リワークを利用するために費用はどのくらいかかる?|施設ごとに徹底解説!
メンタルヘルスの不調による休職者が増える中、様々な施設がスムーズな職場復帰と再休職の予防にむけたリワークプログラムを提供しています。しかし、どのくらい費用がかかるのか分からないと不安ですよね。ここではリワークの利用に必要となる費用や、利用できる助成制度を施設ごとに徹底的に調べてみました。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.リワークは施設により費用が異なる。
リワーク支援を提供している施設
リワークを提供している施設には大きく4つの種類があります。
- 就労移行支援事業所
- 病院やクリニックなどの医療機関
- 障害者職業センター
- 企業内にもつリワーク制度
各施設では、提供されるプログラムの内容や利用できる対象者が異なります。
また、リワーク支援について詳しく知りたい方は「リワークとは|リワークの内容と利用するメリットを徹底解説!」の記事をご覧ください。
リワークでかかる費用の概要
リワークを受講するには、各施設で定められた利用料のほか、通所にかかる交通費・昼食代などが必要です。
利用料は1日単位で発生し、利用料×利用期間で計算されます。
リワークに通う期間は数週間から年単位まで様々です。1日の利用料は施設ごとに異なります。また、金銭的負担を抑える公的補助の内容も施設ごとに異なりますので、具体的にみていきましょう。
2.就労移行支援事業所のリワークでかかる費用について
就労移行支援事業所のリワーク費用
就労移行支援事業所は行政からの補助があるため、利用者は費用の1割を自己負担するだけでリワークを利用することができます。
1日あたり900円程度でリワークを受けられる事業所が多いです。
たとえば月20日利用した場合の施設利用料は18,000円/月となりますが、経済的負担を軽くするために自己負担額には上限が設定されています。
詳しくは次の章でみてきましょう。
自己負担の上限額について
就労移行支援事業所のリワーク費用は、前年度の世帯の収入状況により自己負担額の上限が異なります。
世帯収入額によっては、自己負担限度額は0円となり、無料でリワークを利用されている方もいらっしゃいます。
●1か月の自己負担額上限額
前年度の世帯年収 | 1か月の自己負担限度額 |
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
グループホーム利用者(※2)を除く所得割16万円(※3)未満の市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯
(※2)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者の自己負担限度額は37,200円
(※3)収入がおおむね600万円以下の世帯が対象
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html
交通費やランチ支給制度など、就労移行支援事業所の独自の助成
一部の市区町村や就労移行支援事業所では、交通費やランチの補助や支給など、独自の助成が行われていることがあります。また、自治体によっては自己負担金の全額免除をしている所も存在します。
利用を検討している就労移行支援事業所や自治体の福祉窓口に問い合わせてみましょう。
就労移行支援事業所を利用する際は自分の住んでいる区や市、都道府県を超えての利用も可能です。各事業所の助成制度を確認したうえで利用先を検討してみましょう。
就労移行支援事業所では、就労に必要なスキルアッププログラムの提供や、復職だけでなく転職も視野にいれた就職活動の支援を行っています。
プログラムの内容は一般的なビジネスマナーから専門的なプログラミングまで多種多様です。事業所によってサービス内容に特色があるため、自身のニーズにあったプログラムを受けられる事業所を探しましょう。(リワーク施設の資料請求はコチラから)
3.医療機関のリワークでかかる費用について
医療機関のリワーク費用
医療機関のリワークは健康保険が適用されるため、費用の3割を自己負担することになります。
3割負担の場合、デイケア(1日6時間)の利用で2,000~3,000円程度/日でリワークを提供している機関が多いようです。中には昼食(お弁当や院内の食事)が含まれるデイケアもありますが、交通費は全額自己負担になります。
医療機関のデイケアを月20日間利用した場合、最低でも 40,000円/月+交通費 と利用料が高額になります。医療機関のリワークを利用する場合、自立支援医療制度を利用すると健康保険よりも軽い負担でリワークを利用できる可能性があります。
自立支援医療制度について
精神疾患の治療には長い期間がかかる場合も少なくありません。自立支援医療制度は、長期継続する治療の医療費負担を緩和するために生まれた国の制度です。
通常の健康保険であれば3割が自己負担となりますが、自立支援医療制度を利用すれば自己負担は1割だけで済みます。つまり、デイケアの場合、1日あたり700円~800円程度でリワークを利用できることになります。
自立支援医療制度はお住まいの市町村で申請することができます。精神障害者保健福祉手帳を持っていない場合でも申請・受給することができます。
自立支援医療制度は毎年更新手続きが必要など、手続きが面倒に感じてしまうかもしれませんが、リワークの利用料だけでなく医療費も抑えることができます。
まだ申請されていない方は市区町村に相談してみてはいかがでしょうか。
自己負担の上限額について
自立支援医療制度にも1か月の自己負担の上限額が設定されています。自立支援医療制度の自己負担の上限額は世帯年収だけではなく、病状によっても変わるため注意してください。なお、うつ病などの精神疾患の場合、多くの場合は「重度かつ継続」に該当するといわれています。
●1か月の自己負担額上限額
世帯年収 | 精神通院医療 | 重度かつ継続 |
市町村民税235,000円以上 | 対象外 | 20,000円 |
市町村民税33,000円以上235,000円未満 | ※医療保険の高額医療費の対象。ただし、精神通院のほとんどは重度かつ継続 | 10,000円 |
市町村民税課税以上33,000万円未満 | 5000円 | |
市町村民税非課税かつ本人収入が800,001円以上 | 5,000円 | 5,000円 |
市町村民税非課税かつ本人収入が800,000円以下 | 2,500円 | 2500円 |
生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
出典: https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/dl/01.pdf
4.その他のリワーク機関でかかる費用について
障害者職業センターのリワーク費用
障害者職業センターは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する、公的機関となっておりますので、無料でリワークを受けることができます。ただし公務員は利用することができません。
利用する場合にかかる費用は、交通費や昼食代のみになります。
ただし各都道府県に1か所程度の設置と数が少ないため、近隣にあるとは限りません。遠方になると交通費の負担が大きくなります。
無料であるため人気もあり、リワークを利用するために数か月待たなければならないケースもあるようですので、休職期間の残数もふまえてしっかり検討してみましょう。
企業内リワークのリワーク費用
たとえ、医師が復職可能と診断しても、実際に復職してみると再び病状が悪化し、再休職してしまうケースも少なくはありません。
企業内リワークは休職者が本当に復職して仕事ができるかを見極めるために各企業に設置された制度です。
多くの企業は費用を負担するため、従業員は無料でリワークを利用することができます。ただし、ごく一部の企業では社員が利用料を支払うケースもあるようです。
まずは、所属する企業にリワーク制度があるか確認してみましょう。
5.施設利用料以外にかかる費用
施設に通うための費用も考えよう
リワーク施設の利用料には、利用料以外にも交通費や昼食代が必要となります。
一部の就労移行支援事業所を除いて、交通費や昼食代は原則全額自己負担の施設がほとんどです。
施設に数か月以上通うことを考えれば、自宅から遠すぎる施設を選択すると金銭的にも身体的にも負担が大きくなるため注意が必要ですね。
施設により独自の助成制度もある
一部の就労移行支援事業所では、独自に交通費の補助を行っている事業所があります。就労移行支援事業所に通われる際は、交通費を補助する制度はあるか、また自身がその対象となるか確認することをおすすめします。
また、プログラムの一環として、ランチ支給制度をもつ就労移行支援事業所や医療機関があります。例えば、往復交通費が400円/日、ランチ代が500円/日かかるとすると、月に20日通所した場合それだけで18,000円/月の出費となります。
リワーク施設を選ぶ際は通所にかかる交通費やランチ代についても念頭におき、無理なく通える施設を探しましょう。
6.費用以外に重要なこと
施設によりサービス内容が異なる
ひとことでリワークといってもサービス内容は提供している施設によって異なります。費用だけではなく、自身の状態に合ったサービスを提供している機関を選ぶ必要があるということです。
<各機関のサービスの特徴>
●就労移行支援事業所
働くために必要となるスキルの習得や就職活動の支援を行っています。一般的なビジネスマナーからプログラミングなどの専門知識まで事業所によってさまざまなスキルアッププログラムが提供されています。また定着支援や転職も視野に入れた就職支援を受けられます。
●医療機関
認知行動療法を行います。病状の回復を目的としていることが他の機関との一番の違いです。
●地域障害者職業センター
地域障害者職業センターの職業カウンセラーが休職者と雇用主、主治医をコーディネートし、休職者の職場復帰をサポートします。
●企業内リワーク
社員が職場に復帰して働くことができるか見極め、スムーズに職場に復帰できるようにサポートを行います。
リワーク施設を選択する際のポイント
リワーク施設を探す際は、費用以外にも大切なポイントがあります。
気を付けて欲しい5つのポイントについて説明したいと思います。
① 自宅から通いやすいかどうか調べましょう。
まず、自宅から通いやすい施設を選びましょう。週何日、何時から何時までのプログラムかを確認し、交通経路を調べしょう。遠くて時間がかかりすぎないか、混雑する時間帯に重なるのかなども調べます。自宅から施設に通うまでの間に疲れてしまわないよう、無理なく通える施設を選びましょう。
② 見学をして、施設の雰囲気が自分に合うか確認しましょう。
リワーク支援の施設は多種多様です。利用前に施設を見学し、雰囲気が合うか確認しましょう。スタッフと話しやすいかどうかも大切なポイントです。
③ 目的にあった施設を選択しましょう。
リワークは施設によって提供されるプログラム内容が異なります。自身の症状やニーズに合わせて使い分けましょう。
④ 主治医や職場、他の支援機関との連携があるか聞いておきましょう。
スムーズな職場復帰が可能になるだけでなく、環境の変化、体調の変化などがあった場合も対応がスムーズです。
⑤ 定着支援・フォロー体制がしっかりしているかどうか確認しましょう。
復職後間もないうちは、体調が安定しない方が多いです。再発することなく、長く働くことができるように、復職・就職後のフォロー体制も確認しておきましょう。
いろいろな不安があると思いますが、以上のポイントを意識しながら、自分に合った施設を探してみてください。(リワーク施設の見学をご希望の方はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
・厚生労働省「自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み」
・厚生労働省「障害者利用の負担」
・総務・人事「メンタル不調者をサポート スムーズな職場復帰のための「リワーク施設」活用ガイド」
・厚生労働省 中央労働災害防止協会「~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
・東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「長期にわたる療養が必要な労働者の復職等支援事業報告書 」
(写真素材:photoAC、PIXTA)
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