復職診断書のタイミングはいつ?もらえない場合と料金・流れを解説
職場復帰を目指す上で、復職診断書の取得タイミングは重要です。本記事では、診断書をもらう適切な時期や手続きの流れ、主治医が発行してくれない場合の対処法をわかりやすく解説します。休職中で復職を考えている会社員の方が、安心して準備を進められるようサポートします。
復職診断書の基礎知識:なぜ職場復帰に必要か

休職期間を経て職場復帰を目指す際、多くの会社では復職診断書の提出を求められます。「法律で義務付けられているの?」「なぜ必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。実は、法律上は復職時の診断書提出が必須とは明記されていません。しかし、多くの企業が就業規則で診断書の提出を義務付けているのには、明確な理由があります。
それは、会社が従業員に対して負う「安全配慮義務」に基づくものです。病状が十分に回復していない状態での復職は、症状の悪化や予期せぬ事故につながるリスクがあります。企業はこうしたリスクを回避し、休職者の安全と健康を守るために、医学的な判断を必要としているのです。
以下では、企業が診断書を求める具体的な背景と、診断書から読み取られる復職判断の材料について見ていきます。
企業が診断書の提出を義務付ける背景
復職診断書の提出は法律で必須とされているわけではありません。しかし、多くの会社では就業規則により、休職者が復職する際に医師の診断書または意見書の提出を義務付けています。
この背景にあるのが、会社が従業員に対して負う「安全配慮義務」です。労働契約法第5条では、使用者は、労働者が生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならないという旨が定められています。
病状が完全に回復していない状態や、職場環境に適応できる状態にないまま無理に復職した場合、病状が悪化したり予期せぬ事故につながったりするリスクがあります。そのため、会社は医師の診断書に基づく医学的な意見を参考に、従業員の安全と健康を確保する観点から復職の可否を判断します。
したがって、診断書は安全配慮義務を果たすための実務上重要な書類として位置づけられています。
診断書から会社が読み取る復職可否の判断材料
会社が復職診断書の提出を求める主な目的は、休職していた従業員が安全かつ継続的に業務を遂行できる状態にあるか、医学的な根拠に基づいて確認することです。
具体的には、以下のような点を診断書から読み取り、復職の可否や復職後の働き方について判断する材料とします。
- 復職可能な病状の回復度水準…休職の原因となった症状がどの程度回復しているか、また復職後の業務遂行に支障がない水準まで回復がみられるかを確認します。
- 復職可否の医学的判断…現在の健康状態で業務に従事することが医学的に可能かを見極めます。
- 復職にあたり必要な配慮事項(勤務時間、業務内容など)…勤務時間や業務内容、職場環境などでどのような配慮が必要かを把握します。たとえば、短時間勤務からの開始が望ましいか、残業の制限は必要か、特定の作業の免除が求められるかといった観点から判断されます。
- 復職後の再発の可能性…病状が安定しており再発のリスクが低いか、今後の病状の見通しはどうかを確認します。
会社はこれらの情報を、休職期間中の情報、本人との面談、産業医との面談結果なども総合的に判断し、最終的な復職の決定や復職支援プランの策定に活用します。つまり、診断書は最終的な復職判断における「参考資料」として重要な役割を果たすのです。
復職診断書をもらうタイミングと取得までの手順

復職診断書が必要だと分かったら、次に気になるのが「いつ、どうやって手に入れるの?」という点です。診断書の取得には、適切なタイミングの見極めから発行までの期間、そして費用負担まで、押さえておくべきポイントがいくつかあります。
主治医に依頼するタイミングを誤ると、復職手続きが滞ってしまう恐れがあります。また、診断書の発行には一定の日数がかかるため、復職希望日から逆算して準備を進める必要があります。さらに、診断書の作成には費用が発生し、その負担が誰になるのかも気になるところです。
以下では、主治医へ復職の意思を伝える最適な時期、診断書の発行にかかる日数と間に合わない場合の対処法、そして料金相場と費用負担について、具体的に解説していきます。
主治医へ復職の意思を伝える最適な時期
診断書を依頼する適切なタイミングは、休職期間の終了が近づき、自身の中で「そろそろ働けそうだな」「復職したいな」という気持ちが固まってきた頃です。具体的には、休職期間満了日の1ヶ月前から2週間前を目安に主治医に相談するのが一般的です。
あまり早すぎると、その後の体調変化によって診断書の内容と実際の状態に乖離が生じる可能性があります。逆にギリギリになってしまうと、診断書の発行に時間がかかった場合に復職手続きが滞る恐れがあります。
主治医に復職の意思を伝える際には、以下の情報を併せて伝えると、スムーズに診断書を作成してもらいやすくなります。
- 具体的な復職希望日や休職期間満了日
- 休職前と比較した現在の体調や症状の改善具合
- フルタイムか短時間勤務からの開始かなど、希望する働き方
- 会社から特定のフォーマットが指定されているか、記載してほしい内容
自身の状況や希望を具体的に伝えることで、主治医が休職者に合った診断書を作成しやすくなります。
診断書の発行日数と間に合わない場合の対処法
復職診断書の発行にかかる時間は、医療機関によって、また依頼する診断書の内容によって大きく異なります。一般的には、依頼してから受け取るまで数日から1週間程度を見ておくのが無難です。
これは、医師が患者の現在の病状や回復度を診察して就労の可否や必要な配慮事項などを医学的に判断する時間や、医療機関の事務部門での書類作成や確認などの手続きの時間が必要になるためです。特に、会社指定のフォーマットへの記入を依頼する場合や、病状や経過が複雑で記載に時間を要する場合は、1週間以上かかる可能性も考慮しておきましょう。
診断書の取得には、医療機関の予約から受診、作成、受け取りまで全体で一般的には数日〜1週間程度で発行されますが、内容や医療機関の状況によっては2週間ほどかかる場合もあります。余裕を持って依頼することが、復職手続きをスムーズに進めるためのカギとなります。
万が一、復職希望日までに診断書の発行が間に合わない見込みであれば、速やかに会社の人事担当者や上司に連絡し、状況を説明します。提出期限の延長が可能か、または会社の判断で主治医の意見書などを参考資料として扱えるかどうか、確認してみましょう。
診断書の料金相場と費用負担の原則
復職診断書の費用は、医療機関によって自由に設定できるため、価格に幅があります。一般的に、1通あたり3,000円から10,000円程度が相場といわれています。
大学病院や総合病院などの大規模な医療機関は、診断書などの文書料も高めに設定されている傾向があります。クリニックの方が比較的安い傾向があるといわれています。また、会社指定のフォーマットへの記入や、複雑な病状について詳しい記載が必要な診断書は、医師が時間をかけて作成する必要があるため、費用が高くなる傾向があります。
診断書の発行費用は、健康保険の適用対象外であり、原則として診断書を必要とする本人、つまり従業員が負担します。これは、診断書が個人の求めに応じて作成される書類であるためです。
会社によっては、就業規則や労使協定の中で「復職時の診断書の費用を会社が負担する」「一部を補助する」といった取り決めを設けている場合もあります。負担の有無が気になるときは、まずは自社の就業規則を確認したり、人事担当者へ相談するようにしましょう。
主治医が復職診断書を書いてくれないときの対応方法

復職したい気持ちを主治医に伝えたにもかかわらず、診断書の作成を拒否されたり、復職を認めない判断をされたりするケースもゼロではありません。「なぜ書いてもらえないの?」「どうすればいいの?」と不安になる方も多いかもしれません。
主治医が診断書を書かない、あるいは復職を認めない判断をするのには、必ず理由があります。それは決して悪意から生じるものではなく、休職者の心身の健康を思いやっての判断です。
大切なのは、感情的にならずに理由を医師に尋ね、対策を練ることです。症状の回復が不十分な場合もあれば、生活習慣の改善が必要な場合、復職のタイミングが早すぎる場合など、様々な理由が考えられます。
以下では、医師が復職を認めない場合に考えられる具体的な理由と、復職許可に向けて生活の中で実践できることについて見ていきます。
医師が復職を認めない場合に考えられる理由
主治医が休職者の体調や病状を踏まえた上で、現時点での復職は病状悪化や再発のリスクが高いと判断した場合、診断書の作成を見送ることがあります。主治医は休職者の健康を第一に考えていますので、その判断には従うことが大切です。無理な復職はかえって回復を遅らせる原因にもなりかねません。
診断書がもらえない理由は個々によって様々ですが、主な理由として以下の4点が挙げられます。
| 理由 | 具体的な内容 |
| 症状が十分に回復していない | うつ病などの症状が十分に改善しておらず、復職により症状が悪化するリスクが高い。 |
| 生活リズムや習慣が整っていない | 睡眠リズムが不規則であったり、日中の活動体力が戻っていなかったりするなど、安定した勤務に耐えうる生活基盤が整っていない。 |
| 復職の時期が適切でない | 本人が希望する復職時期が早すぎて、症状の悪化や再発のリスクが高い。 |
| 職場のサポート体制に不安がある | 復職後の職場のサポート体制が不十分で、ストレスの原因が解消されていない。 |
これらの理由に基づく判断は、本人の健康を第一に考えたものであることを理解しておきましょう。
復職許可に向けて生活の中で実践できること
主治医から復職の許可を得るためには、客観的な回復を示すことが重要です。生活習慣が課題で診断書を書いてもらえないときは、どのレベルまで回復すればよいかの基準を医師に確認しましょう。その基準を明確化することで、達成に向けて行動しやすくなります。
医師に回復状況を具体的に伝える方法として、生活記録表の作成が有効です。たとえば以下のような内容を記録することで、医師の理解も得やすくなります。
- 起床・就寝時間
- 日中の活動内容(散歩、読書など)
- 外出時間や場所
生活リズムや体力、集中力を取り戻すには、外での活動場所を作ることもおすすめです。リワークセンターのような復職を支援する専門機関を利用すれば、定期的に外出する機会ができることで、生活習慣の改善につながります。リワークセンターには同じような境遇の方が通っており、センターによってはヨガやジョギングなどの運動プログラムもあるため、運動を通じて症状の回復を促すことができます。
専門機関のサポートで円滑な職場復帰を実現する
復職診断書は、職場復帰を実現するための重要な書類です。診断書の取得には適切なタイミングと手順の理解が不可欠であり、休職期間満了日の1ヶ月前から2週間前を目安に主治医へ相談することが望ましいでしょう。発行には数日から1週間程度かかるため、余裕を持った準備が復職手続きをスムーズに進める鍵となります。
万が一、主治医から診断書を書いてもらえない場合でも、それは健康を第一に考えた医師の慎重な判断です。症状の回復度や生活習慣の改善を客観的に示すことで、復職への道は開けていきます。
復職準備を一人で進めることに不安がある方には、専門的な支援を提供するリワーク施設の利用が有効な選択肢となります。ニューロリワークでは、生活習慣の構築、休職原因の分析と再発防止策の検討、企業との連携サポートなど、復職に向けた包括的なプログラムを提供しています。
リワーク施設での安定した通所実績やプログラムへの取り組みは、主治医が回復状況を客観的に把握する上での参考材料となる場合があります。見学や相談は無料ですので、まずは気軽に問い合わせてみてください。
監修者
山下 真由美
特定社会保険労務士、行政書士
東京都港区で行政書士及び社会保険労務士事務所を開業し、労働社会保険の手続きや労務相談はもちろん、外国人の在留資格に関する手続きから労務管理までトータルで承ることが可能です。そのほかにも、著作権不明者の作品を利用するための裁定申請や相続・遺言を取り扱っています。頼れる街の法律家として、ご相談いただいた一つ一つの事件に丁寧に向き合い、お役に立てるよう精一杯のお手伝いをさせていただいています。
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