「リワークを辞めたい、しんどい」 その理由と対処法について考える

うつ病やメンタルヘルスの不調で休職し、リワーク施設を利用し始めたものの、様々な理由で「リワークを辞めたい」「退所したい」と悩むことがあるかもしれません。
体調不良や人間関係の悪化などでリワークに行きたくないという気分が強くなると、辞める方向に気持ちが傾きがちです。中には「退所するしかない」と早々に判断をする方もいますが、復職を成功させるためには退所以外の選択肢を検討することも大切です。
ここでは、リワークを辞めたいと考える理由別に、それぞれの対処法をご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.リワークをやめたい・しんどいと感じる理由
リワークプログラムに取り組む上で、「やめたい」「しんどい」と感じる瞬間は、多くの方が経験するものです。様々な要因が重なり、継続への意欲が揺らいでしまうということは、決して特別なことではありません。こうした感情や考えは、リワークの過程で自然に生じるものです。大切なのは、その背景にある原因を理解し、適切な対処法を見つけることです。
「リワークをやめたい」「しんどい」と感じる主な理由としては、体調の不安定さ、通所の面倒さ、プログラムの意義への疑問、人間関係の難しさ、復職許可が得られないことなどがあります。以下では、これらの概要や対処法についてみていきます。
(1)体調が不安定な場合
退所したいと考える理由で最も多いのが、体調が優れないという理由です。
そもそも休職中は心身に不調がある上、通勤をしないことで少なからず体力が落ちている状態からリワークを利用し始めるため、通所する体力がもたなかったり疲れて体調を崩したりすることもあります。
とはいえ、リワークに通所できる体調ではないと感じるからといって、必ずしも退所を考える必要はありません。
体調が不安定で行きたくないと考える場合は、まず主治医やスタッフに相談することが大切です。
その上で、以下のふたつの対処のうち、どちらが適切かを検討します。
1.通所の日数や時間を見直し、負荷を減らして通所する。
2.一定期間の療養を取り、体調が改善してから再び通所を開始する。
メンタル不調を抱えていると「決まった日時に通所できないなら意味がない」「また休んでしまった。もう退所するしかない」というような極端かつ後ろ向きな考えになってしまうこともあります。そのような考えに引きずられて行動すると、後悔することになりかねません。自分の体調に合わせて無理のない対処をすることで、将来的に安定して通所できるようになります。
一方、リワークに通うことで体調に悪い影響が出てしまう場合は、退所も選択肢のひとつとなります。しかし、そのような場合であってもスタッフに相談し、体調不良の原因になっていることを明確にしておく必要があります。原因がわからないままで退所してしまうと、他の環境に移った際に再び体調を崩す恐れがあります。
そのため、体調不良のきっかけを明確にした上で、通所を継続できるか退所した方が良いかを考えることが大切です。
(2)面倒に感じてしまう場合
退所を考える理由で体調不良の次に多いのは、リワークに通うことが面倒に感じてしまうという理由です。特に、リワークに通い始めて間もない方が多い傾向にあります。
面倒に感じる理由として、「生活習慣が乱れているため朝起きられない」、または「通所が習慣化されていない」という点が考えられます。
またメンタル不調の症状として「おっくうだ」「何をするのも面倒」という気分が現れることもあります。
そのような理由でリワークを退所することは、復職においても心身の回復においても逆効果となる可能性が高いといえます。退所してしまうと、むしろ生活習慣が乱れて復職そのものが遠のいてしまう危険性もあります。
また、面倒に感じてしまう心身の状態を改善する機会を逃して、復職後も同じような経緯をたどって会社を退職するリスクも高まります。
リワークに通い続けるうちに、生活習慣が整い、通所が習慣となれば、面倒に感じる気分は少しずつ軽減していきます。慣れるまではつらい時期が続きますが、面倒に感じる状態だからこそ通所を継続できるように工夫したいものです。
どうしても体が動かないと感じるときでもスタッフへの連絡は欠かさず行い、対処法を相談することが大切です。
(3)リワークに意味を見出せない場合
リワークへの通所に意味を見い出せず、利用しなくても復職ができると考えて退所を検討する方もいます。特に、プログラム内容だけを基準にしてリワークへの通所を取捨選択する方に多い理由です。
通うことの意味を見いだせなくなったときは、リワークに通う目的を見直す必要があるかもしれません。もちろん、リワーク通所の最大の目的は復職の成功です。そのためには下記に挙げるような目的を達成していくことが重要です。
[リワークに通う目的]
・通勤訓練
・体力づくり
・社会交流
・集団での活動
・生活習慣の安定
・プログラムの受講
など
「プログラム内容が自分に合わない」「プログラム受講に意味が見出せない」などの理由だけで安易に退所を判断してしまうと、その他のリワークの目的が達成できなくなります。
中でも「通勤訓練」「生活習慣の安定」は、復職できる心身の状態をつくる重要な基礎となる上に、ひとりで実行から記録まで行うのは困難を伴う部分もあります。
多くの企業では、復職の可否を判断する際にはプログラムの受講実績よりもリワークへの通所実績や生活習慣の安定を重視しています。
このようなリワークの意義と目的を理解した上で、リワークを退所してもひとりで達成できるかを再検討することによって、適切な判断ができるようになります。
復職の成功とリワークの効果については、こちらの記事【リワーク支援と再発率に関するデータ|リワークプログラムの効果は?】でも解説しています。
(4)人間関係が上手くいかない場合
他の利用者やスタッフとの関係性から、退所したいと考える方もいます。「自分に問題があるから退所するしかない」と判断を急いでしまうことも少なくありません。
そのようなときも、退所を決断する前にスタッフに相談して対処法を考えることで、解決する場合があります。
多くのリワーク施設では、対人関係スキルを学ぶプログラムを提供しています。人間関係を理由にリワークを退所するより、復職後も人間関係で悩んだときに対処できるようリワークの期間で対処法を学ぶことが重要です。
復職後に、必ずしも人間関係の悩みから解放されるとは限りません。厚生労働省が平成30年に行った「労働安全衛生調査」でも、働いている方の多くが対人関係で強いストレスを感じていることが明らかになっています。
リワークを退所してしまうと対処法を学ぶ機会を得られず、同じようなシチュエーションがあったときに会社を退職してしまう可能性が高まります。
スタッフに対しては、注意されたことから不快に感じる方もいます。そのスタッフの言葉を「注意」や「批判」と受け取るか「復職後も安定して働くためのアドバイス」と受け止めるかによっても気分は変わってくるものです。そのような場合は、物事の受け止め方(認知)をトレーニングする認知行動療法に基づくプログラムを受講することも解決策のひとつです。
その他、スタッフ個人との相性やトラブルなどは、別のスタッフに相談することによって客観的な意見を聞いて対処法を考えることができます。
いずれの場合でも「退所」ではなく、「対処」で解決することが重要です。(休職期間を有意義に過ごすためのリワーク施設の見学申し込みはコチラから)
(5)復職許可がおりない場合
リワークのスタッフや医師から復職の許可がおりないことで退所を検討する方もいます。リワークに一定期間通えば、必ず復職の許可が得られるということではありません。スタッフや医師から復職の許可がおりない場合は必ず理由があります。
理由がわからないまま退所して別のリワークに移ったとしても、同じような結果になる可能性があります。
リワークのスタッフや医師が復職を許可できないと判断する理由には、下記のようなものがあります。
[復職の許可がおりない理由]
・通所が安定しない
・集中力が戻っていない
・生活習慣が乱れている
・体調が安定していない など
自分では復職できると思っていても、客観的に見て「遅刻や欠席が多い」「課題を完成させられない」といった状態であれば、復職するには時期尚早と判断されます。
復職できるかどうかを判断するのは本人ではなく、主治医や産業医、企業の人事などの他者であることがほとんどです。つまり、客観的に見たときに復職できる状態になっているかどうかが重要です。リワークのスタッフも客観的な視点で復職の可否を考えています。
回復への手ごたえを感じると、復職したいという気持ちが強くなるかもしれません。また、リワークに通ううちに復職への焦りが出てくる場合もあります。そのようなときは自分ひとりで決断せず、スタッフや医師の客観的な意見や判断を確認することが大切です。
(関連記事:「リワークに行きたくない」という気持ちの対策方法を押さえて、安定した復職を実現)
2.リワークをやめたい・しんどいと感じたとき、どうすれば良い?
リワークを続けていると、「もうやめたい」「毎日しんどい」と感じる瞬間が訪れることがあります。これは、必ずしも自身の弱さややる気のなさが原因になっているというものではありません。
リワークは、心と体の調子を整えながら少しずつ社会との接点を取り戻していく過程です。ときには負担を大きく感じることもありますが、そのような場合に大切なのは「やめる」か「続ける」かをすぐに判断することではなく、まずは「今、自分に何が起きているのか」を冷静に見つめることです。
しんどさを感じたとき、負担を和らげるために意識するべき主な点としては以下の3つが挙げられます。
(1)「しんどい」と感じる理由を見つめ直す
リワークを「しんどい」と感じる背景には、身体的・精神的な疲労や、自分でも気づいていないストレスが隠れている場合があります。たとえば、毎日の通所が負担になっていたり、他の参加者との人間関係に疲れたり、プログラムに目的が見いだせなくなっているケースなどが考えられます。このような場合に違和感を無視してしまうと、心身の調子が悪化し、さらに「やめたい」という想いが強くなります。
対処法のひとつとして、自分が何に対してストレスを感じているのか、紙に書き出すという方法があります。これにより、「人と話す時間が長すぎて疲れていた」「本当にしんどいのは朝の通所準備だけだった」といったように、問題の原因が具体的にみえるようになります。具体的な理由が分かれば、職員や支援者と相談して「プログラム内容を調整する」「通所回数を減らす」など、柔軟な対応が可能となります。
(2)「頑張りすぎていないか」を自分に問いかける
リワークに通っていると、「周囲の人よりも遅れているかもしれない」「少しでも早く復職しないと」といった焦る気持ちが生じることがあります。その結果、無意識に自分を追い詰めてしまい、「もっと頑張らなければ」「これ以上、迷惑をかけてはいけない」とプレッシャーを感じて疲弊してしまうケースも多くみられます。
しんどさを感じたときは、自分自身のペースを取り戻すことが大切です。他人と比較せず、「今日はリワークに来られただけで充分」と、小さな成功体験を積み重ねることが回復への第一歩となります。また、つらいときこそスタッフにその旨を伝え、無理のないスケジュールへの見直しをすることも大切です。リワークは「がんばるための場所」としての側面もありますが、「回復のための場所」としての側面も強くあります。そのため、頑張りすぎず、自分を大切にする視点を忘れないことが重要なポイントのひとつといえます。
(3)「一時的に休む」という選択肢もある
リワークを続ける中でどうしてもつらくなった場合は、「一時的に休む」という選択肢をとることも大切です。途中で休むことに対して罪悪感を持ってしまうという方も少なくありませんが、リワークはあくまで回復のためのサポートプログラムです。無理に続けることで調子を崩してしまっては、本末転倒といえます。
「今の状態では続けるのがつらい」「もう少し休めば、また参加できるかも」というときは、スタッフと相談して一時的な休止や自宅でできるリハビリへの切り替えなどを検討することが大切です。また、医師と相談して通所の可否やリワーク以外の支援手段についてアドバイスを受けるのも効果的です。自身の体調に合わせ、自分に合った回復のリズムを整えることが結果的に復職への近道となります。
(関連記事:「体調は悪くないのにリワーク施設に行きたくない」 欠席する?しない?悩んだときの対処法)
3.リワークを利用された方の感想
これからリワークを利用して復職することを考えている方にとっては、リワークを実際に利用された方々の声は心強く、大いに参考となります。復職に向けた不安や葛藤の中で、どのようにリワークを活用し、自分なりのペースで前進できたのかについて、以下では実際にプログラムに参加された方の感想(一部)をご紹介します。
事例(1):「様々な課題を克服し、心身ともに安定した状態で復職」
【双極性障害(躁うつ病) 30代 利用期間:6ヶ月】
役に立ったプログラムは、「FITプログラム」、「プラス表現トレーニング」、「ブレインフィットネスプログラム」です。 特に「FITプログラム」と「プラス表現トレーニング」から大きな影響を受け、自分が何を考えているかを言語化できるようになりました。それにより、以前よりマイナス思考に陥りにくくなりました。 「FITプログラム」では、思考を柔軟にするためのツールとして、認知を掘り下げるコラム法を学んだことで、日常的に使えるようになりました。これにより、問題に直面した際に、どのように解決すればよいかを考えられるようになりました。また、「ブレインフィットネスプログラム」では、食事や運動などが安定した生活に欠かせないものだと学んだので、健康に気を配った生活ができるようになりました。その結果、基礎体力が回復したと感じています。 (中略) ニューロリワークの支援員の方に、リワーク中の私の状況を会社に直接伝えていただいたり、私が会社に聞きづらいことを確認していただいたりしました。そのおかげで、復職後の仕事内容や勤務時間などのギャップが少なかったと感じています。 |
(全文はこちら)
事例(2):「リワークで学んだことを実践することで、体調とメンタルの両面の改善を実感」
【双極性障害(躁うつ病) 30代 利用期間:6ヶ月】
休職前は、メンタル不調の原因が分からず、適切な対処や改善策を見出せずにいました。気分や体調に波があり安定しなかったため、仕事のパフォーマンスを維持することが困難な状況でした。そこで、リワークを利用し、メンタル不調の原因を正しく理解することで再発防止を継続できるようになること、そして日々の生活を楽しめるようになること、心身ともに良好な状態を維持できるようになることを目標としました。 通所開始後の最初の1ヶ月は、自己理解の不足を痛感し落胆する場面もありましたが、同時に様々な気づきを得ることができました。その後、リワークで学んだことを信じて日々実践したところ、体調とメンタルの両面に著しい改善が見られました。この改善を実感できたことが、2ヶ月目以降の自己学習やセルフケアを習慣化する大きな動機となりました。 (中略) そして、ただプログラムを受講して満足するのではなく、学んだことを最適化し、日々の生活の中で継続的に実践していくことこそが、最も重要だということを学びました。 |
(全文はこちら)
リワークプログラムを利用することで、通所を通じて自身の心身の状態を見つめ直す機会となり、回復への第一歩を踏み出すことができます。プログラムを通じて行われる様々な座学やグループワーク、セルフケアの習得などは、生活習慣の見直しやストレスへの対応力の向上につながり、結果的に復職後の再発予防にもつながります。また、スタッフのサポートや安心できる雰囲気の中で他の利用者と交流できることも、大きな支えとなります。
このように、リワーク施設の利用には大きなメリットがあります。復職を考える上で悩みを抱えている場合は、リワークの活用を考えることがおすすめです。
(関連記事:リワーク施設(リワークプログラム)を利用する上で知っておきたい「施設の種類」と「選び方」とは?)
4.「リワークを辞めたい」「しんどい」そんなときは相談を
体調が優れない場合は、体調不良の原因を理解して通所の負荷を調整する等の対策をスタッフと相談しましょう。
通所が面倒に感じる場合、しばらくつらい時期が続くかもしれませんが習慣となるまで通所することが大切です。通所が習慣化する頃には生活習慣も安定し、面倒に感じることも少なくなります。
リワークに意味を感じない場合は、目的の見直しを行い、ひとりで達成できるかを再検討します。
人間関係がうまくいかない場合は、スタッフに相談したり対処法を学んだりすることで、復職後の人間関係の悩みに対処できるようになります。
退所には、デメリットやリスクが伴います。生活習慣を安定させられる環境から離れることで復職が遠のいたり、仕事や通勤に必要な体力が身につかなかったりする可能性があるからです。ひとりでは対策が思い浮かばなかったり解決が難しかったりする場合は、スタッフに相談するのも良い対処法です。
リワークに通うことで体調に悪い影響がある場合を除いては、できるだけ退所は避けて他の対応を検討することが大切です。
リワーク施設である「ニューロリワーク」では、安定した復職・就労を実現するために生活習慣の乱れを改善する「ブレインフィットネスプログラム」や、認知行動療法に基づくプログラムなど、様々なプログラムを提供しています。日々のプログラムを通じて、一人ひとりにあった復職プランの実現を目指します。
事業所の見学やプログラムの見学も可能ですので、ご興味のある方はお気兼ねなくお問い合わせください。
(関連記事:ご存知ですか?「リワーク施設」┃復職の成功につながる施設選びの5つのポイント)
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【参考文献・参考サイト】
・平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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