セルフリワークとは?復職に向けて具体的に何ができるのかを解説

ある程度の休職期間を経て、いよいよ復職に向けて何かを始めるべきだと漠然と考えながらも、いざ取り組むとなると「何から始めてよいのか分からない」と迷ってしまうケースは多いかもしれません。
クリニックや医療機関での治療を続け、少しずつ調子が戻ってきたと感じると、次のステップとして「復職の準備」が視野に入るようになります。同時に、「そもそも自分は復職できる状態なのか」「いきなり職場に戻るのは不安」と、足が止まってしまうという方も決して少なくありません。
そんな中、主治医やカウンセラー、またはインターネットの情報を通じて「復職を目指すためのリワークプログラム」を知ったという方もいるかもしれません。「そういうものがあるなら、利用したほうが良いのかも」と思う一方で、「しかし、まだそこまで本格的に動くのは抵抗がある」とためらってしまうというケースも多くみられます。
そこで注目されているのが、「セルフリワーク」という考え方です。セルフリワークは、復職を目指すための専門機関を利用する前のステップとして、自分自身でできる範囲でリハビリや復職のための準備を行うというものです。特別な資格や設備がなくても始められる上、自身のペースで取り組めるのが大きな魅力です。また、効果的に取り組むことで、復職に必要なスキルや体力の回復につなげることができます。
今回は、これまでに多くの方の休職と向き合い、復職を支援してきたリワーク施設であるニューロリワークがその知見を基に、セルフリワークの基本的な考え方や具体的な取り組み方法、注意点などについて分かりやすくご紹介していきます。難しい専門知識を必要とせず、「今日からできること」をお伝えします。(休職期間を有意義に過ごすためのリワーク施設「ニューロリワーク」の資料請求はコチラから)
1.セルフリワークとは?まずは自分でできる復職準備を知ろう
休職からの復職を目指すためには専門のリワークプログラムに参加することも効果的ですが、その前段階として、自分自身で取り組める準備があります。これが一般的に、「セルフリワーク」と呼ばれるものです。復職に必要な生活リズムの改善や体力の回復、職場環境への慣れを自分のペースで進められるという特徴があります。
セルフリワークの目的とメリット
「復職に向けて何をすればいいのか分からない」という方にとって、セルフリワークは取り組みやすいきっかけのひとつです。セルフリワークの目的や取り組む主なメリットとしては、以下のものが挙げられます。
・生活リズムの安定化:
規則正しい生活を送ることで、心身の健康を整えます。
・体力と集中力の回復:
日常生活での活動量を少しずつ増やし、仕事に必要な体力と集中力を取り戻します。
・通勤や職場環境への慣れ:
実際の通勤経路を使った練習や職場近くの施設での活動を通じて、復職後の環境に慣れていきます。
こうした取り組みにより、復職後の負担を軽減させ、スムーズな職場復帰を目指すことができます。
セルフリワークの注意点
自分の状態に合わせて柔軟に進められるセルフリワークですが、注意しておきたいポイントもあります。主な注意点としては、以下の点が挙げられます。
・無理をしない:
体調がすぐれない日は休息を優先し、無理のない範囲で取り組むことが重要です。
・自己評価の確認:
自分の状態を客観的に評価し、必要に応じて医師やカウンセラーに相談します。
・段階的な目標設定:
一度に全てに取り組もうとせず、小さな目標を設定し、達成感を積み重ねることでモチベーションを維持します。
セルフリワークは、自分自身の状態を見極めながら無理のない範囲で進めることが大切です。また、必要に応じて専門家のサポートを受けることも重要です。
(関連記事:「復職成功者の多くがリワーク利用時に実践していたこと」)
2.復職するために必要な基準とは?
休職期間中にセルフリワークに取り組みながら復職を検討する上で、どのような基準を満たせば職場復帰が適切といえるのかを理解することは非常に重要です。復職にあたって満たすべき主な基準としては、以下の5つが挙げられます。
基準(1)医師からの復職許可
担当医からの許可を得ることは、復職に不可欠な要素であり第一歩でもあります。医師は症状の安定性や再発リスクを評価し、復職が可能かどうかを判断します。医師の判断は、職場復帰の妥当性を考える上での重要な指標のひとつです。
基準(2)規則正しい生活リズムの回復
安定した生活リズムは、復職の可否だけでなく復職後の業務遂行能力にも直結します。毎朝の決まった時間に起床し、夜になると適切な時間に就寝するという習慣を取り戻すことで、日中の活動量を増やして仕事に必要な体力と集中力を養うことができます。
基準(3)職場復帰に向けた具体的な準備
円滑な職場復帰を実現するためには、復職後の業務内容や職場環境を具体的にイメージし、それに向けた準備を進めることが重要です。リワークプログラムなどを活用し、業務のシミュレーションやストレスケアのトレーニングを行うことで、復職後の適応力や安定性を高めることができます。
基準(4)心理的な安定感
復職の仕事に対する自信や、不安の解消方法なども重要な判断基準となります。メンタル面での安定が職場でのパフォーマンスや人間関係に大きな影響を与えるため、自己評価を行い、必要に応じてカウンセリングを受けて心理的な準備を整えることが大切です。
基準(5)職場とのコミュニケーション
復職するにあたって、復職後の勤務時間や業務内容の調整などに関して職場と円滑なコミュニケーションを図ることも重要なポイントです。事前に話し合いを行うことで復職後の負担を軽減させ、円滑に再スタートを切ることができます。
これら5つの基準を満たすことで、復職後の再発リスクを低減させ、安定した就労が可能になります。焦らずに自身のペースで準備を進めることが、復職を成功させる大きなカギとなっています。
(関連記事:適応障害で休職してから復職までの期間は何ヶ月?事例もあわせてご紹介)
3.セルフリワークの具体的なやり方
これまでにみてきたように、休職からの復職を目指す上で、自分自身で取り組める「セルフリワーク」は効果的な方法のひとつです。セルフリワークでは、規則正しい生活習慣の確立や通勤練習などを通じて、日常生活の中で復職に必要な準備を進めていきます。主なセルフリワークとして、以下の方法があります。
(1)規則正しい生活習慣の確立
復職に向けた第一歩は、規則正しい生活リズムを取り戻すことから始まります。具体的には、毎日同じ時間に就寝・起床し、食事や運動の時間も一定に保つことが重要です。理想的な就寝・起床時間には個人差があるものの、概ね就寝が22時頃、起床が6時頃というのが一般的です。この生活リズムを維持することで、体内時計が整い、日中の活動に必要なエネルギーを確保することができます。また、「睡眠覚醒リズム表」や「生活行動記録表」などを活用して日々の生活を記録することで、自身の生活パターンを視覚化し、客観的に把握することも効果的です。これにより、生活習慣の乱れや改善点を明確にして必要な調整を行うことができます。
(2)図書館への定期的な通所
復職のための訓練として、自宅以外の場所で一定時間を過ごすことは効果的なトレーニングとなります。特に図書館は静かで集中しやすい環境が整っており、セルフリワークの場としても適しています。セルフリワークの一環として、まずは最寄りの図書館に開館と同時に訪れ、2~3時間ほど滞在することから始めるという方法もあります。この方法では、たとえば「1週間ごとに滞在時間を1時間ずつ延ばし、最終的にはお昼休憩を含めて8時間の滞在を目指す」といった取り組みにより、長時間の集中力や持続力を養うことができます。
(3)通勤練習の実施
復職前に、実際の通勤経路で心身にかかる負荷がどの程度であるかを試すことで、復職後の通勤に対する不安や負担を軽減させることができます。まずは職場の最寄り駅まで1週間ほど通い、どの程度の負荷を感じるかを試してみることが大切です。1週間ほどの期間を設け、今度は職場の近くまで足を運ぶことで心身を少しずつ環境に慣らしていくことができます。通勤練習中に上司や同僚に思いがけず会ってしまうことへの不安がある場合は、時間帯をずらすなどの工夫も大切です。このような通勤練習は、行動療法のひとつである「暴露療法」にも通じており、復職への心理的なハードルを下げる効果が期待されています。
これらのセルフリワークを通じて、復職に必要な生活リズムや体力、精神的な準備を整えることができます。無理のない範囲で少しずつ取り組み、着実に復職へのステップを踏み出すことが大切です。
(関連記事:絶対に失敗したくない!うつ病からの復職 再休職を避けるために覚えておきたい3つのこと)
4.自分だけでのセルフリワークには、限界がある
セルフリワークは、自宅や図書館などで自身のペースに合わせて復職準備が進められるという点で、多くの休職者にとって取り組みやすい方法となっています。とはいえ、復職を成功させるためにはセルフリワークだけでは難しいという側面もあります。
セルフリワークの限界としては、主に以下のような点が挙げられます。
孤独感と不安の増大
セルフリワークでは、他者との交流が乏しいことから孤独感や不安を感じやすくなりがちです。特に復職に対する不安や自信のなさが強い場合に、誰にも相談できずに悩みを抱え込んでしまうことがあります。このような状態が続くと、復職への意欲が低下し、復職のために必要な準備が進まなくなるということも考えられます。
モチベーションの維持が困難
セルフリワークでは、自分自身でスケジュールを管理し、取り組みを継続することが求められます。とはいえ、体調の波や気分の変動がある中で、取り組みを一定のペースで保つことは必ずしも容易ではありません。また、取り組みの成果が見えにくいため、モチベーションを維持するのが難しくなることもあります。
客観的な評価やフィードバックの欠如
セルフリワークでは、自身の取り組みが復職にどれだけ近づいているのかを客観的に評価することが困難という特徴があります。他者からのフィードバックが得られないため、自分の課題や改善点に気づきにくくなります。このような状況では、復職に必要なスキルや能力の向上が十分に図れないケースも考えられます。
実践的なスキルの習得が困難
セルフリワークでは、実際の職場環境を想定した訓練が難しいため、復職後に必要な実践的なスキルの習得が不十分になることがあります。たとえば、職場でのコミュニケーションやストレスへの対処方法など、実際の業務に直結するスキルはセルフリワークだけでは十分に身につけることが難しいといえます。
これらの理由から、セルフリワークだけで復職を目指すには一定の限界があるといえます。復職を成功させるためには、リワーク施設などの専門的な支援を活用し、他者との交流や客観的な評価を受けながら実践的なスキルを身につけることがより効果的です。
(関連記事:復職直後に意識しておきたい3つのこと うつ病やメンタル不調の再発・再休職を防ぐためのポイント)
5.併せて、リワーク施設の活用も検討する
これまでにみてきたように、復職を目指す上でセルフリワークでの取り組みだけでは限界を感じることがあります。より効果的な復職準備を目指すのであれば、リワーク施設の活用を検討することが推奨されます。リワーク施設では専門家の支援のもと、復職に向けた包括的なプログラムが提供されています。
リワーク施設は、うつ病や適応障害などで休職中の方が、職場復帰を目指すための支援を受ける場所です。一口に「施設」や「場所」といっても、医療機関が実施しているものや福祉施設が実施しているもの、または企業内のプログラムなど幅広く実施されています。これらの施設・プログラムを通じて、復職に必要なスキルや体力、生活リズムの再構築がサポートされます。
リワーク施設でできること
リワーク施設によって提供されるプログラムに違いはあるものの、一般的には以下のようなプログラムが提供されています。
・生活リズムの改善:
決まった時間に通所することで、規則正しい生活習慣を取り戻します。
・業務シミュレーション:
実際の業務を想定した課題やプロジェクトを通じて、集中力や持久力を養います。
・コミュニケーションスキルの向上:
グループワークやディスカッションを通じて、対人関係のスキルを磨きます。
・ストレス対処法の習得:
認知行動療法などを取り入れ、ストレスへの対処法を学びます。
専門家と取り組むメリット
多くのリワーク施設では、精神科医や公認心理師・臨床心理士、作業療法士などの専門家によってプログラムが作成・提供されています。これにより、リワーク施設を活用することで以下のようなメリットが期待できます。
・客観的な評価とアドバイス:
専門家が定期的に状態を評価し、復職のための適切なアドバイスを提供します。
・個別に合わせたプログラムを提供:
施設によっては一人ひとりの状況に応じたプログラムが組まれることもあり、無理のない復職準備が可能です。
・再発防止のサポート:
復職後の再発を防ぐため、必要なスキルや知識を身につけることができます。
リワーク施設の利用は、復職への不安を軽減し、スムーズな職場復帰を実現するための効果的な方法です。セルフリワークでの取り組みに限界を感じた場合は、専門家の支援が受けられるリワーク施設の活用がおすすめです。
(関連記事:リワークプログラムとは?プログラム内容と気になる費用を解説)
6.まずはセルフリワーク、それからリワーク施設の活用を
セルフリワークは、自分のペースで復職準備ができる手軽な方法として休職者にとっての第一歩となります。生活リズムの改善や図書館通い、通勤練習など、小さな積み重ねが復職への自信につながります。とはいえ、セルフリワークは一定の効果が期待できる一方、モチベーションの維持や客観的な評価の難しさといった限界もあるため、状況に応じてリワーク施設の利用も視野に入れることが大切です。専門家のサポートを受けながら無理のないペースで準備を進め、安心して職場復帰を目指しましょう。
ニューロリワークでは、うつ病や適応障害などのメンタル不調が原因で休職に至った方を対象に、復職や再就職の支援に加えて日々の運動習慣や生活リズムの安定を目的としたプログラムを提供しています。見学や体験参加も受け付けているので、効果的な復職準備をご希望の方はお気軽にご相談ください。
(関連記事:ご存知ですか?「リワーク施設」┃復職の成功につながる施設選びの5つのポイント)
■ダウンロード資料【今日から復職を目指す方へ。「簡単!初めてのリワークガイド」】
記事のリンクをコピー