「うつ病になっても休職しないほうがいい?」
休職のメリット・デメリット、対処法を考える
うつ病を患ったとき、「休職しない方が良いかもしれない」と考えてしまう方も多いかもしれません。休職というと、場合によってはネガティブなイメージを持たれることもあります。同僚や上司の目が気になり、つい無理をしてしまうかもしれませんが、大切なのはご自身の心や身体の健康です。
今回は、「うつ病になっても休職しないほうがいい?」と考えてしまう方に向けて、休職のメリットやデメリット、そして休職期間中の過ごし方についてご紹介します。休職のメリットやデメリットを知り、ご自身にとって最も良い選択肢を選びましょう。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
うつ病による休職のメリットとデメリット
業務の負担が大きくなったことが原因で、うつ病を発症させてしまうというケースが多くみられます。うつ病を改善させるためには休養と治療が効果的ですが、まじめな人ほど「自分の甘えが原因」「気持ちの問題」「しっかりしなければ」と、無理をしてしまいがちです。また、“うつ病による休職”という事実が、自身の評価やキャリアに傷をつけてしまうのではないかと不安になるかもしれません。しかし無理をして業務を続けると、かえって症状を悪化させる可能性もあります。
休職に抵抗がある方は、休職によるデメリットだけでなく、メリットも押さえておくことが大切です。休職のメリットが分かれば「休職しないほうがいい」という誤った考えから抜け出し、日々の負担から解放される一歩となります。
休職のデメリット
多くの方が休職のデメリットのひとつとして考えるのは、上述したような自身の評価やキャリアへの影響です。また、それ以外に、給与や所得への影響もデメリットのひとつとして考えられます。
企業(上司)によっては、休職をネガティブなものと捉えることもあるかもしれません。しかし、そうした周囲の目を気にしすぎるあまりに、不調を改善させることなく就業を続けても、高いパフォーマンスを発揮するのは困難といえます。そうであれば、一定期間の休職を経て症状を改善させてから職務に戻るほうが、長期的な観点で考えれば評価やキャリアにとって望ましいといえるでしょう。仮に、一度の休職でその後の全ての評価やキャリアに悪影響が及ぶような企業や上司であれば、休職後に転職するという選択肢を視野に入れてもよいかもしれません。
休職のもうひとつのデメリットとして考えられる給与や所得の減少は、給付や手当てを受け取ることで緩和することができます。
休職の原因が“業務中もしくは通勤途中のケガや病気にある場合”は、「休業補償給付」を受け取ることができます。また、原因が“業務中もしくは通勤途中のケガや病気にない場合”は、「傷病手当金」を受け取れるケースがあります。いずれの給付・手当も支給に条件があるため、受給資格の有無を会社や役所に確認する必要があります。
休職のメリット
休職のメリットとして挙げられるのは、「治療に専念できる」「負担の多い日常(業務)から解放される」「好きなことに時間を費やせる」といった点です。
うつ症状がひどいにもかかわらず業務を続けると、さまざまな悪影響が生じる可能性があります。PCの操作ミスや顧客とのコミュニケーションミス、さらには同僚や上司との連携ミスも起きがちです。こうなると、ミスをした自身を責め、信頼を回復しようとすることでいっそう負担が増し、結果的に再びミスをするという悪循環に陥るケースも考えられます。
休職のメリットは、まさにこうした悪循環を断つことにあります。業務から離れて治療に専念することで、症状を改善させることができます。
「休職せずに治療する」という第三の選択肢も
うつ病を患った場合には治療を受けることが大切ですが、もしかすると「休職できない」という方もいるかもしれません。一部のクリニックでは、そういった方に向けて休職することなく通院しながら治療ができるサービスを提供しています。休職による不安がある方にとっては、キャリアを中断することなく治療を受けられるというメリットがあります。なお、こうした治療は自由診療の場合もあるため、事前に費用面を確認しておくことも大切です。
まずは相談する
休職を考えるほどの大きな負担がかかっている方であっても、「休職しないほうがいいかも」と独りで深く考えてしまいがちです。たとえば、地方から都会に上京し、一人暮らしをしている場合のように、相談できる相手が少なく、学生時代の友人や知人との交流も少ない方であれば、つい自分だけで悩みを抱え込んでしまうかもしれません。また、厳しい就職活動を勝ち抜いてやっとの思いで入社した企業であれば、多少の無理をしてでも仕事に打ち込みたいと考えるかもしれません。
休職を考えるほど心身に不調をきたしているような方は、誰かに相談することが大切です。同僚や先輩、上司に相談することに抵抗がある場合は、医師やカウンセラーに相談しましょう。(休職からの復職を目指すリワーク施設の資料請求はコチラから)
休職中の過ごし方
大切なのは、適切な治療を受けること
休職期間中は、有意義に過ごすために適切な治療を受けることが大切です。治療が適切でない場合は、復職後に再び不調をきたすということもあります。たとえば、うつ病で病気休暇を取った人の約半数が、復職後に再び病気休暇を取得するというデータもあります。このことからも、休職時は「休む」ということだけでなく、「適切な治療を受ける」ということがいかに重要であるかが分かります。
復職を支援する機関
休職期間は、「休養のための期間」と「復職のための期間」に大別することができます。休養のための期間では、それまでの業務から離れ、自宅でゆっくりと過ごすための期間です。これに対して復職のための期間では、復職を目指したリワークプログラムなどを受け、課題や問題点を改善していくことが大切です。
いわゆる就労支援機関では、うつ病などの精神疾患などが原因で休職・離職された方を対象に、福祉サービスの一環としてリワークプログラムを提供しています。障害者総合支援法に基づいて設置されている機関・事業所であれば、医師の診断書と役所が発行するサービス受給者証があれば利用が可能です。費用は前年度の所得に応じて定まり、前年度の所得額によっては0円で利用できることもあります。「参考:リワークを利用するために費用はどのくらいかかる?|施設ごとに徹底解説!」
支援機関では、復職に関して専門知識や経験をもったカウンセラーや支援員が日々の体調の管理や復職プログラムの提供、復職に関する相談などをおこなっています。自宅で一人で復職活動をおこなうよりも、効果的・効率的に復職の準備を進めていくことができます。
リワークプログラムで、苦手を克服する
リワーク施設のひとつである「ニューロリワーク」でも、復職を目指したさまざまなプログラムを提供しています。たとえば、自己管理能力を養うプログラムの「ポジティブな表現を使用しよう」では、ポジティブとは何か、表現が相手に与える印象はどのようなものか、人の印象はどのようにして決まるのかといった点について、講義と個別ワークを通じて学びます。
このプログラムの目的は、ポジティブな表現を使用することで自分や相手がどう感じるかを実践を通して身に付けるという点にあります。また、ポジティブな表現や態度を用いた場合の影響などについても理解を深めます。
日常生活の中で、「初めに受けた印象がずっと残ってしまう」「他の一面を見ても、その人のイメージはなかなか変わらない」という経験をしたことがある方も多いかもしれません。社会心理学の実験では、最初に得られる情報ほど強い印象を残すことが明らかになっています。これは、「初頭効果」と呼ばれる現象です。初頭効果によって形成された印象は、2ヶ月を経ても変わらないという研究結果もあります。そう考えると、相手に対してポジティブな印象を与えることが社会生活の中でいかに重要であるかが分かります。
プログラムの中では、ケーススタディ等を通じてポジティブな表現で伝えるスキルを身に付けます。
個別のワークでは、「私は飽きっぽい性格です」「私は落ち込みやすいところがあります」「私は優柔不断です」などの表現を、各々でポジティブに変化させることにも取り組みます。
こうしたワークを通じて、“同じ行動や考えであっても対外的な印象を良くするスキル”を身に付けていきます。周囲の人が受ける印象が変われば評価や態度も変わり、人間関係がより円滑になり、生産性も高くなることが期待できます。
表現や態度をポジティブな内容に変えることで、相手に与える印象は変化します。ネガティブな表現が多いと自分自身の気持ちも落ち込みやすくなってしまうため、ポジティブな表現を多用することで、自身も相手も明るい気持ちで過ごすことができます。
まとめ
うつ病を患うと、まじめな方ほど「休職しないほうがいいかもしれない」と悩みがちです。うつ病は、適切な治療で改善が可能です。長い目で見れば、休職期間を利用して症状を改善させることが、今後の自身のキャリアにとっての良い結果になるといえます。
不安や負担を抱えたまま業務に従事するのではなく、夜はゆっくりと眠り、朝はすっきりと目覚めることができるように、休職という選択肢を考えましょう。
適切なプログラムを受けることで、復職後の業務負担が和らぎ、周囲との円滑なコミュニケーションが容易になるかもしれません。健康な心と身体で勤務することで業務パフォーマンスも向上し、上司の評価も高まることが期待できます。
リワーク施設であるニューロリワークでは、復職を目指す方に向けたリワークプログラムの見学を承っています。利用を前提としてものではなく、お気軽にご見学・ご相談いただけます。
休職期間は、キャリアの停止と考えるのではなく、より良いステップへのきっかけと考えることが大切です。リワークプログラムを受けることで不調を改善させ、復帰後に活躍いただけることを心から願っております。(休職期間を有意義に過ごすためのリワーク施設の資料請求はコチラから)
記事監修者
古川美佳
保健師/産業カウンセラー
群馬大学医学部保健学科卒。群馬県生まれ。
家族の健康問題に幼少期より関わってきた経験から予防医学に興味を持つ。
医療機関での特定健診・特定保健指導立ち上げ等の経験を活かし、NTT西日本㈱健康管理センター、㈱タニタヘルスリンクにて企業・自治体における疾病予防からメンタル支援まで幅広く健康づくりプロジェクトに携わり、スキル向上に努める。自身の心身バランスを崩し、家族、治療者、周囲のサポートを受けた経験から、自分と人生について見つめ直す。
出産を機に、子育て女性を支援する不動産ベンチャー企業で企画営業業務に従事する中で、働く人のサポートをしたいという気持ちが強くなり、現職に至る。
理念は「他者貢献」。
【参考文献・参考サイト】
・新宿ストレスクリニック
・「「うつ病」と診断されたが休職したくない!~新宿ストレスクリニックなら休職せずに通院治療が可能~」
・順天堂大学「順天堂人のためのメンタルヘルス講座」
・クエスト リーガル ラボ「【保存版】収入の心配はない?うつ病で休職する全手順と休職後のこと」
(写真素材:PIXTA・photoAC)
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