休職中の住民税はなぜ払う?社会保険料の支払い・免除制度も解説
休職中でも住民税や社会保険料の支払い義務があるのをご存じですか?本記事では、その仕組みと発生する理由をわかりやすく解説します。さらに、減免や猶予といった公的制度を紹介し、経済的負担を軽減する方法を提示します。病気や怪我で休職中、あるいは休職を検討している会社員の方が、不安を整理して安心して療養に専念できる内容です。
休職中に住民税や社会保険料の支払いが必要になる理由

病気やケガで休職すると給与の支払いが止まるため、「なぜ住民税や社会保険料を払わなければならないのか」という疑問を抱く方は少なくありません。休職中であっても、住民税と社会保険料は原則として支払い義務が継続します。住民税は前年の所得に基づいて計算される仕組みのため、現在無給であっても納税義務が発生するのです。
一方で傷病手当金は非課税所得として扱われるため、受給しても翌年の住民税額に影響することはありません。しかし社会保険料については、休職中でも免除されることはなく、通常どおり従業員負担分と会社負担分の保険料が発生し続けます。以下で仕組みや原則について解説します。
住民税が「前年の所得」を基準に課税される仕組み
住民税は「前年所得課税主義」という仕組みで運用されているため、現在休職中で収入がなくても、前年に所得があれば支払い義務が発生します。
たとえば2024年に働いて所得があり、2025年から休職した場合、2025年6月から支払う住民税は2024年の所得に対して課税されます。つまり「去年稼いだ分の税金を今年支払う」という仕組みなのです。
納税通知書は毎年5月から6月頃に届きます。会社に在籍していれば会社を通じて「特別徴収」の通知書を受け取り、退職している場合は市区町村から直接「普通徴収」の通知書が自宅に郵送されます。休職中の方は、ご自身の雇用状況に応じてどちらの方法で通知が来るかを確認しておくことが大切です。
社会保険料が原則として免除されない原則
休職中であっても、会社に在籍している限りは健康保険・厚生年金保険・介護保険(40歳以上の場合)の被保険者資格が継続されるため、これらの保険料を支払い続ける必要があります。
保険料は休職前の給与を基に算出された「標準報酬月額」に基づいて決定されるため、現在無給であっても休職前と同額の保険料が発生します。健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料は、休職前と変わらない金額を負担することになるのです。
会社と従業員の負担割合も変わらないため、自身が負担すべき部分(通常は保険料の半額)は引き続き支払う必要があります。収入が減っているにもかかわらず同額の負担が続くことに戸惑いを感じるかもしれませんが、制度上そのように定められています。
所得税や雇用保険料など発生しない費用との違い
休職中でも支払いが必要な費用がある一方で、所得税と雇用保険料は給与が支払われていなければ発生しません。これらは毎月の給与額に対して課税・計算されるためです。
休職による無給状態での各種保険料・税金の発生について、下記の表にまとめました。
| 費用の種類 | 発生の有無 | 理由 | |
| 社会保険料 | 健康保険料 | あり | 被保険者資格が継続するため |
| 厚生年金保険料 | あり | 被保険者資格が継続するため | |
| 介護保険料(40歳以上) | あり | 被保険者資格が継続するため | |
| 雇用保険料 | なし | 支払われる給与がないため | |
| 労災保険料 | 会社が全額負担 | 従業員負担はもともとないため | |
| 税金 | 住民税 | あり | 前年の所得に対して課税されるため |
| 所得税 | なし | 支払われる給与がないため | |
この表を見ると、休職中でも意外に多くの費用が発生することがわかります。経済的な負担を感じるかもしれませんが、まずはどの費用が発生するのかを正しく把握することが大切です。
休職中の社会保険料・住民税における具体的な支払い手続き

休職により給与が支給されなくなると、これまで給与から自動的に差し引かれていた社会保険料や住民税を、別の方法で支払う必要があります。
収入が大幅に減少している状況で、どのように支払いを行えばよいのか不安に感じる方も多いかもしれません。方法としては、会社への直接振込、復職後の給与からの精算、普通徴収への切り替えなど、いくつかの選択肢があります。
また傷病手当金を受給している場合は、その給付金から直接差し引いてもらえるケースもあります。まずは勤務先の人事担当者に相談し、自身の状況に最も適した支払い方法を確認することが大切です。
社会保険料の一般的な徴収方法
休職中の社会保険料については、会社が会社の判断で従業員の負担分を一旦立て替えて納付し、後日従業員に請求するという方法が一般的に取られています。具体的な支払い方法は、主に以下の2つのパターンがあります。
- 毎月、会社の指定口座へ振り込む
- 復職後に給与から天引き(※会社による代理受領)、または現金で精算する
毎月振り込む方法は月々の負担は軽くなりますが、手続きの手間がかかります。一方、復職後にまとめて精算(※自治体と会社の調整が必要です)する場合の手続きは簡単ですが、長期休職の場合は未払い分が多額となり、復職時の経済的負担が大きくなってしまいます。
住民税の一般的な徴収方法
住民税の支払い方法としては、主に以下の3つの選択肢があります。
- 会社の銀行口座へ振り込む(社会保険料と同様)
- 復職後に給与または現金で徴収する
- 従業員自身で納付する「普通徴収」に切り替える
長期休職の場合は、会社と従業員双方の負担軽減や徴収漏れ防止の観点から、「普通徴収」への切り替えが一般的に行われています。
普通徴収に切り替えた場合、市区町村から自宅に納付書が郵送され、その納付書を使って金融機関やコンビニエンスストアに行き自分で納付する必要があります。手続きの手間はかかりますが、支払いタイミングをコントロールしやすくなります。
傷病手当金からの天引きは可能か
傷病手当金や休業補償給付を受給している場合、これらの給付金から社会保険料や住民税を天引き(相殺)してもらうことが可能です。なお、厳密にいえば傷病手当金から税金や保険料が自動的に天引きされることはありません。健保組合によっては会社による代理受領を認める場合もあるため、勤務先や加入先に確認が必要となります。
原則として、従業員本人の同意を得た上で、会社が傷病手当金を代理受領し、そこから必要な保険料や税金を差し引いて支給するという仕組みが認められています。この方法を利用すれば、別途振り込み手続きを行う必要がなくなります。
ただし、協会けんぽでは不正受給防止のため、2023年1月から手続きが厳格化されています。代理受領には別途申請が必要になる場合があるため、まずは会社の担当者に相談して、手続き方法を確認しておきましょう。
休職中の経済的負担を軽減するための公的制度

療養に専念したいと思っても、収入が減少する中で社会保険料や住民税の支払いが続くことは、大きな経済的負担となります。そのため、そのまま放置せず、利用できる可能性のある公的な救済措置について確認することが重要です。
住民税については「減免制度」や「徴収猶予制度」といった制度があり、社会保険料についても特定の条件下では免除される場合があります。ただし、これらの制度は申請が必要であり、自動的に適用されるものではありません。
支払いが困難な状況を正直に伝え、利用できる制度がないか早めに相談することで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。まずはどのような制度があるのかを知り、自身の状況に該当するものがないか確認してみましょう。
住民税の支払いを減免・猶予してもらう制度
住民税の支払いが困難な場合、「減免制度」と「徴収猶予制度」という2つの救済制度を利用できる可能性があります。
両制度の違いは以下のとおりです。
| 制度 | 減免制度 | 徴収猶予制度 |
| 概要 | 特別な事情により、税額の一部または全部が免除される | 特別な事情により、納税を一定期間(原則1年以内)待ってもらう |
| 税額への影響 | 税額自体が減る、またはゼロになる | 税額は変わらない |
| 延滞金への影響 | – | 猶予期間中の全部または一部が免除される場合がある |
申請窓口はお住まいの市区町村役場の住民税担当課です。申請には期限があるため、支払いが困難だと感じたら早めに相談することが重要です。
社会保険料の支払いが免除される特定のケース
社会保険料は原則として免除されませんが、例外的に免除となるケースがあります。
産前産後休業(産休)や育児休業(育休)の期間中は、健康保険料・厚生年金保険料が免除される制度が設けられています。これらの休業を取得する場合は、会社が健保組合や年金機構に免除申請を行うため、自身の負担はありません。
ただし、病気やケガによる私傷病休職の場合はこの免除制度の対象外となり、社会保険料の支払い義務は継続します。
経済的な不安を整理し、安心して社会復帰の準備を
休職中の経済的不安を解消するためには、制度の仕組みを正しく理解することが重要です。住民税は前年の所得に対して課税されるため現在の収入状況にかかわらず支払い義務が発生し、社会保険料も原則として免除されることはありません。しかし適切な支払い方法を選択し、困難な場合は減免制度や徴収猶予制度といった公的支援を活用することで、経済的負担を軽減できる可能性があります。
まずは会社の担当者や市区町村役場に相談し、自身の状況に最も適した対処方法を確認することが大切です。経済的な見通しを立てることは、安心して療養に専念し、その後の社会参加に向けた準備を進めるための土台となります。
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