再休職を防ぎたい|休職理由を分析して効果的な再発予防策を
休職に至った理由を分析し、的確に把握することは、メンタル不調の再発や再休職を防ぐために非常に重要です。また、復職か退職か迷っている場合には客観的な判断材料にもなります。こうした理由から、休職理由の把握と再発予防策は、休職期間中に取り組んでおきたいことのひとつといえます。
そこで今回は、休職理由を分析して再発予防策を考えるための手順や、押さえておくと役に立つポイントについてご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.休職理由を分析して再発予防策を考える手順
休職理由を把握し、再発予防策を考える手順は主に以下のとおりです。
①休職前の状況を紙に書き出す。
②文章化する。
③再発予防策を明確にする。
手順①休職前の状況を紙に書き出す
最初に、休職前の状況を
1.業務内容
2.職場環境
3.対人関係
4.ストレスになったこと
5.プライベート
の5つの観点から紙に書き出します。
これらは必ずしも全てを埋めなくても問題ありません。5つの観点から休職前の状況を振り返り、見落としのないようにすることが大切です。
【例】
1.業務内容:締め切りに追われていた。
2.職場環境:厳しいノルマがあった。
3.対人関係:隣の部署の上司がいつも怒っていた。
4.ストレスになったこと:ミスが続いていた。/毎日満員電車に乗っていた。
5.プライベート:パートナーと会う機会が少なくなった。
手順②文章化する
続いて、紙に書き出したことを文章にまとめます。その際、「6W2H」を利用して具体的にまとめることが大切です。
・When:いつ
・Where:どこで
・Who:だれが
・Whom:だれに
・What:なにを
・Why:なぜ
・How:どのように
・How much:いくらで
上述の例を文章にまとめると、以下のようになります。
「締め切りに追われていて夜中まで会社に残っていることが多く、十分な休息を取れなかった。そのため、心身への疲労が蓄積していつのまにかメンタル不調になってしまった」(When・Where・How・Why)
「厳しいノルマがあり、常に不安を感じていた」(How)
「隣の部署の上司の怒号が自分に向けられているように感じた」(Who・Whom・How)
「満員電車で舌打ちされたことがトラウマになり、電車に乗れなくなってしまった」(Where・What・Why)
このように文章化することにより、休職に至った理由を明確にすることができます。
手順③再発予防策を明確にする
休職理由が把握できたら、次は再発予防策を明確にします。
上述の「締め切りに追われていた」を例に挙げると、下記のような対策が考えられます。
・締め切りに追われることがなくなるよう、遂行中の業務を書き出し工数を見積もる。
・締め切りのある業務などは常にひとつにしてもらう。
再発予防策を明確にする上で大切なことは、自身の体調や症状を理解して「対処できること」と「配慮してもらうこと」を分類しておくという点です。その上で必要な対策を考え、配慮してもらうことがあれば上司や人事の担当者など企業側と相談して対策を進めることが重要です。また、家族や医療機関、リワークのスタッフに相談することも大切です。(スタッフに相談しながら復職を目指すなら → ニューロリワークの資料請求)
2.休職理由の分析と再発予防策のポイント
休職理由の分析と再発予防策に関して、多くの方が上述の手順で難なく進められるというわけではありません。そのようなときに役に立つ、考え方のポイントが3つあります。
ポイント①自分の思考を見直す
1つ目のポイントは、自分の思考を見直すことです。見直すといっても、自分の悪い思考を見つけて矯正するということではありません。自分の思考を見直す目的は、同じシチュエーションになったときに上手に対処する方法を考えるという点にあります。
ここでは、認知行動療法に当てはめて考えていきます。認知行動療法について、厚生労働省のサイトではこのように説明されています。
ーうつ病などの様々な心の病に対する有効性が医学研究で立証されている心理療法。
(中略)
認知行動療法は、ある状況に出くわした時に、私たちが持つ感情と行動が、その状況をどうとらえるか(認知)によって影響を受けることに着目します。(後略)ー
認知行動療法では、「出来事」「認知(受け止め方)」「感情」「行動」の4つを分離して考えます。そして、不快な感情が生まれるのは出来事に対してどのようなとらえ方(認知)をしているときか、そのようなときにどのような対処(行動)をしていけばいいのかを学んでいきます。
業務量が多いことが原因で休職に至った例に考えてみましょう。繁忙期であったり人手が足りていなかったりといった職場環境に原因がある場合は、自分の力だけで対策することは難しいかもしれません。しかし、そのような職場環境の問題ではなく、自分は忙しいにもかかわらず笑顔で仕事を引き受けてしまったことが業務量の増加につながってしまったというようなケースでは、自分の思考を見直すことで再発予防が可能です。
考え方としては、まずは「出来事」「認知(受け止め方)」「感情」「行動」の4つに分離します。このケースでは、「上司から追加の業務を頼まれた」という出来事に対して、「忙しいのに頼まれてしまった、困った」という感情が生じたにもかかわらず「でも上司の指示には従うべきだ」という認知が原因となり、結果的に「笑顔で引き受けてしまう」という行動に至ったと考えられます。
・出来事:上司から追加の業務を頼まれた。
・感情:忙しいのに頼まれてしまった、困った。
・認知:でも上司の指示には従うべきだ。
・行動:笑顔で引き受けてしまう。
このように、自分がつらい思いをしたときの行動や思考を振り返り、どのような思考がつらい気分に影響したのかを把握していくことが大切です。そうすることで、次に同じシチュエーションに遭ったときに別の捉え方をしようというきっかけとなります。
・出来事:上司から追加の業務を頼まれた。
・感情:忙しいのに頼まれてしまった、困った。
・認知②:今の業務で最大限の成果を出すために無理に引き受けるべきではない。
自身の健康を維持することは最重要な職務なので今は断るべきだ。
自分の時間も大切なので断ってもかまわない。
・行動②:上司に今の業務で忙しく引き受けられないと返答する。
といった認知や行動の選択肢があることを頭に入れておくと、同じような状況に遭ったときに異なる(良い)結果となります。
ポイント②自分の病状や体調を理解し、受け止める
2つ目のポイントは、自分の病状や体調を理解し、受け止めることです。休職前の状況を振り返ったときに「これは自分の能力不足が原因だ」と考えていたことが、実はメンタル不調の症状から生じていた問題だったというケースも考えられます。
病状が原因となってできないことや困難な作業、あるいはストレスを感じる苦手な業務などは、自分で対策を練るだけでは解決が難しい場合があります。そのようなときは、企業側にも配慮をお願いすることで解決の道筋が見えてきます。このように自分で変えられる範囲と配慮が必要なことを見定めるためにも、自分の病状や体調を理解して受け止めることが大切です。
理解するだけでなく「受け止める」ことが大切なのは、自分の病状を受容できなければ必要な対策を講じることにも否定的になり、適切な対処法を考えることが難しくなるためです。受け入れるといっても「他の社員ができていることや以前は自分もやっていたことなのに、今はできない状態だと受け入れなければならない」と考えるとつらいかもしれません。そのような場合は「できない」と考えるのではなく「自分一人ではできなくても適切な配慮や助力を得られればできる」と肯定的に考えることで受け入れやすくなります。
配慮や助力を求めることが心苦しいと考えてしまう場合もあるかもしれませんが、メンタル不調がなくても誰にでも不得意なことや苦手なことはあります。そのような不得手な業務にあたる場面で誰の助けも借りずに進めてしまうと、かえってミスをしたり時間がかかりすぎたりといったリスクが高くなります。必要な場面で上手く他人の力を借りることは大切なスキルのひとつだと考えることで、過度な負担を減らすことができます。
このように自己理解に基づいて配慮を求めていくことを「セルフアドボカシー(自己権利擁護)」といいます。セルフアドボカシーについては、「復職前の面談、何を話す?『セルフアドボカシー(自己権利擁護)』で安定就労の基礎作り」でもご紹介しています。
ポイント③自分をアップデートする意識を持つ
3つ目は、自分をアップデートさせる意識を持つことです。復職を目指す場合や転職に切り替える場合でも、過去の自分からアップデートする必要はあります。
ここでいうアップデートとは能力を上げるという意味ではなく、適切な対応策を見つけることを指します。同じシチュエーションに遭ったときにうまく対処する方法を身につけたり、同じシチュエーションに遭わないように対策を講じます。
また、周りに助けてもらうことや配慮してもらうといったことも含まれます。どのような助けや配慮が必要なのかを把握することも、重要なアップデートのひとつです。休職原因を分析するときは、苦手なことや困難なことを避けたり放置したりせずに自分をアップデートさせる意識を持って取り組んでみるようにしましょう。
まとめ
休職原因の分析は、復職を成功させるために欠かせない取り組みです。まだ休職原因を分析できていないという方は、可能な範囲で分析を行い、復職と安定した就労を目指しましょう。
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【参考文献・参考サイト】
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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