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うつ病 休職中の過ごし方 臨床心理士・脳科学者監修

臨床心理士・脳科学者監修|うつ病から仕事復帰するためのステップと注意点

うつ病の症状が治まり始めると、「早く仕事に復帰しなければ」と焦る気持ちが強くなってくる方も多いでしょう。しかし、準備が整っていない状況で仕事に復帰すると、うつ病の再発や再休職、さらに最悪の場合は退職にまでつながってしまう可能性があります。仕事に復帰するためにはどのような準備が必要なのでしょうか。今回は休職後から仕事復帰までの過ごし方を解説します。

1.うつ病による休職から仕事復帰までの過ごし方

うつ病から仕事復帰までの理想的な過ごし方

うつ病で休職した場合、仕事に復帰するまでにはいくつかのステップがあります。

まず初めに、うつ病で休職に入った直後にすべきことは治療に専念することです。うつ病の症状が治まらない限り、仕事に復帰することはできません。心身をしっかりと休めましょう。

治療を受けてうつ病の症状が落ちついたら、次は仕事に復帰するための準備を始めます。

睡眠障害などの影響で崩れていた生活リズムを整え、会社に出勤ができるようにしましょう。また、仕事をするために必要な体力を取り戻すことも重要です。

生活リズムが整い、ある程度体力を取り戻すことができたら、次の段階です。

会社に仕事へ復帰したいという意思を伝え、仕事復帰までのプランを会社や医師と相談してたてましょう。

ここまでくれば、仕事への復帰はもう少しです。医者の診断書など仕事に復帰するために必要な書類を会社に提出しましょう。手続きが終われば、仕事に復帰できることになります。

それでは、各々のステップで具体的にどうのように過ごせばよいかみていきましょう。

うつ病の治療・改善が第一優先

休職した直後はうつ病の症状が強くでている時期です。無気力であったり、精神的に不安定であったり、体調を崩している方もいるでしょう。仕事復帰の準備の前に、まずは病気の治療に専念しましょう。

治療を受けずに無理をして出社しても、再休職や退職につながってしまいます。実際に、うつ病で休職し復帰したものの、再休職や退職してしまう人の割合は少なくありません。

治療は一般的に休養、うつ病の症状を和らげる薬物療法、ストレスへの対処法などを学ぶ精神療法の三本柱で行われます。

うつ病の多くは、心身に与えられたストレスの結果によるものです。まずは、仕事から離れてしっかりと休養することが大切です。

また、うつ病は専門的な治療が必要な病気でもあります。一人で治そうとせずに、医師と相談して薬物療法や精神療法を受けましょう。

生活のリズムを整える

うつ病の症状が落ちついてきたら、次は生活のリズムを整えましょう。

うつ病の症状の1つには不眠や過眠といった睡眠障害があります。
そのため、休職中は生活リズムが乱れてしまい、朝起きることさえ辛く感じる人もいます。まずは決められた時間に起床するところからリハビリを始めましょう。

また、休職中に落ちた体力を取り戻すためにウォーキングなど軽い運動を行うこともおすすめです。

ここでも無理をしてはいけません。急に激しい運動をすると体調を崩してしまうので、少しずつ体を慣らしていきましょう。

仕事復帰までのプランをたてる

うつ病の症状が改善して生活のリズムも整ってきたら、次は仕事復帰までのプランをたてていきます。

うつ病は回復したようにみえても、環境の変化などで再発するリスクの高い病気です。

ここで焦って、いきなり職場に復帰してはいけません。医師や会社と相談して復帰時期、業務内容、勤務時間など具体的な仕事復帰にむけたプランをたてましょう。

仕事復帰に必要な具体的な手続きをすすめる

うつ病で休職した場合、仕事に復帰するためには医師の診断書が必要となります。

会社に仕事に復帰したいという意思を伝え、医師の診断書を提出します。会社によっては、医師の診断書に決まったフォーマットがある場合や、他にも提出書類が必要な場合があります。

事前に必要書類を会社に確認しましょう。手続きが終わればついに仕事に復帰です。

2.急がば回れ?仕事復帰にむけての注意点

指とビックリマーク

元気になる=仕事復帰のサインではない。体力の回復、生活リズムも見直してみよう

うつ病の症状が治まって元気になったと思っても、仕事の復帰には少し早い可能性があります。

例えば、休職中は睡眠障害の影響で朝起きる時間や寝る時間が不規則になりがちです。

生活リズムを整えないまま仕事に復帰をしたけれど、朝起きられないために会社に出勤することができなかったという人もいます。

また、体力が想像以上に落ちていることもあります。日常生活に問題はなくとも、いざ仕事に復帰すると業務の負担が大きくに再びうつ病が再発するといったことも。

このように仕事の復帰に失敗しないためには、事前準備が大切です。

仕事復帰に成功している人は、リワーク施設に通うなどして生活のリズムを整え、業務に必要な体力を取り戻してから仕事に復帰しています。

うつ病の再発を防ぐためにも焦らず、生活のリズムを整え、体力を取り戻すことを優先させましょう。

ストレスへの対処方法を身に付ける

うつ病の主な原因の1つは過度なストレスです。

うつ病の再発を予防するためにはストレスへの対処法を学ぶことが重要になります。その1つが精神療法や心理療法です。

例えば、うつ病になるとネガティブな方向にものごとをとらえやすいため、ストレスを感じやすい傾向にあります。
うつ病の方が受けるストレスを小さくするために、認知行動療法ではバランスの良い考え方を身に付ける方法を学びます。

認知行動療法の詳細については、「臨床心理士監修|認知行動療法の意味や内容その効果を徹底解説」の記事をご覧ください。

また、Googleなど世界的有名企業で研修に取りいれられていることで注目を浴びたマインドフルネスもストレス対処に有効であると考えられています。

マインドフルネスとは、ストレスを受けても自ら克服して脳を休息させるトレーニングです。メタ認知力(※)を養うことにより、自分のストレスの度合いやストレスの原因を知ることができますので、ストレスとの付き合い方が身に付きます。
(※「メタ認知力」:自分自身の認知活動(思考や行動)を、より高い視点から、第三者のように客観的・俯瞰的に捉え、認識する脳の力。)

自分にあったストレス対処法を身につけることで、うつ病の再発を予防しましょう。

マインドフルネス

働き続けるためには企業の理解・協力体制

うつ病による休職から仕事に復帰し、その後も働き続けるためには会社の理解や協力体制が欠かせません。

うつ病の原因が仕事量や業務内容、人間関係などにあった場合、業務内容の変更、職場の異動など組織として対策を検討してもらう必要があるからです。

休職に至った原因を整理して、会社に伝え、仕事を続けるためにはどうすればよいのか一緒に考えるようにしましょう。

焦りは禁物!職場が求める復帰のタイミングを知り、しっかり準備をしよう

医師は日常生活に問題がないレベルまで回復すれば、職場での業務遂行に多少心配があっても「仕事に復帰できる」と診断することがあります。

一方で実際に仕事に復帰するためには、「決まった時間に出社できるか」、「業務に必要な作業を行えるか」、「勤務時間に耐えられる体力や集中力はあるか」など職場での業務遂行がある程度問題ないレベルまで回復していることが求められます。

業務に支障がある状態で仕事に復帰しても、仕事に耐えきれずにうつ病が再発する危険性があります。しっかりと準備を行い、復帰するようにしましょう。

人事や医療機関が職場復帰を判断するポイントについては、「臨床心理士監修|復職判断基準とは?人事・医療機関が職場復帰を判断するポイント」の記事をご覧ください。

3.仕事復帰はこれからのスタート!復帰後の働き方について

四葉のクローバー

復職後の業務量・業務時間は段階的に

仕事に復帰した直後は、「休職した分も取り戻そう!」と無理をして働いてしまう方が多くいます。しかし、ここで無理をすると、うつ病が再発してしまう可能性があります。うつ病の再発を防ぐためには、仕事に復帰してからの働き方も大切です。

職場と相談し、可能でしたら初めは少ない業務量、短い勤務時間からスタートし、少しずつ体を慣らしていくようにしましょう。

自己判断はNG!通院や服薬は医師の指示に従いましょう

うつ病は脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることによって引き起こされる病気と考えられており、薬による治療が重要になります。

しかし、うつ病に使われる薬は効果を実感するまでに時間がかかります。すぐに効果が実感できず、効果が出る前に副作用が出る場合もあるため服薬をやめたくなるかもしれません。

うつ病の薬は飲み続けることで効果が得られるものです。自分で勝手に判断せずに医師の指示に従いましょう。副作用が顕著な場合や心配な場合も、医師に相談するようにしましょう。

 

また、薬で症状が治ったように感じたときも同じです。

勝手に服薬や通院をやめてはいけません。急に服薬をやめると、離脱症状が出たり、うつ病が再発する可能性があるからです。

通院や服薬は自分で勝手に判断せずに、医師に相談して決めるようにしましょう。

4.一人での仕事復帰が心配な方はリワーク施設を利用しよう

生活のリズムを整える、体力を取り戻す、休職に至った原因を考える、ストレスへの対処法を身につける……仕事への復帰にむけて事前に準備することはたくさんあります。

自分1人でできるか不安に思う人にはリワーク施設がおすすめです。

リワーク施設には休職から仕事復帰までをサポートする様々なリワークプログラムが提供されています。

リワークプログラムの詳細は「リワークプログラムの内容は?|各施設ごとの違いや特徴を徹底解説」に掲載しているので、利用を検討する際の参考にしてください。

5.復職者のうつ病再発予防にむけて会社ができること

会社で話す同僚

うつ病を再発させないためには、会社の協力が必要不可欠です。休職から職場に戻ってきた社員になるべくストレスがかからない職場環境を用意できるか検討してみましょう。

例えば、休職した原因が職場にある場合は、部署を変えたり、業務内容を見直したり配慮が必要となることもあります。

また、復帰直後は業務量や業務時間を通常よりも少なくし、段階的に増やしていくようにコントロールすることも大切です。

復職者と日頃からコミュニケーションをとり、無理をしていないか気にかけてあげましょう。

また、配慮する必要があるのは復職者だけではありません。その上司や同僚についても過度に負荷がかからないように注意してください。負担が重くなり過ぎると、職場への不満が大きくなる、別の人が体調を崩してしまうといったことが起きる可能性があるからです。
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監修者

石上友梨 (臨床心理士)

大学・大学院と心理学を学び警視庁に入庁。
5万人の職員のメンタルヘルスを管理し、カウンセリングや心理検査、メンタルヘルス講義、拳銃選手のメンタルトレーニングなどを実施。
現在はフリーランスとして心理学に関するライター活動も含めて幅広く活動中。
Webサイト:https://cbt-yoga.com/

監修者

杉浦 理砂(脳科学者)

インクルード株式会社 ブレインフィットネス研究所 ディレクター
脳科学者、工学博士(応用物理)、東京都立大学特任准教授(現任)

【参考文献・参考サイト】

https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/depression/basicinformation06.html
http://utsu.ne.jp/sp/treatment/doctor/message01.html
https://mynavi-ms.jp/magazine/amp/detail/000341.html
http://kokoro.mhlw.go.jp/case/620/
https://moainternational.or.jp/labo/j030うつ病を乗り越え復職がかなう
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/spv/1805/15/news04.html
書籍「専門医が優しく教えるうつ病」(著者:平安良雄)
(写真素材:PIXTA、photoAC)