復職の適切なタイミングとは?必要なステップと準備ポイントを解説
うつ病や適応障害などが原因で休職された方にとって、「いつ頃に復職をするべきか?」という疑問や悩みは尽きないものかもしれません。「症状が完全に落ち着いた」というわけではないものの、少しずつ心や体の健康状態が改善して日常生活にも余裕が出てきたと感じると、次のステップとして復職を意識するようになります。
とはいえ、いざ復職を目指して動きはじめるとなると、どのような基準で復職の時期を判断すればよいのかと不安になることもあります。休養が不十分で復職が早すぎる場合、再び体調の悪化を引き起こし、長期的に見れば逆効果になってしまうということもあります。
ここでは、これまでに多くの方々の復職を支援し、実現してきたニューロリワークの知見を基に、復職を考える上で重要となる「判断基準」や「ステップ」、さらには「復職準備のためのポイント」について詳しくみていきます。復職の時期をどのように判断すればよいか、また、そのためにはどのような準備を整えればよいのかといったポイントを押さえることで、安心して復職への一歩を踏み出せるようになります。
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復職できる基準は?タイミングはいつが適切?
長期間の休職からの復職を考える際、「どのタイミングで復職すべきか?」という点は多くの方が抱える悩みのひとつです。上述したように、復職が早すぎると再び体調を崩して休職に戻ることになるというケースもあります。また、復職が遅すぎると職場に戻ることに関する心理的な負担が大きくなることもあります。こうした観点から、復職のタイミングを見極めることが重要といえます。
復職のタイミングを考える上での主な基準としては、以下の点が挙げられます。
1.体調が安定し、日常生活がスムーズに過ごせるようになっているか
復職を考える目安として、まずは「日常生活を無理なく送れるかどうか」がポイントになります。休職中の療養や治療、またはリハビリによって心や体の状態が少しずつ回復し、起床や就寝の時間が一定になり、そして日常生活における小さな作業を継続的にこなせるようになれば、復職への準備段階に入っていると考えて問題ありません。特に平日の朝にきちんと起きて規則正しい生活リズムを保てるかどうかは、大きな目安のひとつです。
2.適切なサポートや医師の診断を受けているか
復職の判断は、本人の意志だけでなく医師の診断や専門家のサポートを基に行うことが重要です。復職支援プログラム(リワークプログラム)などを通して復職に向けた準備を進めつつ、主治医から「復職しても問題ない」という診断が出ていることなどがひとつの基準となります。もしも医師から「回復に向かっているが、あと1〜2ヶ月程度の休養を続けた方が良い」などの指摘がある場合は、その意見に従うことが再発防止につながります。
3.仕事に対する意欲が回復しているか
復職のタイミングを考える他の基準として、「仕事に対する意欲の回復」が挙げられます。休職中は心身の負担を和らげることを最優先に考えるため、一時的に仕事への意欲が低下することも考えられます。そんな中、心や体の健康状態が回復し、「再び仕事をしたい」という前向きな気持ちが芽生え始めたときは、復職の準備が整いつつあるサインと捉えることができます。
4.ある程度(3〜6ヶ月以上)の休養期間が経過しているか
一般的に、精神的な不調などで休職した場合は目安として3〜6ヶ月以上の休養期間が推奨されています。必要な休養期間は個人差が大きく回復の速度も人それぞれですが、短期間での復職にはリスクがあります。半年以上の休養を取っても改善が見られない場合には、休職期間の過ごし方の見直しが必要になることもあります。
5.スモールステップでの職場復帰の準備ができているか
復職のタイミングが整ったとしても、最初からフルタイムでの勤務は負荷が大きいため、業務量を控えるというのが一般的です。そのため、まずは短時間勤務や負担の少ない業務から始めて体調や業務量に慣れていく「段階的な復職」が推奨されています。たとえば、「週に数日だけ勤務する」「毎日午前中のみの勤務から開始する」といった方法で様子をみながら無理のない復職を目指すのがポイントです。
(関連記事:休職からの復職が怖い方へ。復帰後の定着率が3.5倍といわれるリワークプログラム)
休職から復職までのステップとは
休職から復職に至るプロセスでは、単に職場に戻ることだけを考えるのではなく、心身の回復状況に合わせて段階的なステップを踏むことが大切です。急な復職は再休職リスクを高めるため、計画的なアプローチが重要になります。以下では、一般的な復職までのステップについてみていきます。
1.休職期間中の治療と、心身の回復
休職の初期段階では、心身の負担を取り除き、十分な休息をとることが最優先です。最初の段階から焦って復職を目指そうとすると心身への負担が増え、症状の悪化や再発のリスクが高まります。この段階では医師の診察やカウンセリングを定期的に受け、必要な治療やリハビリに専念して少しずつ体調を整えていくことが大切です。規則正しい生活リズムを取り戻し、日常生活での簡単な行動ができるようになることを目指しましょう。
2.主治医や産業医との相談と、復職判断
リワークプログラムや治療の成果がみられるようになると、復職の具体的なタイミングを検討します。この段階では、主治医や産業医と相談し、「職場に戻っても問題ない状態かどうか」を慎重に判断します。医師からの「復職可能」の診断を受けることは、復職を進めるかどうかの大きな判断基準となります。医師と協力しながら、自身の状態に合った復職計画を立てるようにしましょう。
3.復職前の職場との調整
復職の許可が得られると、職場との調整を行います。職場の上司や人事担当者と話し合い、復職初期の勤務形態や業務内容について事前に確認しましょう。復職直後は、短時間勤務や負担の少ない業務から始めるといった「段階的な復職」から始めるケースが多くみられます。
こうした段階的な勤務により、仕事のリズムに少しずつ慣れていき、職場環境に対するストレスを軽減させることができます。また、同僚や職場のサポート体制についても確認し、復職後のフォローアップが得られるようにすることが大切です。
(関連記事:復職面談で産業医に聞かれることは?押さえておきたい大切なポイントについて)
復職する前に準備すること
休職からの復職には、心身の回復だけでなく職場復帰に向けた準備が欠かせません。事前に十分な準備を行うことで、スムーズな復職が可能になり、復職後の再休職リスクを軽減することができます。以下では、復職前に行うべき主な準備についてみていきます。
1.規則正しい生活リズムの確立
復職に向けた最初の準備として、「規則正しい生活リズム」を実現することが大切です。休職中は就業していたときと比べて就寝や起床の時間に融通が利きやすくなりますが、復職を考える上では職場での勤務時間に合わせたリズムに合わせる必要があります。毎朝決まった時間に起床し、昼間には適度に体を動かし、夜はしっかりと睡眠をとるといった生活習慣を身につけることで、体調や集中力の回復を促していくことが大切です。特に職場復帰の数週間前には勤務時間に合わせたリズムに慣れておくことで、復職後の負担軽減につながります。
2.体調管理とストレス対策の見直し
復職を成功させるためには、体調管理やストレス対策を見直しておくことも欠かせません。職場復帰後も健康を維持するために、休職中に身につけたセルフケアの方法を維持し、習慣化しておきましょう。ストレッチや軽い運動、深呼吸や瞑想など、心身のリフレッシュができる習慣を取り入れることで、仕事によるストレスを和らげることができます。また、栄養バランスの取れた食事や規則正しい睡眠も重要です。
こうした取り組みを継続することで、復職後に自分の体調を安定して管理することが可能となり、再度の不調を未然に防ぐこともできます。
3.主治医や産業医との相談と復職プランの作成
復職前には、主治医や産業医との相談も大切な準備のひとつです。主治医からの「復職可能」の診断を受けた後は、会社の人事担当者や上司と話し合い、復職のスケジュールや勤務形態について計画を立てましょう。上述したようにすぐにフルタイム勤務に戻るのではなく、まずは短時間勤務から始めて段階的に業務を増やす「段階的な復職プラン」が推奨されます。これにより、体調や業務への負荷を少しずつ調整しながら復職が進められるため、復職後の過度な負担を抑えることができます。
(関連記事:うつ病でリワークに取り組むメリットは?具体的なプログラム例・費用もご紹介)
復職を円滑に進めるためのポイント
復職後に円滑に職場に適応し、再休職を防ぐためには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。特に休職期間が長かった方にとっては、復職が大きな心身の負担になることもあるため、焦らず慎重に進めることが重要です。
以下では、復職を円滑に進めるためのポイントについてみていきます。
1.職場とのコミュニケーションと、復職後のフォローアップ体制の確認
復職前には、職場とのコミュニケーションをしっかりと取っておくことが大切です。人事担当者や上司と話し合い、復職後の業務内容や勤務形態に加えて、体調が再び不調になった場合の対応についても確認しておきましょう。また、同僚や職場全体がサポート体制を整えてくれるかどうかも事前に決めておくことで、復職後に必要な配慮を得ることができます。
2.メンタルヘルスのセルフケアを継続する
復職後も心身の健康を維持するために、セルフケアを習慣化しておくことが大切です。特に、メンタルのケアとしてストレス管理やリラックスできる時間の確保を意識するようにしましょう。私生活で趣味の時間などを積極的に取り入れ、適度なリフレッシュを心がけることで仕事の負荷を和らげることができます。
復職後は業務の負荷や人間関係の緊張からストレスが増えることもあるため、必要に応じて産業医やカウンセラーと相談し、自分の状態を確認しながら進めるとよいでしょう。
3.周囲のサポートを活用しながら柔軟に対応する
復職に際しては、周囲のサポートを積極的に活用し、柔軟に対応することが成功のカギとなります。職場でのサポート体制を整えるため、必要に応じて上司や同僚、産業医と話し合い支援を得るようにしましょう。仕事に取り組む中で体調に変化があった場合や新たな不安が生じた際には、適切に相談し、勤務時間や業務内容の調整を依頼することが大切です。
(関連記事:適応障害で休職してから復職までの期間は何ヶ月?事例もあわせてご紹介)
復職に向けて準備するならリワークの活用がおすすめ
心身の不調から休職に至ってしまった場合は、復職を目指す上で「リワークプログラム」を活用することが効果的です。リワークプログラムでは、日々の健康管理をはじめ、ビジネススキルに関する座学を受けたり簡単な作業などを行いながら、職場での業務に対する集中力や持続力を取り戻す訓練を行います。また、他の利用者とコミュニケーションを取って日常生活における対人スキルも身につけることができるため、職場復帰に必要な力を養うことができます。こうしたリワークプログラムを通して少しずつ働くことに慣れていくことで、復職後の不安や負担の軽減を目指します。
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