復職したい方が押さえておくべき、「職場復帰の最短ルート」とは?

うつ病などのメンタル不調・精神疾患で休職された方にとって、「どうすれば復職できるか」という点は非常に気になるところです。また、企業によっては休職期間があまり長く設定されていないというケースもあり、それゆえ休職者は「できるだけ早く復職したい」と考えるケースもあります。
ここでは、そうした方々を対象に、“職場復帰への最短ルート”になりえるポイントについてご紹介します。(休職と復職のことが3分でわかる「簡単!初めてのリワークガイド」のダウンロードはコチラから)
1.「復職を実現するためのポイント」は何か?
復職の成功の可否を決めるのは、いわゆる「気持ちの問題」だけではありません。復職に至るタイミングや企業との調整、または体力づくりなど、さまざまな要素が合わさって復職の成功へと至ります。復職の可能性を高めるためには、復職の際に企業から求められるポイントを押さえておくことが大切です。
復職を成功させるために最初に押さえておくべきなのは、「復職施設の担当者が復職を許可するときに見ているポイント」です。復職施設によっては、安易に復職の許可を出さないというところも少なくありません。
初めて休職する方であってもそうでない方であっても、休職中の方は「復職を絶対に成功させる」「休職はこれで最後」という気持ちで取り組んでいます。しかし、そうした想いが強いために休職原因が解消されないままに復職してしまうと、再休職のリスクが高いままとなってしまいます。
そして、もしも再び休職に至ってしまうと、その後は休職を繰り返すリスクが高くなってしまいます。そうなると復職への失敗体験が色濃く残ったり、「会社に迷惑をかけてしまっている」という自責の念が強くなり、復職へ向けての気持ちにブレーキがかかってしまいます。
こうした理由から、上述したように復職施設によっては復職判断が非常に慎重に行われます。
復職施設が復職を判断するポイントのひとつとしては、施設の利用者(つまりは休職者)が所属している会社の復職要件に達しているかが挙げられます。また、これを前提とした上で、その他にも主に以下の点が復職許可のポイントとなります。
【復職判断のポイント】
①基本的な生活習慣が、土日を含めて安定している
②毎日の起床就寝の時間が一定であり、昼夜が逆転していない
③読書やPC操作など、集中を要する作業を一定時間にわたって行える
④土日に必要なセルフケアを行い、休日に疲れを取って週明けから活動できる
⑤自身の症状を理解し、不調になったときに再発防止策が練られている
⑥復職後の通勤を想定し、週5日で決まった時間に決まった場所に通える
⑦通院や服薬を忘れることなく行える
一般的に、リワーク施設では上記の点が復職判断のポイントとして確認されています。(※リワーク施設によって多少の違いがあります。)
上記のポイントが満たされていない場合には、復帰によって再発率が高まり結果的に休職を繰り返してしまうことを防ぐために、リワーク施設の担当者は主治医や企業と相談をした上で復帰の時期について利用者と話し合いを行うこともあります。
(関連記事:復職と再就職のどちらが良い?意味の違いと判断ポイントを解説)
2.自力で復職を目指す難しさ
リワーク施設の担当者が復職を許可しない理由として多いのは、⑥の「週5日定時に同じ場所へ通える」という理由です。
リワーク施設では、リワーク施設への通所が安定しない場合や訓練への参加率が悪い場合には、「復職許可を出すには未だ不十分」と判断されるのが一般的です。風邪などのやむを得ない事情を除き、週5日間遅刻欠席なしという状態を最低でも3ヶ月にわたって通所できているかがひとつの目安になると考えましょう。
こうした考えに対しては、しばしば「毎日決まった場所に通うのが必要であれば、図書館でもいいのでは?」「休職期間が3ヶ月もない場合はどうすればいい?」といった質問が挙がります。
前者の質問は、主にセルフリワーク(自宅療養や図書館訓練など)をされている方から挙げられる質問です。
図書館への通所(もしくは自宅周辺でのウォーキング・ジョギングなど)は、自身で負荷のコントロールが容易という特徴があります。また、取り組む時間も自由にコントロールでき、遅刻をしても誰にも責められることなく、欠席することを誰かに報告する必要もありません。
通勤訓練は、職場と同等の負荷がかかるところで行うことが望ましいといえます。そのため、「通勤に耐えうる体力があるかどうか」「毎日起きられるかどうか」「交通機関を利用できるか」「他者とコミュニケーションを図れるか」といった点を確認できることが大きなポイントとなります。こうした理由から、通勤訓練ではこれらの点を確認できる場所に通うことが効果的であるといえます。
後者の質問(=「休職期間が3ヶ月もない場合はどうすればいい?」)については、会社や家族のためにできるだけ早期の復職を目指している方から挙げられることがあります。
リワーク施設の利用を開始した段階で、残りの休職期間が1~2ヶ月しかないというケースも少なくありません。こうした場合、復職をしても体調不良によって再休職したり、安定していない状態で無理をしながら働いているというケースが多くみられます。こうしたケースは会社や家族に迷惑をかけてしまうだけでなく、自分自身も苦しい期間が続いてしまうことになります。そのため、焦らずに復職準備に取り組むことが結果としては一番の近道といえるでしょう。場合によっては、企業に休職期間延長の要望を伝えることも大切です。
(関連記事:「休職から復職」を考える上で押さえるべきポイント)
3.リワークなしで復職する場合の就労継続率やリスクとは?
リワークプログラムを利用せずに復職する場合、利用した場合と比べて就労継続率の低下や再休職のリスク増加といった傾向がみられます。このような「リワークを利用せずに復職する際の懸念点」としては、主に以下のものが挙げられます。
a.再休職リスクの増加と就労継続率の低下
リワークプログラムを受けずに復職した場合、再休職のリスクが高まることが複数の研究で示されています。たとえば、リワークプログラムを受けた復職者は、受けていない復職者と比べて復帰後の定着率に3.5倍もの開きがあるといわれています。リワークプログラムを利用して復職した場合、復職から1,000日後に就労を継続していた復職者が70%弱であったのに対して、リワークプログラムを利用しなかった復職者の就労継続率は20%以下という報告があります。このことから、リワークの利用の有無が復職後の職場定着に大きな影響を与えることが分かります。
(関連記事:休職からの復職が怖い方へ。復帰後の定着率が3.5倍といわれるリワークプログラム)
b.職場適応の困難と精神的負担
上述したように、リワークを利用せずに復職すると職場でのストレスに対する耐性が十分でないことも多く、再び体調を崩すリスクが高まります。また、長期間にわたって職場を離れていると仕事のリズムやスキルを取り戻すのに時間がかかり、職場の人間関係に不安を感じてしまうケースも少なくありません。こうした課題を解消するためには段階的な準備とサポートが効果的ですが、リワークを利用しない場合はサポートが不十分となる可能性があります。
c.自己管理スキルの不足と復職タイミングの誤り
復職後、メンタルヘルス不調の再発を防ぐためには、自身の状態を客観的に把握し、適切に管理する能力が求められます。リワークプログラムでは、このような自己管理スキルを専門家のサポートを受けながら学ぶことができます。一方、リワークを利用せずに復職すると、必要な自己管理スキルが不足したまま職場に戻ることになり、再発のリスクが高まります。
リワークプログラムでは医師による定期的な復職判断だけでなく、復職を支援する専門家による判断も行われます。そのため、プログラムを利用しない場合は復職のタイミングが自己判断となりやすく、早すぎる復職により再発のリスクが高まったり、逆に復職が遅れて自信を失ったりするケースもあります。
d.サポート体制の不足と孤立感
リワークプログラムでは、医療の専門家からのサポートや同じ立場の利用者からのサポートなどが得られることから、プログラムを利用しない場合に適切なサポートが得られず孤独感や不安感を抱えたまま職場に戻ることになるケースも考えられます。こうした状況は精神的な負担を増大させ、再発のリスクを高める要因となります。
以上のように、リワークを利用せずに復職することは、再休職のリスクや就労継続率の低下、または自己管理スキルの不足、タイミングの誤り、さらには不安や孤独感の増加といった多くの課題を伴います。このことから、無事に復職を果たし、長期的に安定した就労を実現するためには、リワークプログラムの活用が大いに効果的であるといえます。
(関連記事:再休職を防ぎたい|休職理由を分析して効果的な再発予防策を)
4.「リワーク施設」を活用する
上述した復職のためのポイントは、言い換えれば「復職するために達成しておくべき条件」といえます。そう考えると、復職までに取り組まなければならないことがいかに多くあるかが分かります。また、これまでに挙げたもの以外にも、休職期間中は企業とのやり取りや通院など、休職者自身がスケジュールを管理し、行わなければならないことが多くあります。
そうした中、これらの取り組みや活動をまとめて行うのが「リワーク施設」です。リワーク施設を利用することで、さまざまなメリットが得られます。
①生活リズムの安定
毎日通所することで、自然と生活習慣が整います。また、施設内ではスタッフと一緒に日々の生活リズムを確認するため、自身の生活リズムがどの程度安定しているかについて客観的に判断することができます。
②プログラムへの参加
リワーク施設によっては、職場復帰を想定したプログラムを提供しているところもあります。パソコンを使用する訓練や認知行動療法に基づくプログラムなど幅広いプログラムが提供されるため、プログラムを通じてさまざまなスキルを伸ばすことができます。
③スタッフによる企業との交渉
状況に応じて、スタッフが企業の担当者(人事・上司)と調整や交渉を行います。休職に至った理由が就業環境にある場合に、人事との交渉・調整が必要となるケースも少なくありません。しかし、こうした交渉や調整が苦手という方も多くみられます。この点、リワーク施設を活用することで施設のスタッフが企業と利用者(休職者)との間に入って復職へ向けた調整や交渉を行うことが可能となります。必要に応じて休職期間の延長や交渉なども行うため、休職者の負担を和らげることができます。
こうした交渉を「自分一人ではなかなかできない」という休職者・利用者も少なくありません。これらの交渉・調整を施設のスタッフが代行することで、利用者の負担は大幅に削減されます。
④通勤訓練
リワーク施設に通うことで、施設を会社に見立てた通勤訓練を行うことができます。毎日決まった時間に交通機関を利用して施設に通所することで復職時の負荷を想定し、基礎的な体力づくりが可能です。
⑤コミュニケーションスキルの向上
リワーク施設には他の利用者も多くいるため、他者とのコミュニケーションを図ることでコミュニケーションスキルを養うことができます。リワーク施設の利用者どうしの交流の中で復職に成功されたという事例も多くあります。
⑥通院や服薬の管理
リワーク施設では、施設スタッフによる通院の確認や服薬管理なども行っています。状況に応じて医療機関と連携しながら、訓練プログラムを進めていきます。
以上が、リワーク施設を活用するメリットです。
労働者にとって数ヶ月にわたって離れていた職場への復帰は、非常に負荷がかかるものです。そのため、心身の健康を実現・維持するためにはリワーク施設を活用し、復職の専門家に頼りながら会社に見立てた施設で訓練を実施することが効果的です。
また、上述したように、適切なリワーク施設を活用することで、再休職を防ぐこともできます、再休職を防ぎ、安定した復職・就労を実現するという意味でも非常に効果的な手段です。適切なリワーク施設を活用して復職された方は、そうでない方と比べて就労継続率が1年で約2倍、2年で3倍以上の差があることが分かっています。すなわち、リワーク施設の活用は、それだけ復職成功率が高くなるということを意味しています。
なお、復職を考える上では企業側の担当者の不安を払拭する必要もあります。企業の担当者は、「どれくらい働けるのか?」「前の部署に戻しても大丈夫なのか?」「休職した原因は解決できたのか」「再度、休職してしまうのではないか?」など不安に感じることも少なくありません。
そのため、リワーク施設に通所し、そこでの訓練で得られる情報を企業と共有することで、企業側も安心して受け入れることができます。こうした点も、リワーク施設を活用する大きなメリットのひとつです。
(関連記事:リワーク施設(リワークプログラム)を利用する上で知っておきたい「施設の種類」と「選び方」とは?)
5.リワークを利用するための費用
リワークプログラムの利用を考える上で、費用面が気になるという方も少なくありません。利用にかかる費用は、プログラムを提供する機関や施設、さらには利用者の状況によっても異なります。一例として、主な施設の費用は以下のようになっています。
a.医療機関で提供されるリワークプログラムの費用
リワークプログラムは精神科や心療内科などの医療機関で提供されることも多く、医療保険の適用を受けることができます。このようなプログラムは「デイケア」や「ショートケア」として位置づけられ、保険診療の対象となります。自己負担額は保険の種類や適用条件によって異なりますが、一般的には以下のようになります。
・健康保険(3割負担)が適用される場合:
利用1回あたり約2,000円~3,000円
たとえば健康保険が適用されるプログラムに週5回のペースで参加した場合、1ヶ月あたりの自己負担額は約40,000円~60,000円程度となります。自立支援医療制度を利用する場合は、さらに負担額を軽減させることが可能です。
・自立支援医療制度(1割負担)を活用する場合:
利用1回あたり約600円~1,000円
自立支援医療制度は、精神疾患の治療を継続するための経済的支援を目的とした制度であり、リワークプログラムの利用にも適用されます。この制度を利用することで、医療費の自己負担割合が1割に軽減され、さらに所得に応じた月額上限額が設定されます。たとえば低所得者の場合、月額上限額が2,500円~5,000円程度に設定されることがあります。これにより、月間の医療費が高額になった場合でも自己負担額を一定額に抑えることができます。
自立支援医療制度の利用にあたっては、医師の診断書や申請書類の提出が求められます。詳細な手続きや必要書類については、各自治体の福祉窓口や医療機関に相談する必要があります。
b.就労移行支援事業所で提供されるリワークプログラムの費用
医療機関以外でリワークプログラムが提供されている施設として、就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所が挙げられます。利用にあたっては行政からの補助があるため、利用者は費用の1割を自己負担するだけでリワークを利用することができます。
1回あたりの利用料は約900円で、月に20日間の利用の場合は約18,000円となります。なお、就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所は障害者総合支援法に基づく福祉サービスとして位置づけられており、経済的負担を軽くするために自己負担額には上限が設定されています。自己負担額の上限は、利用者の所得に応じて決定されます。低所得者や非課税世帯の場合、自己負担額が無料になることもあります。
就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所の利用には障害者手帳の取得や自治体の支給決定が必要となる場合があるため、詳細な条件や手続きについては各事業所や自治体の福祉窓口に確認する必要があります。
c.障害者職業センターで提供されるリワークプログラムの費用
障害者職業センターは、障害のある方が自立して働くことを支援する施設で、各都道府県に1ヶ所以上の設置が義務付けられています。障害者職業センターが提供するリワークプログラム(職場復帰支援プログラム)の多くは半日で終了するというのが特徴で、原則として無料で利用が可能です。交通費は自己負担となりますが、自治体によっては補助制度がある場合もあるので、事前に確認しておく必要があります。
障害者職業センターのリワークを利用するためには、最寄りのセンターに問い合わせ、面談・事前評価を受ける必要があります。申し込みには、医療機関からの紹介やハローワーク経由の相談が必要なケースもあります。センターによってプログラム内容や利用までの流れが異なるため、早めの情報収集と事前相談が重要です。なお、障害者職業センターの職場復帰支援(リワーク)は「雇用保険の被保険者」や「企業等での雇用を前提とした方」が対象であるため、一般的な国家公務員・地方公務員などは利用対象外となっています。
(関連記事:障害者職業センターのリワークプログラムについて)
リワーク施設にかかる利用料などについては「リワークを利用するために費用はどのくらいかかる?|施設ごとに徹底解説!」にまとめています。
6.復職の最短ルートをみつける
心身の不調によって退職や休職に至った場合、就労や復職を目指す上で行うべきことはたくさんあります。この点、復職を支援するリワーク施設の利用には就労や復職を目指す上で役立つ以下のメリットがあります。
・生活習慣が整う
・職場復帰を想定したプログラムを受けられる
・企業との調整や交渉を行える
・会社に見立てた施設で通勤訓練が行える
・他者とのコミュニケーションを図れる。
・通院の管理・医療機関と連携を行える。
リワーク施設のひとつであるニューロリワークでは、就労や復職を目指す上で役立つさまざまなプログラムを提供しています。脳や身体の健康を実現するためのブレインフィットネスプログラムをはじめ、コミュニケーションスキルやビジネススキルに関するプログラム、さらには認知行動療法に基づくプログラムなど、離職・休職期間中に身に付けておきたい能力に関するプログラムを多く提供しています。各プログラムの見学も承っていますので、ご興味のある方はぜひお問合せください。(関連記事:ご存知ですか?「リワーク施設」┃復職の成功につながる施設選びの5つのポイント)
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【参考文献・参考サイト】
(写真素材:PIXTA、photoAC)
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