メンタルヘルス不調で休職を考える方へ。 -復職のための道筋を考える-
ひと口にメンタルヘルス不調といっても、その種類や症状はさまざまです。一般的には、「うつ病」「統合失調症」「双極性障害」「パニック障害」などがメンタルヘルス不調の代表的なものとして挙げられています。
メンタルヘルス不調による休職は、社会問題といわれるほどにまで大きな問題となっています。しかし同時に、身体のケガや病気とは異なり目に見えにくい症状であるため、自覚症状がないまま事態が悪化するケースも大いに考えられます。
ここでは、そんなメンタルヘルス不調もしくはその“予備軍”ともいえる方に向けて、休職までの流れや復職にあたって押さえておきたいポイントについてご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
「休職」という選択を後ろ向きに考えない
メンタルヘルス不調を患う方には、もしかすると「真面目」「責任感が強い」という方も多いかもしれません。こういった方々は社内でも多くの仕事を引き受け、そして周囲にあまり相談せずに自らで課題や問題を抱え込んでしまいがちです。
休職を考える上で、「会社に迷惑がかかるのではないか」という思いが頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。たしかに、内閣府の試算によると30代後半で年収が約600万円の従業員が休職する場合、休職期間の6ヶ月と、その前後の3ヶ月ずつの期間で会社が負担する費用は約422万円といわれています。
(出典:内閣府 男女共同参画会議・仕事と生活の調和に関する専門調査会「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」)
こうした数値を踏まえると、確かに休職に対して抵抗感が生まれるかもしれません。しかし、休職者が生まれる職場環境を放置することは、企業にとっても大きなマイナスとなります。そのため、休職の前例をつくり、企業の労働環境の改善の一役を担うと考えることで、企業にとっては長期的には良いきっかけになると捉えることもできます。
心の病は、身体の病と比べると自然治癒が難しいといえます。そのため、「放っておけばいつかは治る」という考えではなく、「誰かに相談し、周囲の人たちの力で治す」という考えを持つことが大切です。
休職直前の動き
メンタルヘルスの不調を改善するためには、医師による診断と、治療のための休職の二点を考えることが重要です。なお、休職を考える上で確認すべき点としては、「自分の会社に休職制度があるか」という点が挙げられます。休職制度は法律ではなく会社ごとに制定されるので、制度の有無や期間の長さ、または給与や補償、手当に違いがあります。あらかじめ上司や担当部署に確認した上で、休職の手続きを進めるようにしましょう。
休職中の動き
休職期間というと、もしかするとその間は会社と全く連絡を取らないことを想定する方もいるかもしれません。しかし、復職を視野に入れた休職であることを考えると、一定の頻度で会社と連絡を取ることが大切であることがわかります。これは、会社に心配をかけないという点だけでなく、自身が疎外感や孤独感を抱かないという点からも重要です。休職中に会社と連絡を取り合うことで帰属意識を保ち、会社とのつながりを適度に意識し続けることが可能です。もっとも、会社との連絡が過度な負担になるほど頻繁に連絡をとっていては本末転倒となるため、会社との連絡は最低限に留めることが望ましいといえます。
復職直前の動き
メンタルへルス不調の回復の早さは、人によって異なります。そのため、復職を考えるのであれば自身の体調を把握し、会社の協力を経て準備を進めていく必要があります。
一般的に、復職の判断は産業医や主治医によっておこなわれます。厳密にいえば産業医や主治医の判断を受けて上司や人事部などが決めることになりますが、いずれにせよ医師から復職が可能である旨が記載された診断書を受け取る必要があります。「おおよそいつから復職が可能か」「復職後はどの程度の業務を担当できるか」「通院の頻度はどれくらいか」といった点も、復職を果たす時点で考慮されます。
リワーク施設を活用することで、休職期間を有効に過ごす
上述したように、休職期間は「放っておけばいつかは治る」という考えではなく、「誰かに相談し、周囲の人たちの力で治す」という考えを基に日々を過ごすことが大切です。
こうした考えを休職者に活用されているのは、復職を目指すためのリワーク施設です。リワーク施設ではメンタルケアのプログラムやビジネススキルのプログラム、またはコミュニケーションスキルのプログラム、さらには運動・ストレッチのプログラムなど、さまざまなプログラムを通じて復職を目指しています。
リワーク施設のひとつである「ニューロリワーク」でも、上記のプログラムに加え、脳と身体の健康を維持するためのブレインフィットネスプログラムなどを提供しています。
さまざまな復職プログラム
「ニューロリワーク」では、たとえば心身をリラックスさせるためのプログラムのひとつとして、「オフィスで簡単ストレッチ」というプログラムをおこなっています。メンタルヘルスの不調とストレッチでは一見すると関連性が薄いように考えられがちですが、近年ではストレッチ運動が持つリラクゼーションの効果も明らかになってきています。
30分程度にわたって全身の筋を順番に伸ばしていくようなストレッチングの前後で脳波や自律神経活動を調べると、前頭葉でのアルファ波を増加させ、心拍変動を増加させることが分かっています。また、心拍数を低下させる効果も確認されています。すなわち、効果的なストレッチによって自律神経の活動が副交感神経活動を有意に変化させ、リラックス状態を維持することが期待されています。
ストレッチ(ストレッチング)は、意図的に筋や関節を伸ばす運動です。かつては柔軟体操とも呼ばれていました。最近になってますます人気を集めているヨガやピラティスも、広義の意味ではストレッチ運動に含まれます。いずれも身体の柔軟性を高めるのに効果的であり、準備運動や整理運動の一要素として活用されています。
現在ではさまざまな研究から、身体の状態が心の状態に影響を与え、そうして変化した心の状態が、今度は身体の状態を変化させることがわかっています。こう考えると、ストレッチの効果は、心身ともに現れることが期待できます。プログラムの中ではこうした心身のケアのひとつとして、オフィス内でも簡単にできるストレッチをご紹介しています。運動プログラムは実際に体験するというのが最も効果的ですが、ここではその概要をご紹介します。
ストレッチのポイント
(3)の「痛くなく、気持ちよい程度に伸ばす」という点に関しては、痛いほど伸ばしてしまう伸張反射が働き、かえって筋が硬直してしまい効果が低下するので注意が必要です。また、(4)の「呼吸を止めない」では、腹部を圧迫するようなストレッチでは呼吸が止まりがちで、血圧の上昇が起こる場合もあるのでゆっくりと深い呼吸とともにおこなうのがポイントです。
ストレッチは、適切な方法で継続して実践していくことが重要です。ストレッチや運動不足が続くと首や背中が固くなって血流が悪化し、痩せにくい身体になったり慢性的な疲労やコリなどを伴います。また、姿勢が猫背になることで腹筋が緩み、お腹が出てくることもあります。こうしたことから、ストレッチと姿勢は健康な身体をつくる基本となることがわかります。
まとめ
簡単なようで正しい方法を学ぶ機会が少ないストレッチだからこそ、その質の高さが大きなポイントとなります。身体の疲れだけでなく、心の疲れもとれないというときには、適度な運動やストレッチ、そして姿勢を意識してケアを図りましょう。
ニューロリワークでは運動・ストレッチのプログラムだけでなく、認知行動療法に基づくプログラムなども提供しています。他にも、定期的な面談や復職に向けた模擬面接もおこなっていますので、休職期間をより効果的に過ごすための場所としてご活用いただけます。施設やプログラムの見学もおこなっていますので、ご興味のある方は是非ご検討ください。休職期間のプログラムを通じて、メンタルヘルス不調を改善されることを心より願っております。(休職や復職に関するご相談はコチラから)
【参考文献・参考サイト】
・内閣府 男女共同参画会議・仕事と生活の調和に関する専門調査会「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」
・アドバンテッジJOURNAL「メンタルヘルス不調による休職から職場復帰までの対応のポイントとは?」
・人事&産業保健WEBメディア「【社労士監修】休職期間はどう決まる?休職中の給料・手当・手続き10の疑問」
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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