定着支援とは?期間や料金、障害者の利用条件をわかりやすく解説
就職や復職後、職場に定着し続けるためには日々の悩みや課題に寄り添ってくれる支援が欠かせません。この記事では、障害を持ちながら働く方やその支援者を対象に、就労定着支援サービスの概要や利用条件、料金、活用の流れをわかりやすく解説します。制度を正しく理解し活用することで、安定した就労生活への一歩を踏み出せます。
就労定着支援とは?職場での悩みに寄り添う障害福祉サービス

就労定着支援は、障害のある方が就職後に長く安定して働き続けることを目的とした、障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。2018年4月から始まった制度で、就職後に生じる仕事や生活面の課題に対し、支援員が本人と企業の間に入り、相談や助言を行います。
この制度が創設された背景には、障害者雇用の数は増加しているものの、特に精神障害のある方の職場定着率が低いという課題があります。
<障害の種類別の職場定着率(就職から1年後)>
| 障害の種類 | 定着率(%) |
| 発達障害 | 71.5 |
| 知的障害 | 68.0 |
| 身体障害 | 60.8 |
| 精神障害 | 49.3 |
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター|障害者の就業状況等に関する調査研究
このデータから、就職後のサポート体制を整えることが、長期的な職場定着につながる重要な要素であることがわかります。
就労定着支援の具体的なサポート内容
就労定着支援では、就職後に生じやすい様々な課題に対応するため、以下のような悩みに対するサポートを受けられます。
- 仕事上のミスが多く困っている
- 上司や同僚とうまくコミュニケーションが取れない
- 生活リズムが乱れ、遅刻や欠勤が増えてしまう
- 体調管理がうまくできない
- 給料をもらっても金銭管理ができない
こうした課題に対し、定着支援員は主に3つの役割を果たします。まず、月1回以上のペースで利用者と対面での面談を行い、現在の職場環境や生活状況を把握します。次に、必要に応じて、ご本人や企業の同意を得た上で勤務先を訪問し、職場の担当者と情報共有や調整を行うこともあります。さらに、医療機関や福祉機関などの関係機関と連絡調整を行い、働きやすい環境へとつなげます。
これらのサポートを通じて、課題を放置することなく早期に解決を図ることで、職場の信用を維持し、離職を防ぐことにつながります。
就労定着支援サービスの利用要件

就労定着支援を利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、「サービスの対象となる方」「サービスの利用可能期間」「サービス利用にかかる料金」という3つの基本的な点について解説します。
サービスの対象となる方
就労定着支援の対象となるのは、障害福祉サービス(例:就労移行支援、就労継続支援A・B型、自立訓練など)を利用して一般就労した方です。(※生活介護から直接一般就労するケースは少ないため、個別に自治体へ確認が必要です。)
雇用形態は問わず、正社員やパート、アルバイトなど、どのような働き方でも対象となります。また他の事業所を利用して就職した方でも、定着支援のみを利用することが可能です。
サービスの利用可能期間
就労定着支援は、就職後7ヶ月目から利用を開始でき、最長で3年間サポートを受けられます。なお、受給者証の有効期間(通常1年)が切れる際には、継続利用のために更新手続きが必要です。
就職後最初の6ヶ月間は、就職前に利用していた就労移行支援事業所などによる「職場定着支援」が提供されます。この期間が終了した後、7ヶ月目から就労定着支援へと移行できる仕組みとなっています。そのため、就職直後から最長3年6ヶ月にわたって、途切れることなく支援を受けられる体制が整っています。
サービス利用にかかる料金
就労定着支援の利用料金は、本人および配偶者の前年度の世帯所得に応じて決定されます。自己負担は原則1割で、残りの9割は自治体が負担する仕組みです。世帯の収入状況に応じた自己負担上限月額は以下のとおりです。
<世帯の収入状況別の自己負担上限月額>
| 区分 | 世帯の収入状況 | 自己負担上限額(月額) |
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税が非課税の世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税が課税され、所得割が16万円未満の世帯 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外(所得割が16万円以上の世帯) | 37,200円 |
なお、就職先の企業に費用負担はありませんが、支援を円滑に行うため、必要に応じて面談や情報共有にご協力をお願いする場合があります。
就労定着支援を利用するまでの手続き

就労定着支援を利用するには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、サービスを利用したいと考えてから実際にサービスが開始されるまでの流れを、「利用する事業所を探して相談する」「自治体で受給者証の申請を行う」という2つのステップに分けて解説します。
利用する事業所を探して相談する
まず、就労定着支援を提供している事業所を探す必要があります。就労移行支援事業所などがサービスを提供していることが多いものの、すべての事業所が対応しているわけではありません。
事業所の探し方として、以下の方法があります。
- 以前利用していた障害福祉サービス事業所に相談する
- お住まいの自治体の障害福祉担当窓口に問い合わせる
- インターネットで「地域名+就労定着支援」と検索する
利用したい事業所が決まったら、契約に向けて相談を進めましょう。
自治体で受給者証の申請を行う
就労定着支援の利用には「障害福祉サービス受給者証」が必須です。受給者証の申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
申請から受給者証の発行までには2週間から1ヶ月ほどの期間がかかるため、早めに手続きを始めることが大切です。
他の障害者就労支援との相違点

障害のある方の就労をサポートするサービスには様々なものがあり、特に名前が似ているサービスとの違いを理解することも大切です。ここでは、就労定着支援と混同されやすい「就労移行支援」「職場定着支援」「ジョブコーチ」との違いを明確に解説します。
就労移行支援との相違点
就労移行支援と就労定着支援の大きな違いは、サポートを提供するタイミング(段階・内容)です。就労移行支援は就職「前」の準備をサポートするサービスであり、就労定着支援は就職「後」の職場定着をサポートするサービスです。
それぞれの目的と支援内容の違いは以下のとおりです。
<就労移行支援と就労定着支援の比較>
| 就労移行支援 | 就労定着支援 | |
| 目的 | 一般企業への就職を目指し、必要な知識やスキルを身に付けること | 就職後、長く安定して働き続けられるように職場への定着を支援すること |
| タイミング | 就職するまでの期間(原則、24ヶ月以内) | 就職後7ヶ月目から開始し、そこから最長3年間 |
| 主な支援内容(一例) |
|
|
このように、就労移行支援は就職に向けた準備段階の支援であり、就労定着支援は就職後に仕事を続けられるようにする支援です。両方のサービスを組み合わせることで、就職前から就職後まで一貫したサポートを受けられます。
職場定着支援との相違点
職場定着支援と就労定着支援は、支援の時期と実施主体が異なります。職場定着支援は就職後1〜6ヶ月目に行われ、実施主体は就職前に利用していた事業所です。一方、就労定着支援は就職後7ヶ月目から開始され、そこから最長3年間行われ、実施主体は新たに契約した就労定着支援事業所となります。
この2つの支援は連携しており、就職直後から長期間にわたって切れ目のないサポートが受けられる仕組みになっています。職場定着支援で就職直後の安定を図り、その後の長期的な支援を就労定着支援が担うことで、スムーズに職場に適応できるようサポートが行われます。
ジョブコーチ(職場適応援助者)との相違点
ジョブコーチによる支援と就労定着支援の違いを、対象者、支援期間、費用の観点から比較すると以下のようになります。
<ジョブコーチと就労定着支援の比較>
| 比較ポイント | ジョブコーチ(職場適応援助者) | 就労定着支援 |
| 対象者 | 障害福祉サービスを利用せずに就職した方でも利用可能。 | 就労移行支援などの障害福祉サービスを利用して一般就労した方が対象。 |
| 支援期間 | 1〜8ヶ月と比較的短期間。 | 就職後7ヶ月目から開始し、そこから最長3年間と長期間。 |
| 費用 | 原則として無料。 | 自己負担がない場合もあるが、前年の収入によっては自己負担が発生する場合がある。 |
ジョブコーチは短期集中型の支援であり、障害福祉サービスを利用せずに就職した方でも利用できる点が特徴です。一方、就労定着支援は長期的な支援を希望する方に適しています。
就労定着支援を利用するメリットと留意点

就労定着支援を利用することには多くの利点がありますが、利用する上で知っておくべき点もあります。ここでは、メリットと留意点を両面から解説します。これらを事前に把握することで、より効果的にサービスを活用できます。
利用によって得られる主なメリット
就労定着支援を利用するメリットは、働く本人と雇用する企業の双方にあります。長期にわたる支援により、就職直後だけでなく、環境に慣れた後に生じる新たな課題にも対応できます。また支援員が医療機関などの関係機関と連携することで、企業側ともスムーズな情報共有が可能となります。
<利用者のメリット>
- 最長3年という長期間のサポートによる安心感
- 仕事だけでなく生活面も含めた幅広い悩みを相談できる
- 会社に直接言いにくい配慮の相談などを支援員が仲介してくれる
<会社側のメリット>
- 障害特性への理解を深め、適切な関わり方ができる
- 本人の生活面が安定し、結果的に職場定着につながる
- 障害者雇用に関するノウハウを蓄積できる
利用する際に知っておきたい留意点
就労定着支援を利用する際には、以下の点に留意しておきましょう。
- 就職2年目以降など、前年度の収入によっては利用料金が発生する場合がある
- 定期的な面談のために、仕事の時間外にスケジュールを調整する必要がある
- サービスの利用は任意であり、必ずしも全員が利用する必要はない
- 原則として転職時には利用資格が失われますが、1ヶ月以内の再就職であれば、自治体の判断により1回に限り継続が認められる場合があります。
これらの点を理解した上で、自分にとって必要かどうかを判断することが大切です。
就労定着支援に関するよくある質問

就労定着支援について、利用を検討している方からよく寄せられる質問とその回答をQ&A形式でまとめました。利用期間や終了後のこと、利用中の働き方など、気になる疑問点を解消していきましょう。
期間や終了後に関する質問
Q.最長3年の利用期間を延長することはできますか?
原則として延長はできません。ただし、3年間の利用終了後は、障害者就業・生活支援センターなどの他の支援機関に引き継ぎ、サポートを継続することが可能です。
Q.支援を途中で辞めることはできますか?
利用者の判断で、利用を途中で終了することは可能です。支援が必要なくなった場合や、支援が合わないと感じた場合は、いつでも利用をやめられます。
利用中の働き方に関する質問
Q.サービス利用中に転職した場合、継続して利用できますか?
原則として利用資格は失われます。ただし、退職後1ヶ月以内に新しい職場で働き始めた場合は、1回に限り利用を継続できます。
Q.一度利用をやめた後、再度利用することはできますか?
一度利用を終了した場合、再度利用するには改めて受給者証の申請手続きが必要になります。そのため、支援の必要性が低くなった場合は、すぐにやめるのではなく、面談の頻度を減らすなどの調整を支援員と相談することをおすすめします。
ニューロリワークの定着支援で、自分らしく働き続ける未来へ
就職後や復職後の職場での不安や悩みを抱えながら働き続けることは、大きな負担となります。就労定着支援は、そうした不安に寄り添い、最長3年間という長期にわたって安定した就労を支える心強い制度です。定期的な面談や職場との調整を通じて、一人ひとりに合った働き方を実現できるからこそ、多くの方が長く働き続けることができています。
ニューロリワークでも、復職・就職後の長期的な就労継続をサポートするための定着支援サービスを提供しています。月に1回以上の定期的な面談を通して、ご本人、職場、関係機関と密に連携し、働きやすい環境づくりをサポートします。
定着支援を行っているセンターは、五反田センター、大塚センター、吉祥寺センター、横浜センター、大宮センター、大宮南センター、春日部センター、久喜センター、新松戸センター、梅田センターです。就職後や復職後の生活に不安のある方は、ぜひ一度お近くのセンターへご相談ください。見学や相談は無料ですので、まずは気軽にお問い合わせください。
監修者
中谷 ミホ
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。
現在は介護業界での実務経験と専門知識を活かし、介護・障害福祉分野の記事執筆・監修を手掛ける。
■保有資格
・介護福祉士
・ケアマネジャー
・社会福祉士
・保育士
・福祉住環境コーディネーター3級
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