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発達障害の強みを仕事に!得意なことの見つけ方と就職活動の進め方

発達障害のある方が自分の特性を「弱み」ではなく「強み」として活かせれば、就職活動の方向性は大きく変わります。この記事では、ASDやADHDの特性から生まれる強みの見つけ方や、それを活かせる仕事・支援サービスをくわしく解説。自分に合った働き方を見つけたい方に役立つ内容です。

発達障害の特性は「強み」になる

発達障害の特性

発達障害のある方が持つ特性は、日常生活や仕事の場面で困難を感じる原因となることがあります。しかし、その特性はネガティブな側面だけでなく、視点を変えることで優れた能力として「強み」になる可能性を秘めています。

発達障害は生まれつきのもので、一部の能力が飛び抜けていたり、極端に苦手なことがあったりします。そのため、他の多くの方にとってやりやすい環境の中であっても、自分だけは不適応を起こしやすいという特徴がみられるケースもあります。しかし、苦手な部分の環境調整を行い、能力の優れている部分に目を向けることで、得意が活かされて仕事で活躍できるようになります。

ここでは、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動性障害)それぞれの特性から生まれる強みについて、具体的に見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性から生まれる強み

ASD(自閉スペクトラム症)の方には、仕事で活かせる次のような強みがある傾向がみられます。

  • 興味のある分野への高い集中力や記憶力を発揮できる
  • ルールや規則を正確に守ることが得意
  • 論理的思考力に優れている
  • 几帳面で正確性が高い作業ができる

ASDの特性として「こだわりが強い」という面がありますが、一見こだわりが強いとされる特性も、状況や環境によっては強みとして活かせる場合があります。物事に妥協せず根気強く取り組める姿勢や、ルールに納得できれば常に一定水準の品質で業務を遂行できる能力につながるためです。

これらの強みは、品質管理やデータ分析、研究開発といった分野で活かせる可能性があります。決められた手順を守る業務や、細部への注意力が求められる仕事でも力を発揮できるでしょう。

ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性から生まれる強み

ADHD(注意欠如・多動性障害)の方には、次のような強みがある傾向がみられます。

  • 様々な分野への好奇心が旺盛で学習意欲が高い
  • 斬新なアイデアや発想を生み出せる
  • 行動力があり、判断や決断が速い
  • 興味のあることへの集中力が高い

ADHDには不注意や多動性、衝動性といった特性がありますが、これらは視点を変えることで長所になります。枠にとらわれない柔軟な思考ができること、興味のある分野ではとことん追求できる集中力を持っていることは、大きな武器となるでしょう。

これらの強みは、企画職や営業職、デザイナーなどのクリエイティブな職種で活かせる可能性があります。研究者やエンジニア、プログラマーといった専門的な知識を必要とする仕事でも力を発揮できるでしょう。

「得意なことがない」と感じる方が自分の強みを見つけるには

強みを見つける方法

発達障害のある方は特定の分野で突出した才能を発揮するというイメージを持たれることがありますが、実際にはそうした方ばかりではありません。「自分には得意なことがない」と感じている方も多くいらっしゃいます。

しかし、得意なことがないからといって、適した仕事が見つからないわけではありません。仕事探しにおいて重要なのは、必ずしも仕事に直結する得意なことを見つけることではなく、自分の強みと弱みを理解することです。強みと弱みがわかるだけでも、仕事選びの方向性は見えてきます。

ここでは、気負わずに自分の得意分野や長所を見つけるための視点や方法をご紹介します。

他者比較ではなく「自分基準」で考えてみる

発達障害のある方が自分の得意なことを探す際に大切なのは、他者との比較ではなく自分との比較で考えることです。「他人よりも上手にできること」ではなく、「自分が何に興味を持ち、楽しめるか」「比較的苦労せずにできること」という視点で考えてみましょう。

「得意」という言葉にハードルの高さを感じる場合は、やっていて楽しいと思えることや、継続して取り組めていることがないか振り返ってみてください。これらも、自分に合った仕事選びの重要なヒントになります。

また、自分の弱みや苦手なことを自覚している方は、「苦手ではないこと」「やっていて苦にならないこと」を探すという視点も有効です。苦手なことに過度にこだわらず、自分の特性を理解して環境を整える視点が大切です。

第三者の視点や客観的なツールを活用してみる

自分一人で得意なことや強みを見つけるのは難しいものです。自己理解を深めるには他者の視点が欠かせません。他者から受けた指摘や褒められた経験を振り返ることで、自分では気づいていなかった長所に気付くことがあります。

より客観的に自分の得意・不得意を知りたい場合は、心理検査を受ける方法もあります。心理検査には発達・知能に関する検査、脳の機能に関する検査、心の状態に関する検査などがあり、自分の特性を客観的に把握できます。

また、GATB(厚生労働省編 一般職業適性検査)というツールを使えば、適性のある職業を判定することも可能です。心理検査やGATBについては、かかりつけ医や自治体の福祉窓口、ハローワークなどで相談できます。

発達障害の強みを活かせる仕事選びと働き方の選択肢

強みを活かせる仕事選び

自分の発達障害の特性や強みを理解できたら、次はそれに合った仕事や働き方を見つけることが大切です。発達障害のある方が就職活動を進める際には、一般採用枠と障害者採用枠という2つの選択肢があります。

一般採用枠は求人数が多く給与水準も高い傾向がある一方、障害者採用枠は特性への理解や配慮を得やすいというメリットがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況や希望に合わせて選択することが重要です。

ここでは、発達障害の特性別に向いている仕事の具体例と、2つの雇用枠の違いについて見ていきましょう。自分に合った働き方を選ぶことが、長期的に安定して働くためのカギとなります。

発達障害の特性に合った仕事の具体例

発達障害の特性ごとに、向いていると考えられる仕事の例を紹介します。

  • ASD(自閉スペクトラム症)の方に向いている仕事…データ入力、校正などの正確さが求められる仕事、工場でのライン作業、設備点検など手順や方法が決まっている仕事、プログラマー、ITエンジニアなど論理的思考力が必要な技術職
  • ADHD(注意欠如・多動性障害)の方に向いている仕事…デザイナーなどのクリエイティブな仕事、営業職、販売職など行動力や対人折衝力が活かせる仕事、企画職、研究者など発想力や行動力が活かせる仕事
  • LD(学習障害)の方に向いている仕事読む・書く・計算といった特定の苦手分野をPCやツールで補うことができ、かつ、自身の得意な能力(例:論理的思考力、口頭でのコミュニケーション能力、空間認識能力など)を活かせる仕事

これらはあくまで一例であり、同じ障害でも個人によって特性の現れ方は異なります。自分の強みと弱みを理解し、どのような環境であれば能力を発揮しやすいかを考えることが大切です。

就職活動における2つの雇用枠

発達障害のある方が就職する際には、一般採用枠と障害者採用枠という2つの選択肢があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

一般採用枠 障害者採用枠
対象 障害の有無にかかわらず誰でも応募可能 障害者手帳を持つ方が対象
求人数 多い 少ない傾向
給与水準 比較的高い傾向 比較的低い傾向
障害への配慮 合理的配慮の提供が義務化されているが、配慮の内容は事業所による 障害特性への理解があり、配慮を受けやすい

2024年4月からは、改正障害者差別解消法により、民間企業にも合理的配慮の提供が義務化されました。それ以前は努力義務とされていましたが、現在はすべての事業者に義務として求められています。

参考:内閣府|令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました

障害者採用枠で就職するには、原則として障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など)が必要です。ただし、一部の自治体や企業では、医師の診断書などで応募できる場合もあります

発達障害のある方の就職活動を支える支援サービス

発達障害のある方の就職活動

発達障害のある方が就職活動を進める際、一人で悩みを抱えたり困難を感じたりする場合には、専門的な支援機関を活用することができます。これらのサービスを利用することで、自己理解を深めたり、就職に必要なスキルを身に付けたり、自分に合った職場を見つける手助けを受けられます。

代表的な支援機関としては、発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などがあります。各機関はそれぞれ異なる役割を持ち、相談内容や状況に応じて適切な支援を提供してくれます。

ここでは、特に就職活動で活用しやすい就労移行支援と自立訓練(生活訓練)について見ていきましょう。

就労移行支援:スキル習得から就職後の定着までサポート

就労移行支援は、障害者総合支援法で定められている障害福祉サービスのひとつです。一般企業への就職を希望する障害のある方を対象に、就職に必要な知識やスキルを提供します。原則、最大で2年間にわたり、様々な支援を受けることが可能です。

訓練内容には、ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーション訓練、自己理解を深めるプログラムなどがあります。自分の特性や強み、弱みを知る自己理解のプログラムでは、支援員や他の利用者からの視点も取り入れながら進められます。

また、履歴書の添削や面接練習といった就職活動のサポートから、就職後の職場定着支援まで、一貫したサポートが受けられる点も特徴です。利用には障害福祉サービス受給者証が必要ですが、精神障害者保健福祉手帳がなくても、医師の意見書などをもとに自治体が必要と認めた場合は利用できます。

自立訓練(生活訓練):社会生活の土台を整える

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を送れるよう支援するサービスです。就職を目指す前に、まずは生活の基盤を整えたい方に適しています。

支援内容には、規則正しい生活リズムの構築、金銭管理、コミュニケーションスキルの向上などがあり、それぞれの特性や状況に応じた支援を提供します。生活習慣や健康管理といった、働く上での土台となる部分を整えることができます。

生活の安定が就労の第一歩となるため、まずは生活の土台を安定させたい方や、就労に向けて段階的に準備を進めたい方が利用できるサービスです。自立訓練を経てから就労移行支援に移行するという選択肢もあります。

専門機関への相談で、自分らしい働き方を見つけよう

発達障害の特性は、見方を変えることで仕事において大きな強みとなります。ASDの方が持つ高い集中力や論理的思考力、ADHDの方が持つ発想力や行動力は、適切な環境で活かすことで職場での活躍につながるでしょう。

自分の強みを見つけ、それを活かせる仕事や働き方を探すためには、自己理解を深めることが不可欠です。他者との比較ではなく自分基準で考えたり、心理検査などの客観的なツールを活用したりすることで、自分では気づいていなかった長所や適性が見えてきます。

また、一人で悩まず「ニューロリワーク」のような就労移行支援や復職支援を行う専門機関に相談することも選択肢の一つです。専門的なサポートを受けながら就職活動を進められるほか、自己理解を深めるプログラムや就職後の定着支援など、一貫した支援が受けられるため、自分らしい働き方を実現しやすくなります。ニューロリワークでは、見学や相談は無料ですので、まずは気軽に問い合わせてみはいかがでしょうか。

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監修者

藤本 志乃

公認心理師、臨床心理士

早稲田大学人間科学部健康福祉学科、同大学院人間科学研究科卒業後、荒川区教育センター、東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科にて心理士として勤務。
その後、日本赤十字社医療センター腎臓内科心理判定士を経て、2020年にオンラインで心サービスを提供するLe:self(リセルフ)を創業。
企業でのメンタルヘルス研修など予防的な心のケアに関する講演、コンテンツ作成などにも多く携わる。
著書にあふれる「しんどい」をうけとめる こころのティーカップの取り扱い方。

ホームページ:https://leself.jp/