほど通うというのが一般的です。
復職を目指すための主なプログラムとしては、以下のようなものがあります。
・生活習慣を改善するプログラム
復職と安定した就労の基礎となるのは、毎日の生活習慣です。そのため、多くのリワーク施設で食事や睡眠といった基本的な生活習慣の改善を目指すプログラムが提供されています。
不調が続くことで生活リズムが乱れて昼夜が逆転するという休職者が多いことから、最初に取り組むべき課題といえます。生活習慣の改善に関しては座学が中心の施設もあれば実践や習慣化に注力している施設もあるので、自身の状態や希望に合わせて施設を選ぶとよいでしょう。
・基本的な体力を取り戻すプログラム
休職期間が長期化することにより、自宅にいる時間が長くなり運動不足になるケースがあります。運動不足によって体力が低下すると、復職後に安定して就労することが困難となります。こうした課題を解消するため、基本的な体力の回復を目指すプログラムが多くの施設で提供されています。
リワーク施設によっては特に運動に力を入れているところもあり、専門のインストラクターによる指導を受けられる施設もあります。
・思考や認知の傾向を改善するプログラム
うつ状態が続くことで、日常的な思考や認知が偏るケースがみられます。認知が偏ることで私生活や仕事で支障が生じたり、コミュニケーションに齟齬が生じることがあるため、休職期間中に解消しておくべき優先度の高い課題といえます。こうした課題を解消するために、思考や認知の偏りを防ぐプログラムが重要となります。
過度にネガティブにならずに、フラットに物事を考えられることは円滑な就労に不可欠な要素のひとつです。休職の原因となるストレスもこうした認知の偏りから生じることがあるため、再発防止という観点からも大きな意義のあるプログラムとなっています。
就労移行支援事業所などのリワーク施設では、利用期間は原則として2年が上限とされていますが、「最低〇ヶ月(〇年)は利用しなければならない」という決まりはありません。主治医によって復職可能と判断されれば、その旨を人事担当者や上司に伝え、復職の手続きを進めていくことになります。
「通う意味ない?」という疑問
休職期間をどう過ごすかが重要
休職期間中にリワークのための施設・機関を利用することを考える上で、その効果に関して疑問に思う方もいるかもしれません。
財団法人の労務行政研究所の発表によると、過去にメンタルヘルス不調で休職した従業員のうち、その後に完全に職場復帰できた割合を調査すると、復帰の割合が半分程度だった企業が49.8%であることがわかりました。このことから、「休職すれば必ずしも症状が改善されるわけではない」ということがわかります。
休職期間で大切なことは、休職に至った理由を考え、再発を防止するための対策をおこなうことです。休職の根本的な原因がわからなければ、復職後に再び精神疾患を発症させてしまうおそれがあります。そのため、休職期間中は自宅で休養するだけでなく、復職支援を専門とするリワーク施設をいかに活用するかが重要となります。
この点、多くのリワーク施設では、臨床心理士や公認心理師、または精神保健福祉士などが休職者のヒアリングをおこない、休職の原因を明確にします。休職原因が明確になれば、再発防止のための最適なリワークプログラムも提供が可能になります。リワーク施設では、認知行動療法などを通じて課題や問題点の解決を図っていきます。
リワークプログラムを受ける意味を考える上で、どのような施設や機関で、どのようにプログラムを受けるかという点が重要となります。自身に合ったリワークプログラムであれば、過去の統計からもわかるように「通う意味はある」といえます。(休職期間を有意義に過ごすためのリワーク施設の資料請求はコチラから)
リワークに必要な費用
リワーク(自立訓練事業所および就労移行支援事業所)の利用にかかる費用は、利用者や家族(配偶者)の前年度の所得に応じて異なります。(1割負担)
月ごとの利用者負担額には、上限があります。障害福祉サービスの自己負担は所得に応じて以下の4区分の負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらずそれ以上の負担が生じないというのが特徴です。
●1か月の自己負担額上限額
前年度の世帯年収 | 1か月の自己負担限度額 |
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
グループホーム利用者(※2)を除く所得割16万円(※3)未満の市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯
(※2)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者の自己負担限度額は37,200円
(※3)収入がおおむね600万円以下の世帯が対象
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html
リワークを意味のあるものにするために
施設のコンセプトや方針を知る
上述したように、リワーク施設によって提供するプログラムには違いがあります。たとえば精神科や心療内科でおこなうリワークでは、精神疾患の症状の改善や悪化の防止などが主なプログラムとなることが一般的です。これに対して障害者職業センターでは、復帰後の業務を想定した支援が主なプログラムとなります。また、就労移行支援事業所では、休職者だけでなく、仕事を退職した(もしくは一度も就労したことのない)求職者を対象として、業務スキルの修得・改善プログラムや、運動プログラムが提供されます。
各施設によってプログラムが大きく異なるため、リワークを少しでも意味のあるものにするためには、スタッフへの相談や施設の見学などを通じて、自分にあったリワーク施設を選ぶことが大切です。
リワークプログラムの一例
リワーク施設のひとつである「ニューロリワーク」は、うつ病や精神疾患のある方を対象に、生活習慣の構築を通じて復職や再就職の支援プログラムを提供しています。生活習慣構築プログラムをはじめ、職場復帰プログラム、自己理解やセルフケアプログラム、就職支援プログラムなど、多様なプログラムを通じて復職を実現します。
生活習慣構築プログラムでは、そのひとつとして「理想とする生活習慣について考えよう」というプログラムを提供しています。
生活習慣は、仕事をする上での土台となります。日常生活の食事・運動・睡眠は、健全な心と身体を養うために重要な役割を果たします。プログラムでは、脳科学者の監修による理想の食事・運動・睡眠について学びます。また、座学を通じて教養を深めるだけでなく、グループワークを通じて自身の意見を述べる機会を設け、さらには時間管理や役割分担を通じて、復職後に活用できるビジネススキルの向上にも取り組みます。
個別のワークでは、「働き始めてからの生活習慣について」というテーマで理想の生活習慣を考えます。復職後にスタッフの支援がなくとも安定した生活が送れるよう、休職期間中に入念に生活習慣の構築をおこないます。
まとめ
これからリワーク施設を利用しようと考えている人にとっては、リワークを利用する意味がどれくらいあるのかが気になるかもしれません。これまでに述べてきたように、どれくらいの効果があるかについては、自身が抱える課題や問題と、施設が提供するプログラムに、どの程度の関連性があるかによって決まります。また、利用者自身が、どれだけプログラムに向き合うかによっても効果は大きく異なります。こうしたことから、リワーク施設を利用する際には、事前の相談や見学が大切です。
ニューロリワークでは、リワークプログラムの見学案内を随時おこなっています。休職や復職に関して不明点や疑問点があれば、見学の際にお気兼ねなくお尋ねください。リワーク施設を活用することで、意味と実りのある休職期間になれば幸いです。(リワーク施設のひとつ、ニューロリワークの見学をご希望の方はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
・一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムについて」
・ドクターズプラザ「リワーク(return to work)って役に立つの?」
・日本の人事部「リワーク」
・カオナビ(人事用語集)
・ADVANTAGE「職場のメンタルヘルス対策とは?メンタルヘルスQ」
・一般財団法人労務行政研究所「企業におけるメンタルヘルスの実態と対策」
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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