後天性のADHDは存在する?原因や先天性の発達障害との違い・向き合い方を解説
休職や働きづらさの背景に「自分のADHDは先天的か後天的か」と悩む方は少なくありません。この記事では、後天的ADHDの誤解を解き、似た症状を引き起こす要因や見極め方を整理します。正しい理解を得ることで、専門的支援につなげ、社会復帰の一歩を踏み出したい人に役立つ内容です。
ADHDは後天的に発症しない|誤解される背景

ADHDは先天性の発達障害であり、後天的に発症するものではありません。脳の構造や働きに関わる要因が関与する生まれつきの特性で、「病気」ではなく「脳機能の特性による傾向」として捉えるのが適切です。育て方や本人の性格が原因ではなく、脳機能の違いによって生じます。
しかし、なぜ「ADHDが後天的に発症した」と誤解されることがあるのでしょうか。主な理由は以下の3点です。
- 成長過程で社会的に求められることが増え、特性が目立つようになるため
- 周囲の環境(学校や職場など)によって、もともとあった特性が強調されることがあるため
- 大人になってから初めて診断され、「最近なった」ように見えるため
これらは症状の見え方が変化したに過ぎず、後から発症したわけではありません。特性は生まれつき存在していたものの、環境の変化により認識されるようになったと理解することが重要です。
後天的にADHDのような症状を引き起こす2大要因

ADHDそのものは先天性ですが、不注意や多動・衝動性といったADHDに似た症状が、後天的な要因によって出現する可能性があります。これは本来のADHDが発症するということではなく、環境や生活習慣の変化が脳機能に影響を与え、結果として類似した症状を引き起こすと考えられています。
休職や離職からの社会参加を目指している方にとって、自身の不調がどこに起因するのかを理解することは重要です。原因を特定できれば、適切な対処法を見つけやすくなります。
ここでは、特に現代社会で多く見られる代表的な要因と考えられるものとして「過度なストレスやトラウマ」と「デジタル漬けの生活」の2つを取り上げ、それぞれがどのように注意力や集中力に影響を与えるのかを詳しく解説していきます。
過度なストレスやトラウマによる脳への影響
虐待など常に緊張を強いられる環境で育つと、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが乱れることが原因という指摘があります。これらの物質が適量でない状態が続くと、前頭前皮質の機能が低下し、結果としてADHDのような症状が現れることも示唆されています。
ただし、これはADHDそのものを発症させるわけではありません。あくまでピリピリした環境が脳内の変化を起こし、ADHDに似た症状を引き起こすということです。このような後天的な症状は、本来のADHDに使用される治療薬が効きにくい場合があることも報告されており、治療アプローチが異なる点にも注意が必要です。
デジタル漬けの生活がもたらす注意力への影響
スマートフォンやSNS、動画視聴といったデジタルメディアの頻繁な使用が、ADHDの症状の発症リスクを増加させるという研究結果が報告されています。
常に情報にさらされ、マルチタスクをこなす生活は脳に大きな負担をかけます。ソーシャルメディア、ゲーム、テキストメッセージなど複数の刺激に同時に対応することで、注意力や集中力の低下が生じやすくなります。
対策として、一部の大規模集団調査ではスマートフォンの利用時間を1日60分程度に制限することが、注意力の欠如を防ぐために有効である可能性が示されています。
先天性の特性か後天的な症状か?見極めのポイント

自身の状況を正しく理解するには、先天性のADHDと後天的なADHD様(=ADHDに似た)症状の違いを知ることが重要です。両者を見分ける主なポイントは「症状がいつからあるか」と「どのような対処法が有効か」の2つの観点です。
| 先天性のADHD | 後天的なADHD様の症状 | |
| 症状の出現時期 | 幼少期から継続して特性が見られる | 特定のライフイベントや環境の変化後に現れることが多い |
| 有効な対処法 | 薬物療法、環境調整、特性への対策(スケジュール管理など) | 原因となったストレスの除去、生活習慣の改善、カウンセリングなど |
この違いを理解することで、適切なアプローチを選択できるようになります。ただし、自己判断には限界があるため、専門家への相談を通じて客観的な評価を受けることが重要です。
症状と向き合い、社会復帰を成功させるためのステップ

ADHDのような症状を抱えながら社会復帰を目指す際は、焦って復職するのではなく、段階的に準備を進めることが重要です。無理に早く復職しようとすると、再発のリスクが高まる可能性があります。
一人で抱え込まず、専門的な支援を活用することで客観的な評価を受けながら、実践的なスキルを身につけることができます。これにより再発リスクを抑え、スムーズな復帰が可能になります。
以下では、安定した社会復帰を実現するための具体的なステップとして、専門家への相談による自己理解の深化と、リワーク施設を活用した実践的な準備方法について詳しく解説していきます。焦らずじっくりと回復に向き合うことが、結果的に成功への近道となります。
専門家への相談を通じた客観的な自己理解
まずは医師やカウンセラー、支援機関のスタッフなどの専門家に相談し、自身の状態を客観的に評価してもらうことが重要です。一人では気づけない課題や可能性も、第三者の視点から見えてくることがあります。
相談の際は、日頃から課題に感じていることや上手くいかなかったことを具体的にメモしておきましょう。これにより、より的確なアドバイスを受けることができます。
専門家との対話を通じて自分の特性や課題を正しく理解することが、適切な対策を講じるための第一歩となり、社会復帰への確実な道筋を見つけることにつながります。
リワーク施設を活用した実践的な復職準備
医師への相談と並行して、復職支援(リワーク)施設を活用することで、実践的な準備を進められます。リワーク施設では、社会復帰に必要なスキルや体力を段階的に身につけることが可能です。
具体的なプログラムとして、決まった時間に通所することによる生活リズムの改善、実際の業務を想定した模擬就労による集中力の向上、グループワークを通じたコミュニケーションスキルの習得、認知行動療法などを取り入れたストレス対処法の学習などが挙げられます。
同じような悩みを持つ仲間との交流も、孤独感の解消やモチベーション維持につながる重要な要素です。
ADHDや精神疾患が原因の休職・離職からの復職・再就職ならニューロリワークへ
ADHDは先天性の発達障害ですが、過度なストレスや虐待経験、デジタルデバイスの過剰な使用によって、後天的にADHDに似た症状が現れることがあります。重要なのは、原因が先天的であっても後天的であっても、症状によって日常生活や仕事に支障をきたしている現実に変わりはないということです。
症状の背景を理解し、適切な対処法を見つけることで、社会参加への道筋を明確にすることができます。一人で悩みを抱え込まず、医師やカウンセラーなどの専門家に相談することが、問題解決の第一歩となります。客観的な評価を受けることで、自身の状況を正しく把握し、効果的な対策を講じることが可能になります。
ニューロリワークは、ADHDを含む発達障害やうつ病などのメンタル不調のある方の復職・再就職を支援しています。専門的なプログラムを通じて段階的な準備を行うことで、これまでに多くの復職・再就職を実現していきました。復職や再就職でお悩みの方は、ぜひご見学やご相談をご検討ください。
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