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復職 臨床心理士監修

臨床心理士監修|復職準備性とは、言葉の意味や内容を徹底解説

疾患の内容に関わらず、休職者が復職後も安定的に働き続けるために身に付けておきたいスキルのことをまとめて復職準備性といいます。主にリワーク施設で使用される言葉で、基礎である体力の向上、病状の緩和、勤労意欲の回復など、復職後の再発や再休職の予防につながる就労能力のことを言います。
今回は復職準備性の具体的な内容の説明と、復職準備性を身に付ける方法について解説していきます。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから

1.復職準備性とは

復職準備性とは

復職準備性と聞いてもなかなか聞きなれない言葉ですね。主にリワーク施設で使われている言葉で、休職者が復職に向けて身に付けておきたい就労能力のことをいいます。

復職準備性を高めることが、再発や再休職の予防につながると言われています。
具体的には、基礎である体力の向上、病状の緩和、生活習慣の見直し、勤労意欲の回復、その他コミュニケーションスキルなどが該当します。

リワーク施設では、復職準備性がどの程度備わっているかを確かめる指標に評価シートを用いることが多いです。
評価シートは複数の項目に分かれており、それぞれが点数で数値化されるため、自身の状態が可視化しやすくなります。
評価シートは決して優劣を競うものではなく自分の体調や今後の方向性を指し示すための指標であり、スタッフとご自身のやり取りのツールとして使用されます。
評価シートの項目を把握していくと、復職へ向けて整えておくべきことも見えてきます。次の項目では、評価シートの項目について詳しく説明します。

復職準備性の具体的な内容とは?評価シート項目について

今回は日本うつ病リワーク研究会より発表されている標準化リワークプログラム評価シートの内容を紹介します。

企業の規模や勤務先エリア、職種などによって、仕事内容や労働環境は様々に変わってきますので、評価シートはリワーク施設ごとに独自のものが用いられることが多いです。

今回ご紹介する日本うつ病リワーク研究会の標準化リワークプログラム評価シートは、仕事に従事するうえで必ず必要となり得る基本的な項目に絞られています。どのような環境でも当てはまる内容が多くありますので、参考にしてみてください。

標準化リワークプログラム評価シートの項目は大まかに3つに分類されます。

基本項目 「出席率」「眠気・疲労」「集中の継続」
対人交流 「他のメンバーやスタッフとの会話」「協調性」「適切な自己主張」「不快な行為」「役割行動」「対処行動」
心理的側面 「気持ちの安定」「積極性・意欲」「他のメンバーやスタッフからの注意や指摘への反応」

出典:うつ病休職者の職場復帰準備性 ―リワークプログラムにおける標準化評価シート―(日本うつ病リワーク研究会)

基本項目は、リワークプログラムへの出席率、プログラムを受講している際の集中度合、眠気や疲労によるプログラム参加への影響などをみます。

これは毎日通勤し、眠気や疲労に影響されず集中を維持しながら業務を遂行できるかどうかなど、勤怠や勤務態度を判断する項目になります。
対人交流は、職場内でのルールの遵守やコミュニケーション能力などをみるものになります。
例えば、「不快な行為」は、相手に不快な気持ちを抱かせるような言動がないかはもちろん、攻撃的な自己主張をしていないかどうか、大声を出したり話が長くなりすぎていないかもチェックされます。

心理的側面においては、不安や怒り、緊張など不安定な状態に陥った際、業務遂行に影響がでないかどうかや、意欲的に仕事に取り組む姿勢があるかどうかをみます。

各項目は4段階で評価されます。

日本うつ病リワーク研究会では、復職可能性の判断を行う場合は可能な限り過去8週間の状態について判定を行うことが理想とされています。各項目の詳しい説明や、評価の指標は「プログラムにおける評価の標準化」をご覧ください。

復職準備性の具体的な内容とは?生活リズム表の項目について

生活リズム

評価シートを作成するために、生活リズム表とよばれる普段の生活習慣について記載したシートを用いることもあります。

生活リズム表には、起床~就寝までの1日の流れや、睡眠時間、その日の体調や服薬状況、気分などを記入します。起床~就寝までの流れの中では、食事やお昼寝、散歩なども記載していきます。

生活リズム表を記入することで、客観的に自分の生活習慣を振り返ることが出来ます。また、気分を書くことによって気分の波に気づいたり、気分と睡眠時間やその日の出来事との関係に気づいたり、自己理解を深める事が出来ます。

2.復職準備性を高めるためには

復職準備性はどのようにして高める

それでは、復職準備性はどのようにして高めるといいのでしょうか。

復職準備性は、評価シートや生活リズム表をもとに、毎日働くために必要な能力のうち現時点でどこに課題があるのか理解し、それを改善・向上することで高まっていきます。そのためには、働くために必要な能力が何かを理解することが大切です。

前章で紹介した評価シートの項目を理解することで働くために必要な能力について理解することもできますが、本項目では『復職支援ハンドブック(著者 中野美奈子)』に記載のある4つの能力を紹介します。

Bio(セルフマネジメント機能) 体調・疾病管理、ストレス対処
Psycho(心理的機能) 認知行動パターン・心理的課題
Social(社会的機能) 対人関係、コミュニケーション
Vocational(職業的機能)  業務遂行スキル・問題解決思考

各項目の詳細は以下の内容になります。

Bio(セルフマネジメント機能)

働き続けるためには生活リズムを整え、就労後も安定した生活習慣を維持し続けることが大切です。睡眠や食事、服薬、体調管理がきちんできているかをチェックします。

それ以外にも、集中力や持続力を向上することも含まれます。

これが出来ていないと、自分でも気づかないまま体調が悪化し、再休職や再発に至るリスクがあります。復職後も安定して働き続けるための基礎として、とても重要な項目です。

Psycho(心理的機能)

認知行動パターンとは、何かが起こった場合(出来事)、どういう考え(認知)や感情をもち、どう対処するか(行動)のパターンです。考え方の癖と言ってもいいでしょう。その人らしさともいえます。

自分の思考の癖や特徴を把握することで、就労後の働き方に活かしていくようにしましょう。

Social(社会的機能)

仕事を遂行するうえでは他者とのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションの相手は、同僚に限らず、先輩、上司、クライアントさまざまです。

相手を不快にさせてしまうようなコミュニケーションを取ることはもちろん避けたいですが、同時に、相手の顔色を伺いすぎてしまい意見を言えない状況や、必要な情報を聞き漏らしてしまう状況も避けなければ、業務の遂行に影響がでてしまいます。

業務遂行に影響が出てしまうと、それが引き金となりストレスを蓄積、結果的に再休職となってしまう方もいらっしゃいます。

Vocational(職業的機能)

最後は、業務遂行に必要なスキルの学習や問題解決思考についてです。組織の中で働くと、業務のスケジュールや進捗をメンバーに共有し、チームワーク良く効率的に業務を進める必要があります。

ただ、どこまで共有するべきか、何を相談するべきか判断ができず、どうしていいのか分からなくなり、ストレスを感じてしまう方が多いです。

報連相(報告・連絡・相談)についてしっかり学習し、チーム内でスムーズに業務が遂行できるよう準備をすすめていきましょう。

復職準備性の向上にはリワーク施設を利用しよう

これまでの項目をみていくと、復職準備性は自分自身でも高められる気がします。
確かに主治医の診断のもと、ある程度生活リズムが整い、仕事ができるという自信がついてくれば問題ないのですが、どこか不安な点がある場合は専門の支援の利用をおすすめします。

医療機関や就労移行支援事業所、障害者職業センターが行っているリワークプログラムは、復職準備性を高めるためのプログラムが豊富に用意されており、スムーズな復職へ向けてサポートしてくれます。
評価シートもスタッフと共に作成することができます。
生活習慣について細かく学習できる施設もあるので、色々と調べてみるといいでしょう。

例えば「ニューロリワーク」が行っているリワークプログラムを例に挙げますと、大きく4つにプログラムが分かれます。

  • 土台となる日常生活・健康管理
  • 仕事に必要なスキルや知識の学習
  • 就職・復職に向けたサポート
  • 復職後の定着支援

他にも施設ごとに提供されるプログラム内容は異なり、それぞれ特色があります。リワーク施設で提供されるプログラムについては「リワークプログラムの内容は?|各施設ごとの違いや特徴を徹底解説」の記事をご覧ください。

どこのリワーク施設も、基本的にはステップを踏んで復職に向けたサポートをしてくれます。見学や体験実習をふまえて、自分に合ったリワーク施設を見つけていきましょう。

3.まとめ

今回は復職準備性について説明しました。復職準備性を高める事によって、復職後の再休職の可能性が大きく下がります。

復職準備性は自分自身で高めていくことも可能ですが、一人では自身がない方やスムーズな向上を希望される方はリワーク施設の利用を検討しましょう。(専門スタッフとともに休職からの復職を目指すなら → ニューロリワークの見学予約

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監修者

石上友梨 (臨床心理士)

大学・大学院と心理学を学び警視庁に入庁。
5万人の職員のメンタルヘルスを管理し、カウンセリングや心理検査、メンタルヘルス講義、拳銃選手のメンタルトレーニングなどを実施。
現在はフリーランスとして心理学に関するライター活動も含めて幅広く活動中。
Webサイト:https://cbt-yoga.com/

【参考文献・参考サイト】

http://www.utsu-rework.org/info/no15_02.pdf
書籍「復職支援ハンドブック」(著者:中村美奈子)
(写真素材:PIXTA、photoAC)