うつ病で休職中の過ごし方|回復ステップ別のやること・注意点
                        うつ病で休職している期間は、心と身体の回復を図る上で大切な時間です。しかし、「何をして過ごせばいいのか」「いつから行動を始めればいいのか」と悩む方も多いかもしれません。休職中の過ごし方を工夫することで、順調な回復とスムーズな復職につながります。
本記事では、うつ病で休職中の過ごし方を【休養期】【回復期】【復職準備期】の3つのステップに分け、それぞれの時期に適した行動や注意点をわかりやすく解説します。焦らず自分のペースで過ごし、安心して復職を迎えるためのヒントとしてご活用ください。
うつ病での休職|回復ステップに合わせた期間別の過ごし方

うつ病による休職期間は、回復の段階に応じて過ごし方が変わります。休み始めの「休養期」、徐々に活動を再開する「回復期」、そして社会復帰を見据えた「復職準備期」と、それぞれの時期に適した過ごし方を理解することで、焦らず着実に復職へ向かうことができます。
【休養期】まずは心と身体を十分に休ませること
休職開始直後の休養期は、治療に専念し、心と身体のエネルギーを回復させることが最優先となります。この時期に「何もしないこと」や「眠れるだけ眠ること」に罪悪感を抱く必要はありません。1日中寝て過ごすことも、心身の回復に必要なステップです。
うつ状態のときは脳のストレス反応が過剰になり、「休んではいけない」「怠けている」といった自責感や焦りを感じやすくなることがあります。うつ病の薬の多くは、即効性がなく、効果を実感するまでに時間がかかるのが一般的です。
そのため、「休んだのに全然変わらない」と焦るような気持ちが出てくるかもしれません。どれぐらい時間が必要かは薬の種類によって異なり、個人差もありますが、早い人でも1~2週間程度は必要であると考えましょう。主治医の指示通りに服薬を続け、1~2週間に1回の頻度で定期的に通院し、状態を報告することが重要です。
【回復期】少しずつ活動を始め生活リズムを整えること
十分な休養をとり薬の効果が出てくると、少しずつ動きたい気持ちが出てきます。この回復期には、復職後の生活を意識しながら、朝決まった時間に起き、日中に活動し、夜に眠るという生活リズムを確立することが重要です。
ただし、焦りと意欲はまったく別のものですので、担当医師に確認してから無理のない活動を始めましょう。10分程度の散歩や軽い運動、部屋の片付けや掃除など短時間の家事から始めてください。体力が少ない時期ですので、散歩は10分まで、家事は30分までなど時間を区切ることが大切です。
趣味を楽しんだり、家族や親しい友人との短時間の交流を再開したりすることも大切ですが、人との交流は大きなストレスが職場の最寄り駅まで1週間ほど通い、負荷の発生する可能性もありますので、近しい方から無理のないペースで徐々に広げていきましょう。
【復職準備期】復職に向けた具体的な準備を行うこと
体力や集中力が回復してきた復職準備期には、社会復帰を想定したトレーニングを行いましょう。生活リズムを整え、復職後の勤務に近い環境で過ごす練習として、図書館など自宅以外の場所で日中を過ごすことが効果的です。
体力や集中力の回復具合に応じて、図書館など自宅以外の静かな場所で過ごす時間を少しずつ延ばしてみるのもひとつの方法です。主治医の意見も確認しながら進めることが大切です。
実際の通勤時間に合わせて電車に乗る「通勤練習」も、心身への負荷を確認する上で重要です。主治医や支援機関と相談しながら、少しずつ進めていくことが大切です。
必要に応じて、リワーク支援などの専門機関を利用し、客観的な視点を取り入れながら復職準備を進める選択肢もあります。主治医からリワーク支援の活用を勧められた場合は、プログラムへの参加を検討するとよいでしょう。
うつ病の休職中にやってはいけないこと

休職期間中は回復に専念することが大切ですが、同時に避けるべき行動もあります。うつ病の症状により判断力が低下していたり、心身のエネルギーが不足していたりする状態では、ネガティブな思考になりがちで、通常であれば選択しない行動をとってしまうことがあります。
回復を妨げないために、休職中に控えるべき行動について理解しておきましょう。
退職や離婚などの重大な決断をすることは避ける
うつ病の症状の影響で判断力が低下している休職期間中に、仕事やプライベートに関する重大な決断を下すのは、一般的には避けた方がよいとされています。
このような状態では悲観的な思考に陥りやすく、通常の状態であればしないような、あとで後悔するかもしれない大きな決断をしてしまうリスクがあります。退職や離婚といった人生に大きな影響を与える選択は、まずは回復に専念し、体調が安定してから改めて冷静に考えることが大切です。
飲酒や昼夜逆転など不健康な行動は避ける
アルコールの摂取は、うつ病の症状を不安定にさせる、抗うつ薬の効果に影響を与える、睡眠の質を下げるなどの影響があり休職中は飲酒を控えることが望ましいとされています。また、昼夜逆転の生活は身体のリズムを乱し、うつ病の回復を妨げる可能性があるため、規則的な生活を送ることが重要です。
さらに、買い物やギャンブルなどの浪費行動にも注意が必要です。うつ状態のつらさや無気力感を紛らわせるために浪費行動が行われることもありますが、うつ病では判断力や抑止力が低下していることもあり、金銭的トラブルなど新たな問題につながる可能性もあります。
復職を成功させるために休職中からできる準備

休職期間は、ただ休むだけでなく、復職後に安定して働き続けるための土台を作る重要な準備期間です。研究によると、うつ病による休職は平均約3.5ヶ月ですが、再休職すると約5ヶ月と期間が伸びる傾向が報告されていることからも、最初の復職でつまずかない準備が大切です。体力や生活リズムの回復に加え、再発防止に向けた取り組みを行いましょう。
参考:厚生労働省|主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究 平成26~28年度 相互研究報告書
復職後の勤務に耐えうる体力と集中力を取り戻す
デスクワークであっても、毎日通勤し、6時間~8時間程度集中して業務を行うには相当な体力が必要です。休職中に低下した体力や集中力を回復させるため、回復期の後期に入った頃からウォーキングなどの軽い運動を日課に取り入れましょう。また、うつ病の症状のひとつである集中力の低下に対しては、記事の書き取りや音読、要約といった集中力を要する作業が効果的です。
週5日、午前10時頃から午後3時頃まで外出して活動できる体力が、復職のひとつの目安となります。毎朝決まった時間に起きて朝食をとる生活リズムを整えることも、復職準備において重要なステップです。
リワーク支援など専門機関の利用を検討する
一人で復職準備を進めることに限界や不安を感じる場合は、専門機関であるリワーク施設の利用が有効な選択肢です。リワーク施設では、専門家のサポートのもと、生活リズムの改善、ストレス対処法の学習、実際の業務を想定した模擬作業など、復職に向けた包括的なプログラムが提供されています。
グループワークやディスカッションを通じて対人関係のスキルを磨くこともでき、同じような悩みを抱える仲間との交流を通じて心理的な安心感や励ましを得られることも多くあります。専門家が定期的に状態を評価し、一人ひとりの状況に応じた適切なアドバイスを提供してくれるため、無理のない復職準備が可能です。
焦らず自分のペースで、ニューロリワークと共に復職を目指す
うつ病での休職中は、焦りや罪悪感を覚えやすいものですが、回復には個人差があり、自分のペースで進めることが何よりも大切です。休職期間は、単に元の状態に戻るだけでなく、ストレスへの対処法を身に付け、より健康的に働けるようになるための準備期間でもあります。
「ニューロリワーク」の復職支援(リワーク)では、脳科学者や精神科医、公認心理師などの専門家の監修のプログラムをはじめ、生活習慣の構築から休職原因の分析、再発防止策の検討まで、一人ひとりの状態に合わせたサポートを提供しています。見学や相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
                                  
                              
監修者
上谷 実礼(うえたに みれい)
ヒューマンハピネス株式会社 代表取締役
アドラー・コミュニケーション研究所(ACL) 共同代表
産業医・労働衛生コンサルタント・公認心理師
<経歴>
2000年:千葉大学医学部医学科卒業
2004年:千葉大学大学院医学研究院社会医学系研究室、助教・講師
2011年:ヒューマンハピネス(株)設立、代表取締役就任
現在は産業医業務に従事するほか、心理カウンセリング・講演・研修・執筆・ワークショップ主催・オンラインコミュニティ主宰など
<主な専門分野>
ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論・アドラー心理学
<著書>
『心を病む力: 生きづらさから始める人生の再構築』東洋経済新報社
『アドラー流”勇気づけ”保健指導』
『アドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』メディカ出版
『自分のことも、相手の心もよくわかる! しあわせのレッスン』KADOKAWA
など
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