職場で浮いてしまう…大人のアスペルガー(自閉スペクトラム症)かも?特徴と対策を解説

職場で人間関係や業務がうまくいかず「もしかして自分はアスペルガー(※)かも」(※現在、医学的には「自閉スペクトラム症」という診断名に含まれます。)と悩んでいませんか。本記事ではアスペルガー症候群の特性を整理し、今日からできる工夫や周囲への伝え方を解説します。理解を深めることで働きやすい環境を整え、自分らしく安心して働くためのヒントを得られます。さらに専門機関の活用方法もご紹介し、孤独にならず前向きに取り組むための道筋を示します。
なぜかうまくいかない…その原因、アスペルガー症候群の特性かもしれません
「自分は頑張っているつもりなのに、なぜか職場でうまくいかない」「周りから浮いている気がする」といった悩みを抱えていませんか。
このような困難の背景には、自分でも気づいていないアスペルガー症候群(ASD)の特性が関係している可能性があります。大人の発達障害は、負荷が大きい職場でしばしば見つかり、会議や社会マナーなどの苦手さから不適応が目立つことがあります。
まずは自分の「苦手」や「困難」の正体を知るために、職場で現れやすいアスペルガー症候群の代表的な特性を理解しましょう。努力してもうまくいかない状況には、理由があるのです。
「空気が読めない」「失礼」と誤解されてしまうのはなぜ?
悪気はないのに相手を怒らせてしまったり、場の雰囲気を壊してしまったりする経験はありませんか。周囲から見れば「なんでそんなことを言うのだろう」と不思議に思われることがあります。
これは相手の表情や声のトーンから感情を読み取ったり、その場の暗黙のルールを察したりすることが苦手な「社会性の障害」が原因かもしれません。アスペルガー症候群では「空気を読めない」といわれる発言が目立つ特徴があります。これらは本人の性格や努力不足の問題ではなく、生まれ持った脳機能の特性なのです。
冗談や曖昧な表現がわからず、つらくなるのはなぜ?
会話の中でお世辞や社交辞令を真に受けて傷ついたり、上司からの「いい感じにやっといて」といった曖昧な指示にどう動けばよいか分からず困ったりしていませんか。
これは言葉を文字通りの意味で解釈する特性や、間接的な表現や文脈を理解できず相手の言ったことを真に受けてしまうアスペルガー症候群のコミュニケーションの特徴です。お世辞やユーモア、社交辞令や定型的な表現などの理解が難しいケースもあります。この特性により、周囲との会話で誤解が生じやすく、精神的な疲れにつながりやすいのです。
急な変更やマルチタスクに強い不安を感じるのはなぜ?
決まった手順や自分のやり方で仕事を進めることに安心感を覚える一方で、急な予定変更や複数の業務を同時に頼まれると頭が真っ白になってしまう経験はありませんか。
これは見通しが立つことを好み、臨機応変な対応を苦手とする「こだわりの強さ」が背景にある可能性があります。アスペルガー症候群では「こだわり」の特性から切り替えが非常にやりづらく、複数のことを同時にやることや急な変化への対応が苦手分野となっています。自分のペースが乱されることへの強い不安やストレスが、パフォーマンスの低下につながるのです。
なお、上述した特性に当てはまるからといって、必ずしもアスペルガー症候群(ASD)とは限りません。正確な診断のためには、専門の医療機関を受診することが重要です。
アスペルガー症候群の特性を知ることから始める|明日から自分でできる工夫
自分の特性を理解した上で、次は仕事上の困難を軽減するために自分でできる具体的な工夫に取り組んでみましょう。
「できないこと」を責めるのではなく、「どうすればできるか」という視点で対策を考えることが、自信の回復と安定した就労につながります。アスペルガー症候群の特性に合わせた工夫を取り入れることで、無理のない範囲で少しずつ改善を図ることができるのです。
以下では、職場で実践しやすい具体的なセルフケアや仕事の進め方のコツを紹介します。ちょっとした工夫を身につけることで、着実にステップを踏み出していきましょう。
受けた指示は「メモ」と「復唱」で抜け漏れを防ぐ
口頭で言われた指示を忘れてしまったり、聴覚的な指示がわからない、間違える、忘れるといった経験はありませんか。
このような特性への対策として、必ずメモを取る習慣が重要です。指示を聞きながら要点を書き出し、最後に「○○という理解でよろしいでしょうか」と復唱して確認することで、認識のズレを防げます。
アスペルガー症候群の方は視覚から得る情報の方が理解しやすい場合があるため、指示を「文字」として見える化する工夫を活用しましょう。
タスクは「リスト化」して一つずつ集中してこなす
複数の業務に混乱してしまうマルチタスクが苦手で、複数のことを同時にやることが非常に難しく感じていませんか。
この苦手さに対して、まずすべてのタスクを書き出してリスト化する方法が効果的です。上司に相談して優先順位を決め、一つの作業が終わったらリストにチェックを入れる、というシングルタスクの進め方で取り組みましょう。
完了したタスクが目に見えることで、達成感を得やすくなり、仕事の進捗管理もしやすくなります。
よくあるビジネスシーンの「マイルール」を決めておく
挨拶のタイミングがわからない、報告すべきか迷うなど、社会マナーが苦手で基本的な礼儀作法や社会的なルールを自然に身につけることが難しく感じていませんか。
このような場面への対策として、「出社したら部署の全員に聞こえる声でおはようございますと言う」「業務が終わったら『○○完了しました』と上司に報告する」など、自分なりの行動ルールを決めておく方法が有効です。
「暗黙の了解」に頼らず、行動をパターン化することで、迷いや不安を減らし、スムーズに行動できるようになります。
働きやすい環境のために|周囲に理解してもらう伝え方のコツ
自分の工夫だけでは限界がある場合、職場に自分の特性を伝えて配慮を求めることも重要です。
「配慮」とは特別な扱いを求めることではなく、他の人と同じように能力を発揮するために必要な調整のことです。特に2024年に障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました。事業者による障害のある人への合理的配慮は法的義務となっており、働きやすい職場環境を整えることが求められています。
職場に配慮を求める場合、自分の苦手なことと、そのためにどうしてほしいかを具体的に、かつ相手に伝わりやすいように説明することが重要です。以下では職場での理解と協力を得るための説明のポイントを紹介します。
「具体的に」「書いて」指示してもらうようお願いする
上司や同僚に、「自分は曖昧な表現だと混乱してしまうため、できるだけ具体的な言葉でお願いしたい」と伝えることが大切です。
「口頭の指示は忘れてしまうことがあるので、チャットやメールなど、文字で残してもらえると助かります」といった具体的な伝え方で相談してみましょう。会議中の話し合いや仕事の説明をするときは、図形や文章を用いて視覚的に分かりやすくしてもらうことも効果的です。
なぜその配慮が必要なのかという理由(特性)とセットで伝えることで、相手の理解を得やすくなります。
我慢は禁物!感覚過敏への配慮をお願いする
オフィスの照明が眩しすぎたり、周りの雑音が気になって仕事に集中できなかったりする「感覚過敏」のつらさを我慢してはいけません。感覚過敏の症状をそのままにしてしまうと、仕事の効率が落ちてしまい、大きなストレスにつながってしまうからです。
「PCの画面や職場の電気が眩しく感じるので窓際の席を避けてほしい」「大きな音や突然聞こえる音がストレスになるので、集中したいときはイヤーマフやノイズキャンセリング機能のイヤホンの使用を許可してほしい」など、求める配慮を具体的に伝えましょう。
感覚過敏は本人のわがままではなく、脳の特性であることを伝え、業務パフォーマンスを上げるための環境調整として相談することが重要です。
一人で悩まず専門機関へ|復職や再就職を目指す場合はリワーク施設という選択肢も
職場での人間関係や業務に困難を感じる背景には、アスペルガー症候群の特性が関係している可能性があります。「文脈の理解が難しい(空気が読めないといわれる)」「曖昧な指示が理解できない」「マルチタスクで強い不安を感じる」といった特性は、生まれ持った脳機能の違いであり、本人の努力不足ではありません。
これらの特性を理解した上で、メモや復唱による指示の確認、タスクのリスト化、マイルールの設定など、自分に合った工夫を取り入れることで業務の質を向上させることができます。また、職場に具体的な配慮を求めることも、能力を発揮するために必要な調整なのです。しかし、自分の工夫や職場への働きかけだけでは状況が改善されない場合は、一人で抱え込まず専門機関に相談することが重要です。
また、症状が原因で休職・離職となり、そこからの復職・再就職を目指すのであれば、支援機関を活用することも選択肢のひとつです。たとえばニューロリワークでは、専門スタッフのサポートのもと自己の特性理解を深め、コミュニケーションやストレス対処のトレーニングプログラムなども提供しています。こうしたプログラムを通じて、これまでに多くの方々が安定した就労を実現しています。休職からの復職を目指す方や働き続けることに不安がある方は、お気軽にご相談ください。
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