就労移行支援事業所のリワークプログラムについて
メンタルヘルスの不調が原因となり休職している方が復職を円滑に進めるため、リワークというプログラムがあります。リワークは主に、医療機関、障害者職業センター、就労移行支援事業所などで提供されていますが、それぞれの施設ごとに特徴があります。今回は就労移行支援事業所が行っているリワークプログラムの内容や特徴、他の施設との違いについて詳しくご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所とは就労を希望している障害のある人に対して、仕事を進める上で必要な技能や対人関係のスキル、日常生活を支えるための健康管理などの職業準備性を高め、就職や就労後の定着を支援するサービスです。障害者総合支援法に定められた『指定障害福祉サービス』になります。
平成29年3月に発表された厚生労働省の見解により、休職中で復職を目指す方も就労移行支援事業所を利用できるようになりました。
まだ、全ての就労移行支援事業所がリワークプログラムを提供しているわけではありませんが、リワークを提供する事業所は増えてきています。
気になる就労移行支援事業所がありましたらリワークプログラムを提供しているかどうか確認してみることをおすすめします。
2.就労移行支援事業所のリワークプログラムについて
就労移行支援事業所で行われるリワークプログラムの内容は?
就労移行支援事業所で提供されているリワークプログラムの内容は事業所ごとに特徴があります。仕事に必要なスキルの学習がメインとなる事業所や、働く上で必要な健康管理から学べる事業所まで様々です。
今回は、ニューロリワークで実施しているリワークプログラムの内容についてご紹介します。
ニューロリワークのリワークプログラムは大まかには以下の4つに分類されます。
・健康管理、生活習慣の見直し
働き続けるための土台となる健康管理能力を身に付けていきます。具体的には、睡眠や食事についての知識レクチャー、ヨガやウォーキングなど基礎的な体力作りを目的とした運動系プログラム、ストレスケアのマインドフルネスなどを行い、生活習慣を見直します。
その他、認知行動療法に基づくプログラムなどがあります。
・仕事に必要なスキルの学習
プログラミングやExcel、WordなどのPCスキルの学習、SST・JSTトレーニングなどのコミュニケーションスキルの学習など、仕事を進めるために必要な就労スキルを身に付けていきます。
他にも段取りの立て方、生産性を高めるためのスキルの学習等も行います。
・復職・転職に向けたサポート
復職、場合によっては転職へ向けての具体的なサポートを行います。
人事・主治医と連携し、復職後の職場環境や労働条件について擦り合わせを行います。当初は復職を希望していましたが、リワークに通い休職理由を整理していく中で、復職ではなく転職を希望される方もいらっしゃいます。
転職にも対応できるのは、就労移行支援事業所のリワークならではです。
・復職後の定着支援
復職後も半年間は定期的に面談を行ない、現在の状況を確認していきます。もし、職場との調整が必要な場合は間に入って調整していきます。
以上がニューロリワークで提供しているリワークプログラムの内容です。
「仕事に必要なスキルの学習」「復職・転職に向けたサポート」「復職後の定着支援」などはほとんどの就労移行支援事業所で提供されていますが、「健康管理・生活習慣の見直し」は提供していない事業所もあります。
また、スキル学習についても、事業所によってプログラム数や難易度のばらつきがあります。就労移行支援事業所のリワーク支援を利用する場合は、どういったプログラムが提供されているのか、事前に確認をしてみるといいでしょう。
就労移行支援事業所のリワークプログラムのメリット・デメリット
次に、医療機関や障害者職業センターと比較し、就労移行支援事業所で提供されるリワークプログラムのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリットの一つ目は、仕事に必要なスキルを学べる点にあります。医療機関のリワークプログラムは主に症状の改善がメインとなっており、ビジネススキルなどの学習は多くは提供されていません。
二つ目は、転職も視野に入れる事が可能です。復職か転職か迷っている方は、転職へ向けた支援も行っている就労移行支援事業所を選択するのが良いでしょう。
三つ目は、定着支援を行っている事です。就労移行支援事業所では、就労後も半年間は定期的に面談を行い定着をサポートしていきます。
また、一部の事業所ではランチや交通費が支給されるため、通所にかかる自己負担が少ないのも利点です。
一方、前年度の収入によっては利用料がかかる点はデメリットになるでしょう。
また、医療機関と比べて、認知行動療法に基づくプログラムの導入を行っている事業所が少ない点もデメリットにあげられます。
3.就労移行支援事業所のリワークを利用するまでの流れや手続き
利用するまでの流れ
気になる事業所がありましたら、まずは連絡をして見学をします。その後、数日程度の体験実習を行ないます。その上で利用したい場合はスタッフに申し出、利用手続きに移ります。
利用手続きにあたり、障害福祉サービス受給者証の申請・発行を行ないます。
受給者証の発行には障害者手帳または主治医の診断書・意見書が必要です。
受給者証の申請に関しては市区町村の障害福祉課で申請が可能です。大体発行までに1ヶ月程度かかるようです。
受給者証の発行手続きや市区町村とのやり取りは、スタッフと一緒に進めるケースがほとんどです。不安な点があればスタッフに相談してみましょう。
利用対象者や利用期限は?
医療機関や障害者職業センターのリワーク施設は、うつ病などで休職中の方のみが対象となりますが、就労移行支援事業所では失業中の方や、離職中で転職を考えている方なども対象になります。
ただし、年齢は18~65歳までと制限がございますのでご注意ください。
利用期限は基本的には2年間を上限としています。詳しい利用期限については「リワーク施設に通う期間や利用までにかかる日数を施設ごとに解説」のページをご覧ください。
利用にかかる費用はどのくらい?
就労移行支援事業所のリワーク費用は、前年度の世帯の収入状況により自己負担額の上限が異なります。
世帯収入額によっては、自己負担限度額は0円となり、無料でリワークを利用されている方もいらっしゃいます。
●1ヶ月の自己負担額上限額
前年度の世帯年収 | 1ヶ月の自己負担限度額 |
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
グループホーム利用者(※2)を除く所得割16万円(※3)未満の市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
(※1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯
(※2)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者の自己負担限度額は37,200円
(※3)収入がおおむね600万円以下の世帯が対象
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html
一部の市区町村や就労移行支援事業所では、交通費やランチの支給など、独自の助成を行っています。利用を検討している就労移行支援事業所や自治体の福祉窓口に問い合わせてみましょう。
就労移行支援事業所を利用する際は自分の住んでいる区や市、都道府県を超えての利用も可能です。各事業所の助成制度を確認したうえで利用先を検討してみましょう。
4.就労移行支援事業所のリワークを選ぶ時のポイント
就労移行支援事業所のリワークプログラムは、事業所によりそれぞれ特色があります。選択肢がある分、逆に意識すべきポイントも出てきます。
まず意識すべき点は、プログラム内容です。
就労スキルの学習に力を入れている事業所、生活習慣の改善に力を入れている事業所など、プログラムの特徴は様々です。復職を目指す上で身に付けたいスキルが何か整理したうえで、自分にあった事業所を選択しましょう。
二点目は、通いやすさです。多くの方は毎日のように通うことになります。通所にかかる時間や費用、スタッフや利用者の雰囲気など、毎日通ううえで支障となる点はないか、しっかり検討しておきましょう。
その他、医療期間や職業センターのリワーク施設も含めて検討する場合は、「リワークプログラムの内容は?|各施設ごとの違いや特徴を徹底解説」の記事をご覧ください。
【参考文献・参考サイト】
https://www.nisseikyo.or.jp/images/news/gyousei/2017/170410/170410-01.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html
(写真素材:PIXTA、photoAC)
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